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アメリカの「過酷な尋問(拷問)」に沈黙する世界

 
9月10日の読売新聞は、「米同時テロあす10年 ビンラーディン潜伏先特定 『過酷尋問で有力情報』」と言う見出しで、次のように報じていました。
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 【ワシントン=黒瀬悦成】ブッシュ前米政権の「テロとの戦い」を諜報(ちょうほう)分野で支えたマイケル・ヘイデン元中央情報局(CIA)長官(66)=写真=は、米同時テロから10年となる11日を前に読売新聞と会見した。同氏は、米軍が殺害した国際テロ組織アル・カーイダ指導者ウサマ・ビンラーディンの潜伏先特定につながる有力情報が、自らの在任中、秘密の軍事施設で行ったテロ犯への水責めなど「過酷な尋問」で得られたことを明らかにし、「効果があった」と正当性を強調した。
(中略)
 オバマ大統領は、09年1月の就任直後、過酷な尋問は「拷問」に当たるとして全面禁止する大統領令に署名。これを受け、テロ容疑者への尋問は拷問を禁じた陸軍戦闘規範に沿って米軍が行うようになった。
 しかし、ヘイデン氏は、「過酷な尋問は、実際に効果があった」と断言。その上で、オバマ政権が無人武装偵察機によるテロ犯の殺害に重点を置き、有力幹部をほとんど拘束せず、過酷な尋問もやめたために、「新鮮な情報を入手できておらず、有効なやり方とは言えない」と批判した。
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 ヘイデン氏は効果があったとして正当性を強調したと報じていますが、効果があったことと、正当であることは全く別の問題です。
効果があることは何をしてもいいと言うことにはなりません。現代の社会が拷問を禁じているのは、効果がないからではありません。目的が手段を正当化しないことは言うまでもありません。

 こういう詭弁を語るアメリカ人は、今後アメリカの軍人が外国政府に「過酷な尋問」とやらを受けるのを覚悟しなければなりません。

 この「過酷な尋問」はブッシュ大統領が回顧録の中で、自ら承認したことを明らかにしていますが、
世界の人たち(とりわけ日本の人権問題に敏感なアメリカのジャーナリスト)はなぜかかる蛮行に沈黙しているのでしょうか。

平成23年9月11日   ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次へ

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2011.09.10 「米同時テロあす10年 ビンラーディン潜伏先特定 『過酷尋問で有力情報』」(読売)
 ◆元CIA長官、正当性を強調 
 【ワシントン=黒瀬悦成】ブッシュ前米政権の「テロとの戦い」を諜報(ちょうほう)分野で支えたマイケル・ヘイデン元中央情報局(CIA)長官(66)=写真=は、米同時テロから10年となる11日を前に読売新聞と会見した。同氏は、米軍が殺害した国際テロ組織アル・カーイダ指導者ウサマ・ビンラーディンの潜伏先特定につながる有力情報が、自らの在任中、秘密の軍事施設で行ったテロ犯への水責めなど「過酷な尋問」で得られたことを明らかにし、「効果があった」と正当性を強調した。
 ヘイデン氏によると尋問を受けたのは、アル・カーイダ元ナンバー3のハリド・シェイク・ムハンマド、アブ・ファラジ・リビ、ハッサン・ギュルの最高幹部3人。同氏は「尋問は、『ブラック・サイト』と呼ばれる米国外の秘密軍事施設で行われた。施設の所在国は言えない」としている。
 同氏によると、CIAは2007年、ビンラーディンが組織に指令を出す際に電話や無線などではなく、連絡役を使っているのに着目し、この連絡役を見つけて追跡しビンラーディンの居場所を探る手法を採用。3人は尋問で、連絡役の通称など、個人を特定できる情報を自供したという。
 CIAは、アフガニスタン東部のトラボラでビンラーディンを取り逃がして以降、居場所を全く把握できていなかったが、問題の情報をもとに、10年8月、パキスタン・アボタバードの潜伏先を突き止めた。
 オバマ大統領は、09年1月の就任直後、過酷な尋問は「拷問」に当たるとして全面禁止する大統領令に署名。これを受け、テロ容疑者への尋問は拷問を禁じた陸軍戦闘規範に沿って米軍が行うようになった。
 しかし、ヘイデン氏は、「過酷な尋問は、実際に効果があった」と断言。その上で、オバマ政権が無人武装偵察機によるテロ犯の殺害に重点を置き、有力幹部をほとんど拘束せず、過酷な尋問もやめたために、「新鮮な情報を入手できておらず、有効なやり方とは言えない」と批判した。
     ◇     
 ヘイデン氏は、元空軍大将で、1999〜2005年、国内外の通信情報などを傍受する国家安全保障局(NSA)長官、06〜09年にCIA長官を務めた。
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2010.11.06 「ブッシュ前大統領水責め』を了承 回顧録で正当化」(読売)
 【ワシントン=本間圭一】米国のブッシュ前大統領が、9日発売予定の回顧録で、2001年の米同時テロの容疑者に水を浴びせて自白を迫る「水責め」の尋問を承認したと記述していることが4日、分かった。複数の米メディアが回顧録の抜粋を入手し、伝えた。前大統領は「テロの再発防止には必要だ」と水責めを正当化しているという。
 米紙ワシントン・ポストなどによると、前大統領は、米同時テロの主犯格とされる国際テロ組織アル・カーイダ幹部のハリド・シェイク・ムハンマド被告に対する水責めの許可を求められ、「もちろんだ」と答えた。水責めは同被告ら3人に行われ、重要な情報がもたらされたという。水責め以外の「過酷な尋問」は拒否したとしている。
 人権団体などは水責めを拷問として批判し、オバマ大統領は禁止を命じた。
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