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拉致問題、北朝鮮への対応に見る、安倍外交の失態と無責任

 北朝鮮が8月から9月頃、拉致被害者に関する第一回の報告をするという約束を守らず、平壌に来て直接担当者に聞いてくれと言いました。一体伊原純一アジア大洋州局長は大丈夫なのでしょうか。10月1日の読売新聞は次のように報じています。
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拉致再調査で訪朝団派遣へ…政府、北の打診受け
2014年10月1日7時4分 読売新聞

日朝局長級協議の報告を受け、記者の質問に答える安倍首相(30日午後、首相官邸で)=小林武仁撮影

 安倍首相は30日夕、北朝鮮による日本人拉致被害者らの再調査をめぐり、北朝鮮側から日本側担当者の訪朝を打診されたことを明らかにした。

 首相官邸で記者団に語った。中国・瀋陽で29日に行われた日朝の外務省局長級協議で北朝鮮側が日本側に求めたもので、政府はこれを受け入れ、
訪朝団を派遣する方針を固めた。

(以下略)
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 これに対して、被害者の家族会は下記のように反応したと報じられています。
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拉致再調査 「訪朝団」に慎重意見…家族会 「北のペースに乗るのか」
2014年10月2日3時0分 読売新聞

 北朝鮮による拉致被害者家族らは1日、東京都内で、9月末に中国・瀋陽で開かれた日本と北朝鮮の外務省局長級による協議内容について、政府から説明を受けた。北朝鮮は協議で、日本側担当者の訪朝を提案し、政府も受け入れる方針を固めているが、
家族側からは慎重な意見が相次いだ。

(中略)

 家族側からは、「
北朝鮮の説明を一方的に聞かされ、納得したように思われてしまうのでは」と懸念する声が上がった。横田めぐみさん(拉致当時13歳)の母、早紀江さん(78)は説明会後、報道陣に対し、「何もない中で行くことには、そんなに賛成の気持ちではない」と複雑な心境をのぞかせた。田口八重子さん(拉致当時22歳)の兄で、家族会代表の飯塚繁雄さん(76)は「日本が向こうのペースに乗って状況を聞いたり、調べたり、確認したりしないといけないのか」と語った。
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 これに対して安倍総理は次のように反応したと報じられています。
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朝日の慰安婦報道 首相「日本イメージ傷ついた」
2014年10月03日 産経新聞 大阪夕刊

(前略)

 拉致問題に絡み北朝鮮から提案があった平壌への担当者派遣については「被害者ご家族をはじめとした各方面のご意見にしっかり耳を傾けながら、政府として総合的に判断していきたい」と話した。

(以下略)
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 安倍総理は、北朝鮮が約束を反故にしたことに遺憾の意を表することもなく、安易に日本側の担当者の平壌派遣に同意しましたが、その後家族会の慎重論の意向を受けて、「被害者ご家族をはじめとした各方面のご意見にしっかり耳を傾けながら、政府として総合的に判断していきたい」と、前言を翻し、
他人に責任を転嫁するかのごとき発言をしています。

 安倍総理に、今回の事態が
外交上の失態であるという認識があるのでしょうか。外交戦術は政府が責任を持って判断することで、平壌訪問について「家族や各方面の意見に耳を傾け」とは、無責任の感をぬぐえません。何の確約も成果もない段階で、見切り発車で制裁の一部解除を実行したことは、外交上の失態です。安倍総理の発言からはそういう認識がうかがえません。

 そもそも安倍総理は、第二次安倍政権の発足時に、拉致問題の解決を最重要課題の一つと位置づけていました。拉致問題の進展・解決を
安倍政権の功績とアピールできるという思惑があったものと思われます。
 そのために非常に安易な交渉をして、何の見返りもなく一方的に制裁の一部を解除してしまい、その時の「8月〜9月に第1回報告をする」との約束が守られないという結果になってしまいました。

 更に、それをとがめることもなく、向こうの言うがままに即座に平壌への担当者派遣に同意しています。
家族会の慎重論のほうがよほど思慮深いと思います。
 その上、一度は平壌に派遣すると明言したにもかかわらず、家族会から慎重論が出るや、「被害者ご家族をはじめとした各方面のご意見にしっかり耳を傾けながら、政府として総合的に判断していきたい」と前言を翻すとは無責任の極みであきれてものが言えません。

 この件については、野党もマスコミも総理を非難する声がありませんが、彼の責任感と能力に疑問符がついたと思います。

平成26年10月4日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ