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トランプ大統領の「入国禁止大統領令」のどこが、憲法の第何条に、どうして違反するのか、何も報じないNHKニュース

 2月7日のNHKニュースは、「大統領令即時停止の仮処分 米政府が意見書提出」と言うタイトルで、次のように報じていました。
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大統領令即時停止の仮処分 米政府が意見書提出  2月7日 8時47分 NHK 最終更新

 アメリカで7か国の人の
入国を一時的に禁止する大統領令の即時停止を命じた仮処分について、トランプ政権は「大統領令は合法な権限の行使だ」とする意見書をカリフォルニア州にある連邦控訴裁判所に提出し、裁判所の判断が注目されます。

 アメリカのトランプ大統領が中東など7か国の人の入国を一時的に禁止することなどを命じた大統領令について、西部ワシントン州にある連邦地方裁判所は3日、即時停止を命じる仮処分の決定を出しました。

 これに対して、トランプ政権側は、高等裁判所にあたるカリフォルニア州にある連邦控訴裁判所に不服を申し立て、裁判所はワシントン州側と政権側の双方に意見書の提出を求めていました。

 政権側は意見書を提出し、この中で「大統領令は
外国人の入国に対する大統領の権限の行使であり、合法だ」としています。

 これに先立って、スパイサー報道官は記者団に対し、「申し立てが認められると自信を持っている」と述べ、判断が示されれば直ちに入国禁止の措置を再開する考えを示しました。

これに対して、ワシントン州などは「仮処分が取り消されれば被害が広がることになる。裁判所は
憲法違反を許すべきではない」とする意見書を提出しています。

 また、裁判所は、現地時間の7日午後3時(日本時間の8日午前8時)から電話で双方から30分ずつ主張を聞くこと決め、判断は早くともこのあとになると見られます。

 大統領令の即時停止を命じた仮処分について、政権側は直ちに決定の効力を停止するよう求める緊急の申し立てを行いましたが、裁判所はすでに退けています。


トランプ大統領相手に44件の訴え

 アメリカでは、7か国の人の入国を一時的に禁止する大統領令を受けて、少なくとも12の州と首都ワシントンでトランプ大統領を相手取って44件の訴えが起こされました。

 訴えを起こした大半は大統領令で一時的に
入国が禁じられたイランやイラクなど7か国の出身の人たちで、アメリカに入国できなくなったり空港で拘束されたりして拘束や強制送還の停止などを求めて提訴に踏み切りました。

 訴えのうちいくつかのケースでは拘束や強制送還の停止を求める仮処分などが認められていますが、東部マサチューセッツ州の連邦地方裁判所では仮処分の効力の延長を求めた原告の訴えが退けられる決定も出されています。

 一方、原告の多くはアメリカの永住権を持っていて、アメリカ政府がその後、永住権を持っている人は入国できるという立場に一転すると訴えを取り下げたケースも少なくなく、現在も争われているのは24件となっています。

 また、
州政府が訴えを起こしたのは西部ワシントン州と中西部ミネソタ州、それにハワイ州の3州で南部バージニア州は州内にある連邦地方裁判所に提訴したイエメン人2人の原告を支援する形で裁判に加わっています。
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 特定の国の外国人のアメリカへの入国を一時的に禁止する、トランプ大統領の「大統領令」を
憲法違反として訴えた、ワシントン州とアメリカ政府の法廷での争いが世界中の注目を集めていますが、この種の違憲訴訟としては例を見ない事例だと思います。

 それはニュース報道を見る限り、原告側が
「違憲」と主張するだけで、具体的に憲法第何条に違反するのか、その条文を明らかにしていないことです。条文を明らかにしていないので、主張する根拠も証拠もすべてが不明です。

 政府側は
「合法」と回答していますが、違憲とする根拠も明らかにされてないからか、「合法」とする根拠も何も明らかにされていません。

 これでは全く論争になりません。
司法の問題になりようがないと思います。これは裁判が本訴の前の仮処分の段階だからでしょうか。

 単純に考えても、この大統領令に基づく入国禁止で
不利益を被るのは、アメリカ国民ではない外国人であり、その外国人がアメリカの憲法上の権利保護の対象かどうかは疑問があります。
 いわんや直接の
不利益を被ることのない州政府が原告となって違憲訴訟の当事者になれるのかなど疑問は尽きません。トランプ大統領が政治的裁判と主張するのもうなずけます。

 これらをすべて不問として訴訟が進行していくならば、アメリカの司法制度は不可解と言うほかはありません。そうでなく、本当はそれらについて
報じられていない事実があるのであれば、アメリカのマスコミと、NHK他の日本のマスコミは読者・視聴者に対して誠実にその任務を果たしているとは到底言えません。

平成29年2月9日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ