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日米同盟の虚構

 11月30日の産経新聞の、「【正論】筑波大学大学院教授・古田博司 持ちつ持たれつ中朝『悪の枢軸』」と言う見出しの記事の中に、次のような部分がありました。
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 北朝鮮が23日、韓国・延坪(ヨンピョン)島に砲撃を加え、軍人2人と民間人2人を爆殺せしめた。朝鮮戦争以来の物理的攻撃である。暴挙だと、誰もが怒る。しかし、韓国は本格的な報復攻撃はできない。中国漁船による海保巡視船への体当たり攻撃で露呈した日本側対応と同じである。東アジアには核保有の均衡が存在しないからである。

 ◆東アジアの平和の終わり

 両核保有国は、平時を準戦時状態ととらえ、核を潜勢力として非保有国を脅す。小規模戦闘も辞さない構えで、ボディーブローのように相手を撃ち、しだいに無力化させていくのである。これを「核抑止力攻撃」と仮に呼ぶ。今年3月の韓国哨戒艦撃沈事件以来、こうした攻撃が常態化しつつある。つまり、東アジアにおいては、平和はすでに終わったのである。

 では、日韓にも核を持たせてしまえばよいではないか、というのは米リアリストの学者たちだ。そうはいかない。
日本が軍事大国になることを何より恐れているのは米国である日本が自前で核を持つのは、ハワイまで米防衛線が後退したときでしかないと、カーター元米政権で大統領補佐官(国家安全保障問題)を務めたブレジンスキー氏は言ったことがある。・・・
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 アメリカが何よりも日本の軍事大国化を恐れているのは事実だと思います。これは「軍事同盟」の建前とは根本的に相容れないものですが、現実です。現実は直視しなければなりません。「日米同盟」などは日本(準)占領をカムフラージュする虚構なのです。

 最近、アメリカのブッシュ前大統領は回顧録で、「03年1月、中国の江沢民国家主席(当時)に対し、北朝鮮が核兵器開発を継続すれば、日本の核兵器開発を止められないと伝えていたことを明らかにした」(2010年11月10日読売新聞)とされていますが、「日本の核兵器開発を止められない」などと言うことは、100%あり得ない話です。日本が「核武装」の“か”の字でも言い出そうものなら、真っ先に反対するのはアメリカです。このような発言は、日本をだしにして、日本への敵意を煽って中国に圧力をかけているに過ぎません。

 アメリカは時に、日本に対して防衛努力の不足を指摘して防衛負担を増すように圧力をかけてきました。かつて日米経済摩擦が深刻だった頃には、アメリカのマスコミは日本の防衛予算がGNPに占める割合が低いことを以て、日本を“安保ただ乗り”と言って批判しました。一見すると日本の軍事力増強を望んでいるようですが、決してそうではありません。「防衛負担を増す」とは、在日米軍の経費を負担するとか、アメリカの対外軍事行動の経費を分担するとか、アメリカの軍需産業のために高額なアメリカ製の兵器を購入するとかを意味する言葉であって、決して日本が自らの軍事力を増強することではありません。

 日本とアメリカの間には日米安保条約があります。アメリカとイスラエルの間には(私の知る限り)軍事同盟条約はありません。しかし、アメリカはいかなる犠牲を払ってでもイスラエルを防衛するでしょう。イスラエルの核兵器保有は半ば公然の秘密となっていますが、アメリカはイスラエルの核疑惑には何も言いません。イスラエルはアメリカの最高の同盟国と言っていいと思います。同盟条約の有無などは問題ではないのです。

 アメリカは同盟国の建前上、露骨に日本の軍備拡張には反対できません。反対するときは必ず日本の周辺国の日本に対する敵意・警戒心を煽ります。もっとも使いやすいのは韓国と中国です。アメリカにとって、韓・中両国は日本の足を引っ張るという点で非常に重要な役割を担っています。
 
 韓国・中国の対日敵意・警戒心を持続させるために重要な役割を果たしているのが、領土問題と、歴史問題です。領土問題と、歴史問題はアメリカにとって打ち出の小槌のような重宝な道具です。

平成23年3月27日   ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次へ