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小泉首相の外交センス

 4月11日の読売新聞は、「首相の訪中 取引説 不審船問題」、「海南島国際会議 出席応じた日本」、「実利選んだ中国 引き上げに理解」という見出しで、次のように報じていました。

 「『島と船がバーター?』 11日からの小泉首相訪中をめぐり、こんな説が日中関係筋でささやかれている。北朝鮮の工作船とされる不審船を5月以降に引き揚げる日本政府の方針に、中国がこれまでの慎重姿勢を一変させ、理解を示したためだ。その裏に、中国・海南島で12日に開く国際会議を成功させたい中国の意向に沿い、日本が絶妙のタイミングで出席カードを切ったという事情もある」

 実利を選んだ中国とありますが、実利を取ったのは日本の方ではないでしょうか。海南島の会議に出席してやったところで、わが国の国益が損なわれる訳ではなく、これによって不審船を平穏のうちに引き上げることが出来れば、わが国にとってメリットは大きいと思います。

 「取引」というと何となく、後ろめたい行為のような響きがありますが、外交とは全て「取引」です。ところが、わが国の外交は直接の関係がない複数の問題で取引を行うと言うことが極めてまれであったと思います。従来の外交は、一つの問題でひたすら交渉を重ね、最終的には譲歩を余儀なくされると言うパターンが殆どでした。他の問題を外交カードに使うという発想がありませんでした。

 今回の「取引」は、先日、小泉首相が韓国を訪問したときに、韓国政府に「拉致問題」での協力を求めたのに続く、外交らしい外交と言えると思います。要するに、外交は受け身になっているだけではダメなのです。言うべき事を言い、見返りなくして相手に譲歩してはいけないと言うことです。日本がもっているカードは決して少なくないと思います。今後の小泉外交に期待したいと思います。

平成14年4月11日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ