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在韓米軍が撤退しない理由

 南北朝鮮の首脳会談が終わりました。今後、真の和解、統一に進むかどうかは予断を許しませんが、アメリカ国内では統一後の在韓米軍のあり方が議論されています。

 6月17日の産経新聞では、「南北統一後も在韓米軍駐留」と言う見出しの記事があり、その中で、「・・・アメリカ国防省のベーコン報道官は、『金大中大統領は・・・米軍は南北統一後も韓国にとどまってもらいたいと表明している。彼は在韓米軍が安定のために重要で強力で、効果的な勢力と見ているからだ』と改めて強調した。在韓米軍は現状維持との方針を確認したわけだ」と報じられていました。アメリカは早くも撤退論を牽制しています。アメリカは在韓米軍を撤退させたくはないようです。

 6月17日の朝日新聞の報じるところでは、「・・・米国は(南北首脳会談で)核・ミサイル問題の提起を望んでいたが、在韓米軍問題を両首脳間の論議の対象にすべきでない、と事前にクギをさしていた。それにもかかわらず、金大統領が在韓米軍問題を協議したと明かしたことに、米国はかなり強い不快感を示しているという」とあります。アメリカは在韓米軍の問題が討議されただけでも不機嫌のようです。

 アメリカは今まで、何のため、誰のために韓国に軍隊を駐留させていたのでしょうか。韓国を北朝鮮から防衛するためであったはずです。そうであれば南北の和解が実現し、統一が現実のものとなれば、在韓米軍の存在意義は一応なくなると考えるのが当然であると思います。アメリカの国防負担が軽くなることでもあり、歓迎すべきことではないのでしょうか。

 今回の会談結果をアメリカは決して歓迎してはいないようです。確かに今後の成り行きは不透明で、北朝鮮ペースで統一が進展することは好ましくありませんが、アメリカの不快感は単にそれだけのものではないと思います。アメリカは極東の諸国、日本、中国、朝鮮半島、ロシア、の間で適度な対立、緊張状態があって、アメリカの存在が必要とされ、それらの国を支持したり支持しないことで、大きな影響力を自由に行使出来る状態を望んでいるのだと思います。関係各国が和解し、米軍の存在が不要となる事態を望んではいないのです。

 日本とロシアが北方領土問題を解決し、和解したら一番困るのはアメリカだと思います。日露の和解が成立して日本国内で日米安保不要論が高まったら、アメリカはアジアの周辺諸国(シンガポール、オーストラリアなど)をたきつけてでも、日本の自立危険論を煽り、米軍の駐留を維持しようとすると思います。

 アメリカは今まで日本が自国の安全保障をアメリカに依存していることを、「安保ただ乗り」と言ってバカにしてきました。そのアメリカはタダで日本の広大な基地を利用し、その上「思いやり予算」と称して自国軍隊の維持費まで日本に負担させています。「ただ乗り」と言われるべきはアメリカの方ではないでしょうか。

平成12年6月18日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ