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国連海洋法条約と中国

 4月8日の産経新聞はアメリカと中国の軍用機の接触事故について、次のように伝えていました。
 「・・・米中政府は、機体・乗員の扱いのほか、事故責任の究明に絡み、排他的経済水域(EEZ)上空空域での外国軍用機航行が国連海洋法条約の制約を受けるかどうかの解釈で真っ向から対立している」

 4月5日にも、産経新聞は、「中国側は米側の責任を指摘、・・・これは、衝突が起きた海南島の南東104キロの空域が中国の排他的経済水域(EEZ)上空であり、国連海洋法条約で飛行行動が制約されるとの立場だ」と報じていました。
 中国は同条約に基づき排他的経済水域の上空についても、排他的権利があると主張しているようです。

 しかし、中国は長年にわたり、わが国の沖縄周辺の排他的経済水域で、わが国に無断で海洋調査船による調査活動を繰り返し、日本の巡視船による退去命令を無視してきました。国連海洋法条約の246条(排他的経済水域内及び大陸棚上の海洋科学調査)には、「沿岸国は・・・排他的経済水域内及び大陸棚上の海洋科学調査を規制し、許可し、実施する権利を有する」、「排他的経済水域内及び大陸棚上の海洋科学調査は、沿岸国の同意を得て実施しなければならない」と言う条項があります。中国の行為は明らかに同条約に違反し、わが国の権利を侵害するものであると思います。

 その中国が、今までアメリカ軍機の上空飛行について何の抗議もしてこなかったにもかかわらず、接触事故が起きるや、排他的経済水域の権利を主張するのは、説得力に乏しい主張だと思います。
 それに、同条約をざっと見たところでは、58条(排他的経済水域における他の国の権利及び義務)には、「・・・すべての国は、この条約の関連規定に従って、第87条(公海の自由)に定められた航行及び上空飛行の自由・・・を有する」とあって、上空飛行については、沿岸国の排他的権利は認められていないようです。

平成13年4月8日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ