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アメリカの悪意を直視すべき―ニューヨーク・タイムズ、ワシントンポスト、ロサンゼルス・タイムズ3紙の根拠のない日本罵倒の意味―


 12月17日の「JB PRESS」のホームページで、産経新聞の古森記者は、「NYTに続きワシントン・ポストもLAタイムズも、上から目線で日本を叩く米国大手メディア」と言う見出しで、次のように論じていました。
 長くなって恐縮ですが、大事な問題だと思うので全文を掲載します。
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NYTに続きワシントン・ポストもLAタイムズも、
上から目線で日本を叩く米国大手メディア

2014.12.17(水)「JB PRESS」 古森 義久

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42478
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42478?page=2
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42478?page=3
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42478?page=4
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42478?page=5

前回の当コラムでは、米国大手紙の「ニューヨーク・タイムズ」が日本の慰安婦問題報道をめぐる動きを「日本の右翼の新聞攻撃」と断じた記事(「朝日の『慰安婦問題』誤報訂正でNYTの日本叩きは手詰まりか?」)を紹介した。その後、同紙は、同じ趣旨で安倍晋三首相を非難する社説を改めて掲載した。

 続いて「ワシントン・ポスト」と「ロサンゼルス・タイムズ」の両紙も「安倍首相と右翼が朝日新聞を弾圧している」とするコラム記事や社説を掲載した。


 
これら米国の3大紙はいずれも明確な根拠を示さないまま、「慰安婦は日本軍の組織的な強制連行による性的奴隷だった」と断じ、朝日新聞には誤報はなかったかのように弁護している。米国ニュースメディアのこうした日本非難は、事実を無視して、自分たちの特定の日本観を押しつける対日思想警察のようである。

 日本政府としても自国の首相への不当な誹謗には断固、抗議すべきだろう。
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元朝日、植村記者のコメントを紹介するNYT

 ニューヨーク・タイムズは12月4日付の社説で「日本の歴史の
ごまかし」と題し、「日本では右翼政治勢力が安倍政権に後押しされて、第2次大戦中に日本軍が何万人もの女性に売春奉仕を強制した恥辱の歴史の一章を否定する威嚇的な運動を実行している」と論評した。

 
同社説はさらに、慰安婦強制連行を否定する日本の動きについて、「この強制連行を、戦争で敵だった側が捏造した大ウソだとして否定する政治的努力は勢いを増している。歴史修正主義者たちは河野談話での謝罪をも撤回させようと努めている」と述べた。そのうえで同社説は、「ナショナリスト的熱狂を煽ることを意図する安倍政権は、日本が女性たちを性的奴隷へと強制徴用したことについての1996年の国連人権報告の修正を求めたが、拒否された」とも記していた。

 
同社説はまた「朝日新聞が1980年代と90年代に出した記事の一部を撤回したことに乗じて、日本の右翼が朝日新聞を攻撃し続けている」として、朝日新聞に誤報記事を書いた植村隆記者の最近の「右翼超国粋主義者が暴力的な脅しで私たちを黙らせようとしている」というコメントを紹介した。さらに同社説は結びの部分でも「日本は朝鮮半島やその他の地域で何万もの女性を強制連行して性的奴隷にしたことを認めた経緯もある。それが歴史的な真実なのだ」と強調した。

 
しかし同社説は強制連行の根拠については、「日本の主流の学者の多くと日本以外の研究者のほとんどは、多数の慰安婦の証言に基づき、この慰安婦制度によってアジア全域で日本軍将兵が女性に性的暴行を行ったことを歴史的真実として断定している」とだけ述べていた。
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ワシントン・ポストは日本の虐待を描く反日映画を紹介

 12月8日付のワシントン・ポストは、同紙コラムニスト、リチャード・コーエン氏による「日本の歴史書き換えの習慣は将来に影響するか?」という見出しの記事を掲載した。同コラムも、日本の慰安婦問題をめぐる議論について、安倍首相の主導で事実を歪める「ごまかし」が進行中だと断じていた。

 そのコラムには以下のような記述があった。

 「日本は必死で忘れる努力をしている。安倍晋三首相は戦争犯罪者など存在せず、日本は戦争の犠牲者だと示唆している」

 「影響力の強い保守系の報道機関は政府からの激励を得て、日本の戦時中の性的奴隷利用(の記録)を
もみ消そうと決意している」

 「日本の一部の重要人物たちもいまや戦争の
歴史を書き換えようと意図し、安倍首相の暗黙の同意を得て、朝日新聞に強い圧力をかけ、日本の戦時の数万人の女性の性的奴隷への強制徴用を暴露した同紙の記事を撤回させた

 
「日本軍が女性を強制連行したという歴史的事実は日本ではフィクションとして糾弾されるようになった。だがその犠牲者はもちろんのこと、あまりに多数の体験者がそれは事実だと主張している」

 「
突然180度逆転するのは日本文化の特徴なのだ。日本はペリーの黒船で突然、鎖国から開国、近代化の道を歩んだ。第2次大戦の敗北では突然、民主主義へと変身した。いまやこの突然の逆転の不吉な兆しがあり、過去を神話化しようとしている」

 ワシントン・ポストの同コラムは、慰安婦問題だけでなく日本軍の残虐性全般をもテーマとしていた。その関連として、12月25日に全米で公開されるアンジェリーナ・ジョリー監督の映画「アンブロークン(屈しない)」について詳述していた。この映画は日本軍の捕虜となり虐待されたという元五輪選手の米国人を主人公とし、日本側の虐待がこれでもか、これでもかと描かれる。同コラムはさらに日本側の戦時の細菌兵器開発や
南京攻略事件などにも触れ、靖国神社はその種の戦争犯罪の象徴だとも断じていた。
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「日本の国家指導者は歴史をもてあそぶべきではない」

 ロサンゼルス・タイムズは12月12日付で「日本の
ナショナリストが慰安婦の歴史の修正を試みる」という見出しの社説を掲載した。その内容には以下の記述があった。

 「日本軍の特殊な性的奴隷システムによって、朝鮮の女性たちは
拉致されたり強制徴用されて、日本軍部隊にセックスを供与することを強要された。だがいまや日本の一部の右翼ナショナリストたちは、そんなことはまったくなかったと世界を説得しようとしている。これはナンセンスだ」

 「慰安婦に関する歴史の記録は明確である。この性的奴隷システムに強制徴用された女性たちの記憶は明確だからだ。だが真実というのは、日本の戦時の残虐行為の記憶を抹消しようとする日本の
ナショナリストたちにとって障害とはならないようだ」

 
「このナンセンスは、いまや新たな次元の馬鹿馬鹿しさへと到達した。ナショナリストたちは、朝日新聞と、この性的奴隷制を最初に暴いた同新聞の記者の1人を攻撃し始めたのだ。彼らは20年も前の多数の記事のうち、たった1つの情報源の捏造をとらえて、朝日新聞が日本の戦時の行動全体について誤報を流したと主張する。だが、ナショナリストたちによるこの分析は慰安婦だった女性たちの多数の証言を無視している」

 「歴史を
ごまかすこうしたグロテスクな試みは、安倍晋三首相による日本の過去の記録の再修正の努力を反映している。安倍は日本を戦争の遺物から解放し、戦後の平和主義的な憲法を再解釈して、中国と対抗する強い軍事国家にしようとしているのだ」

 
「歴史に対するこの種の不誠実な態度は、事実をもみ消そうとする不快で軽蔑すべき試みだ。日本の国家指導者は歴史をもてあそぶべきではない」
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3大紙の主張に見られる5つの特徴

 さて、以上のような米国の3大紙の主張にはいくつかの特徴がある。

 第1は、最近の論議の核心となる慰安婦の強制連行問題に関して、日本側、あるいは
米側の一部でも確認された「日本軍による組織的な強制連行の証拠は皆無」という事実を無視して、一方的に強制連行の事実があったかのように断じている点である。この点の独断専行ぶりは滑稽なほどに子供じみている。

 第2には、その核心の強制連行について具体的な
証拠をなにも提示できない点である。3紙の主張のいずれもが、その最大の論拠のように指摘するのは、「慰安婦だった女性たちの証言」である。だが女性たちの証言には具体性が乏しいだけでなく、日本軍全体としての組織的な強制連行の有無を判断する客観性が皆無である点も無視されている。

 第3は、
安倍晋三首相への根拠のない非難である。この非難は「誹謗」と呼んでもよい乱暴な次元にまでエスカレートしている。安倍首相が今回の朝日新聞の誤報訂正を実現させたような記述には、論拠は示されていない。安倍首相が戦争の歴史をすべて修正するために各方面に指令を出したかのように記述されているが、事実の裏づけはない。

 第4は、3紙の評論のいずれもが
「右翼」「ナショナリスト」「修正主義」など意味の不明なレッテル言葉を過剰に使っている点である。こうした用語は非民主主義、反動、軍国主義、ファッショなどという悪辣で負の印象だけを投射する。慰安婦問題での日本への濡れ衣を事実関係の解明で晴らそうと試みる者はすべて「右翼」「国粋主義者」と一括りにされるのだから、かなわない。

 
第5には、どの評論も朝日新聞の慰安婦報道での大誤報を軽視、あるいは無視している点である。朝日新聞が虚構の吉田清治証言を事実として報じ、長年にわたり、虚構の上に虚構を重ねてきた歴史の重みは一切無視されているのだ。そしてまったく逆に、朝日新聞の慰安婦報道が真実であったかのように提示するのである。

GHQをも連想させる
高圧的な目線

 
ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズという3紙の主張をこうして眺めてみると、そこに浮き上がるのは限りなく高圧的で傲慢なスタンスである。日本人の思考や思想は自分たちの指示に従うべきだとさえ響く思想警察ふうの態度だとも言える。占領時代の連合軍総司令部のGHQの機能さえ連想させると言っても過言ではない(ただし、こうした態度がいまの米国全体のそれではないことは強く付記しておくべきだろう)。

 
慰安婦問題に対して米側は当初はあくまで「日本軍の組織的な強制連行」を糾弾し、日本の国家あるいは政府としての戦時行動の犯罪性を追及していた。だが、いまのこの3大紙の主張は証拠や事実を無視して、問題の焦点をずらし、日本側の事実解明の努力を単に「右翼」というような侮蔑的用語でののしっている。

 その種の傲慢な攻撃は、日本の民主主義的な手続きで選出されている首相にまで浴びせられる。「一体、何様のつもりなのか」とはまさにこういうケースを指すのだろう。
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 これら3紙の社説・記事を読んで、誰もがその
でたらめさにあきれかえることと思います。これを読んだら、普通の日本人の対米観が一変すると言っても良いのではないでしょうか。アメリカの悪意はもはや疑う余地はないと思います。

 古森記者は、「
(ただし、こうした態度がいまの米国全体のそれではないことは強く付記しておくべきだろう)」と、括弧付きで付言していますが、本当に米国全体のそれではないのでしょうか。何か具体的な根拠があっての意見なのでしょうか、それとも希望的観測なのでしょうか。

 米国全体のそれではないなら、なぜ有力な
3紙は歩調を合わせたように、このような根拠のない罵声を一斉に日本に浴びせたのでしょうか。
 何者かの意図を反映していないのでしょうか。アメリカ政府の意図を反映している恐れはないのでしょうか。これらに
反論する他紙の社説・記事はなぜ出てこないのでしょうか。3紙はアメリカ政府が言いたくても言えないことを代弁しているのではないのでしょうか。

 アメリカの
連邦議会、地方議会、議員も、今まで3紙に近い主張・行動をしていましたが、それに反対する者、批判する者は皆無と言うのがアメリカの実態です。また、アメリカ政府は議会の動きや、3紙のような主張を支持するとは言っていませんが否定もしていません。

 産経新聞の記者である古森記者は、なぜこのような重大問題を自社の新聞に掲載せず、「BP Press」に掲載したのでしょうか。このような意見を
産経新聞に掲載することがはばかられるという実態があるのではないでしょうか。

 古森記者はGHQを連想させるといっていますが、私も似たような感じを受けました。それは日本のマスコミにとって、未だに
米国批判は占領下と同様にタブーになっているのではないかと言う思いです。

 慰安婦問題の直接の当事者でない
アメリカの熱のいれようは異常です。アメリカの真意・意図には疑問を感じざるを得ません。この記事を見たらほとんどの日本人はそう感じると思います。
 韓国に対する反発にとどまることなく、
アメリカに対する疑惑の眼差し(もしかしたら慰安婦問題の震源地はアメリカではないか)を多くの日本人が共有することが、このような偏向でたらめ記事に対する無言の抵抗になると思います。
 
 先般、内閣府の各国に対する「親しみ度合い」を調査した世論調査結果が報じられていて、
アメリカに対して82.6%の人が「親しみを感じる」と回答していたことが報じられていましたが、
http://www.sankei.com/politics/news/141220/plt1412200016-n2.html
今回の3紙の記事がきちんと国民に知らされていれば、状況は大きく変わってくると思います。その為にもこのような
でたらめ記事については、「米国全体のそれではない」などという言い訳をすることなく、全国民に知らしめ、アメリカの日本に対する悪意に目を逸らすことなく直視する必要があると思います。それが日韓・日中関係改善の道であるだけでなく、日米関係改善の道でもあると思います。

平成26年12月23日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ