E35
日中の“戦略的”互恵関係の意味するもの

 4月13日の読売新聞は、「温家宝・中国首相の訪日 各国メディア評価分かれる」、「関心の低さ目立つ 米国」と言う見出しで、次のように報じていました。
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 米メディアはこれまで、いわゆる従軍慰安婦問題で安倍政権の対応を批判的に報じてきたが、今回の日中首脳会談については、関心の低さが目立っている。
 ワシントン・ポスト紙は11日付で温首相訪日の前触れ記事を中面の北京電で紹介した後、12日付(早版)では会談結果の報道自体を見送った。また、ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)は、「共同プレス発表」の内容を簡単に伝えつつ、「(東シナ海の)ガス田や歴史問題など2国間の発火点となりそうな懸案では、ほとんど進展がなかった」と冷めた評価を添えた。
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 この短い記事は、日中首脳会談とアメリカのマスコミの慰安婦報道を結びつけた非常に鋭い視点からの報道だと思います。

 60年前の「慰安婦」には過激な反応を示したアメリカのマスコミが、今回の日中首脳会談には無関心などと言うことがあるのでしょうか。日中両国の政府と国民が、重大な関心を持って見守った出来事に対して、日中両国と深い関わりのあるアメリカ人が示した今回の反応に注目すべきです。

 彼らが本当に無関心であったとすれば、極東の平和と和解には関心がないことを意味しますが、無関心な彼らが「慰安婦問題」だけに過剰な関心を寄せるのは不可解です。アメリカが日中の接触に無関心であったとは思えません。アメリカは無関心を装っていたのだと思います。
 それはなぜでしょうか。日中首脳会談の成果が成果が乏しかったと言うのであれば、そういう論評をすればいいのであって、無関心を装う必要はありません。アメリカは不快感と警戒感を隠すために無関心を装ったのだと思います。

 それではアメリカはなぜ不快感を持つのでしょうか。それは、両国の首脳が「戦略的互恵関係」の構築を意図しているからです。両国が単に友好関係とか、互恵関係と言わず、「戦略的」と言ったことに注目すべきだと思います。そこには対米牽制の意図が込められていると思います。日中両国が公然と反目することは、それぞれの外交的利益を甚だしく損ない、アメリカを利するだけであると言う共通の認識があるものと思われます。それ以外に「戦略的」の意味するところを解釈することは出来ません。

 日中両国がようやくそのことに気づき、両国の戦略とは自国アメリカを意識したものであることを感じ取ったからこそ、アメリカ人は無関心を装ったのだと思います。

平成19年4月22日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ