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日系人フジモリ大統領への敵意

 ペルーで大統領選挙の結果、フジモリ大統領の三選が確定したことに対して、アメリカはこれを認めないと発表しました。

 「米国務省スポークスマンは、『米政府はこれを有効と見なさない。不備な手続きを経て就任する大統領には正当性がない』と述べた」(5月30日読売新聞)
 「米国務省当局者は新たに導入された選挙集計システムに対する国際監視団の疑念が晴れないまま、投票が実施されたことを挙げて、『れわれは選挙が有効であったとは見ていない』と述べ、野党候補トレド氏の主張に同調した」(5月30日朝日新聞)
 「この問題はOAS(米州機構)監視団の『公正でない』との報告に基づきカナダで6月4日に開かれるOAS総会の議題になる見込みだ」(5月29日朝日新聞)、などと報じられています。

 OAS監視団が選挙は公正でないと言い、アメリカはこれを根拠にフジモリ大統領の正当性を否定していますが、OAS監視団は決選投票が予定通り行われると決まった直後に、「実質的に(フジモリ氏)1人が立候補者になる決選投票は国民の自由意志が反映された選挙とは言えない」(5月27日産経新聞)などとして、監視業務を放棄してペルーを出国しています。実際に監視業務をしていません。米国の選挙監視グループであるカーターセンターのペルー入りも中止になったそうです。監視をしていなくてどうして選挙が「公正でなかった」と分かるのでしょうか。それに、対立候補が立候補を取り下げた結果、候補者が1人になった選挙は「不正選挙」なのでしょうか。監視のために派遣された監視団が、監視活動を妨害されたわけでもないのに、選挙の直前に監視業務を放棄し、選挙が終わったあとで「不正があった」などというのは一体なぜなのでしょうか。大変不可解です。それは彼らが監視団ではなく、監視に名を借りた「干渉団」だからだと思います。

 決選投票に先立つ第一回の投票の時も、OAS監視団やアメリカは選挙の公正性を問題にしていました。第一回目の投票でフジモリ候補が過半数に迫るや、ロックハート米大統領報道官は、「われわれは決戦投票が行われるものと期待している。それ以外の投票結果が出れば、重大な疑問が生じよう」(4月12日読売新聞)と言い、米州機構(OAS)のエドワルド・スタイン選挙オブザーバー団長は、「決選投票の必要があると考える」(4月11日産経新聞)と言っていました。フジモリ候補が過半数を取れば「不正選挙」で、過半数を取れなければ「不正はなかった」というのは、非論理的であると思います。また、監視団は選挙に不正があったかどうかを監視するのが役目であり、「決選投票が必要か否か」はペルーの選挙規則に従って決定されるべき問題です。監視団が口を挟む問題ではないはずです。選挙で不正があったと主張するなら、決選投票ではなく、選挙のやり直しを主張すべきです。

 フジモリ大統領は就任以来、テロの撲滅、インフレの抑制、麻薬の取り締まりと多大な実績を上げた政治家です。政治犯を逮捕したり投獄したりという圧政もありません。それなのになぜアメリカはフジモリ大統領を目の敵にするのでしようか。それは彼が白人でもなければ、白人の支配を是認する政治家でもなく、白人支配体制の潜在的脅威と認識しているからだと思います。日本人、日系人は他の有色人種に与える影響力の大きさから言って彼らには脅威なのです。インディオの血を引くトレド候補を支持しているのは、過去二回の選挙で、マリオ・バルガス・リョサ、ペレス・デクエヤルと白人候補が二回続けて敗れたため、今回は少数派の白人候補を断念し、背水の陣で打倒フジモリを図っているからに他なりません。4月13日の読売新聞は、「米メディアはこれまでも、フジモリ大統領の強権的政治手法に対する批判を繰り返してきたが、現地の日本政府関係者は『野党候補への肩入れ、フジモリ政権への批判の厳しさと言う面から見ると、今回は特に際だっている』と指摘している」と報じています。われわれは、日系人ひいては日本人に対する アメリカの敵意に対して目をそらしてはならないし、鈍感であってはならないと思います。

平成12年5月31日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ