E24
アメリカの詭弁

 読売新聞はアメリカが拘束しているタリバン兵の取り扱いについて、次のように報じていました。

 「『捕虜』法的身分あいまい」、「軍事法廷 米国外設置か」(1月12日朝刊)
 「兵士らの地位は、戦争捕虜なのか、それとも犯罪者なのか、という点で明確な判断が下されていない」
 「元米空軍法律顧問のマイケル・ヌーン氏は『米軍は・・・ジュネーブ条約で定められた“捕虜”の資格を持たない“抑留者”と見なしている』と指摘している。軍事法廷に訴追される可能性がある点で、通常の捕虜とは異なる」
 「軍事法廷が開かれる場合は、米本土ではなく、同基地(キューバのグアンタナモ基地)に設置されると見られる。・・・国内法で認められている権利を被告人に行使させないために、米国外に設置するとの指摘もある」

 「英 手錠や目隠しは人権侵害」、「タリバン兵処遇で対立」(1月17日朝刊)
 「英外務省によると、・・・ストロー外相が・・・タリバン兵らに対し、戦争捕虜の取り扱いを規定したジュネーブ条約の適用を念頭に、『国際規約に基づいた人権上の配慮』を求めた」

 「アル・カイーダ兵 捕虜ではない」、「米、法的余地を確保」(1月18日朝刊)
 「ラムズフェルド国防長官は11日、
具体的根拠を示さないまま『彼らは“違法な戦闘員”。捕虜としては扱わない』と断言した」

 アメリカは捕虜ではないと言っていますが、それでは彼らは何なのでしょうか。犯罪者としての身柄の拘束でもありません。ブッシュ大統領は「テロリスト達に法の裁きを受けさせる」と言っていましたが、犯罪容疑者でも捕虜でもない、「違法な戦闘員」などと言うカテゴリーを勝手に作り、国内法も国際法も無視した、軍事法廷の裁きが「法の裁き」と言えるでしょうか。法的根拠もなく身柄を拘束し、軍事法廷で処罰するやり方は、日頃、アメリカが非難して止まない中国、北朝鮮などの人権抑圧国家のすることです。

 アメリカが国際法も国内法も無視した行為は過去にも例があります。アメリカは第2次世界大戦後のドイツで、武装解除した多数のドイツ兵を拘束しましたが、捕虜ではなく、「武装解除敵軍」であるとして、ジュネーブ条約で定められた捕虜として取り扱いませんでした。その結果、彼らはテントもない鉄条網に囲われた屋外で、水も食糧もないと言う劣悪な環境下に放置され、約60万人が“虐殺”されました。
 その一方で、日本軍にとらえられた自国軍の捕虜が過酷な取り扱いを受けたと言って、日本の軍人を、捕虜を虐待した「戦争犯罪者」として処刑しました。この軍事法廷も今回タリバン兵が裁かれると見られる軍事法廷と同様、国際法、国内法にもとづく「裁判」ではありませんでした。

平成14年1月20日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ