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韓国政府による水産物の輸入禁止問題、WTOで敗訴。調査捕鯨、軍艦島に続く国際機関での敗北

 4月17日のNHKのニュースは、韓国政府による水産物の輸入禁止問題について、「韓国の禁輸継続 『外交の敗北 政府の責任重い』自民党内」と言うタイトルで、次のように報じていました。
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韓国の禁輸継続 「外交の敗北 政府の責任重い」 自民党内
2019年4月17日 11時21分福島第一  NHK

 
WTO=世界貿易機関で、韓国政府による水産物の輸入禁止の撤廃を求めていた日本側の主張が退けられたことを受けて、自民党の合同会議が17日に開かれ、議員からは「外交の敗北だ」などと日本政府の対応を問う厳しい意見が相次ぎました。

 自民党の水産と外交の合同会議では、
外務省の幹部が、WTOの上級委員会の報告書を説明したうえで、今後は韓国との2国間協議で輸入禁止の撤廃を求める方針を説明しました。

 これについて、出席した議員からは「今回は外交の敗北で
政府の責任は重い」とか「負けてはいけない問題で水産業に与える影響は甚大だ」などと、日本政府の対応を問う厳しい意見が相次ぎました。

 さらに、議員からは、各国との協議の方法や、福島の原発事故の汚染水をめぐる風評被害の対策など輸入禁止の撤廃に向けた政府の取り組みを見直すべきだといった意見も出されました。

 会議のあと、自民党水産総合調査会の浜田靖一会長は「韓国とは
2国間協議では難しいからこそWTOに提訴したのにこうした結果になったわけで、抜本的にやり方を変えないといけない」と述べました。
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自民党の指摘はもっともです。
最近の安倍政権は、長期政権の故か、やや傲慢不遜のところがあり、
敗北・失態を直視しないで、うやむやにする傾向が見られます。今回自民党が厳しく反応したことは大変良いことだと思います。

 これについては
韓国の文在寅大統領の反応が、下記の通り韓国の新聞「中央日報(日本語版)」に掲載されていました。
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文大統領、WTO逆転勝訴に「対応団が大きな役割…訴訟戦略資料に」
2019年04月16日09時13分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版] comment6 share mixi .

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が世界貿易機関(WTO)の日本水産物紛争上訴審(最終審)で勝訴判決を引き出した韓国政府訴訟対応団に祝いの言葉を伝えながら「緻密に準備すれば貿易紛争で勝つことができるという自信を持ってほしい」と述べた。

 青瓦台(チョンワデ、大統領府)の高ミン廷(コ・ミンジョン)副報道官は15日の記者会見で、文大統領が午後の首席・補佐官会議で通商秘書官室から「WTO日本水産物紛争最終判定結果および対応計画」の報告を受け、このように話した、と明らかにした。

 また文大統領は、今後の別の紛争訴訟で参考にするためにも一審の敗訴原因と上訴審で変わった対応戦略など一審と二審を比較分析した資料を残す必要があるとし、検討を指示したという。

 韓国政府は2011年3月の福島原発事故直後に1次輸入規制措置を、原発汚染水発表後の2013年8月に強化した臨時特別措置を施行した。これに対し日本政府は2015年5月にWTOに提訴し、WTOは2018年2月にパネル判定で韓国政府敗訴判定を出した。

 すると韓国政府は訴訟を総括する産業部担当課長に
民間通商専門弁護士特別採用するなど関係部処・専門家が参加する訴訟対応団を構成し、法理的誤謬と日本国内の環境的特殊性集中攻略する戦略で最終判定を準備した。

 こうした努力の末、WTOは11日、上訴審で一審判定結果を覆し、貿易制限性など実体的な争点ですべて韓国の勝訴となる判定をした。

 高副報道官は「WTO衛生検疫協定紛争でパネル判定の結果が上訴審で覆った事例は初めてという点を勘案すると、今回の判定は前例がない成果と評価される」とし「これを受け、我々の現行輸入規制措置をそのまま維持することになった」と述べた。
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 彼等の言うことをそのまま信じるわけではありませんが、彼等なりに
負けられないという気持ちは強かったと想像できます。韓国の新聞にあるように彼等なりに努力・準備をしていたようです。

 彼等にとって日本に勝つことは、
殊勲賞ものでしょうが、日本(の外務省官僚)に取っては、韓国相手のこの種の紛争は、余り闘志が湧くものではなかったのかも知れません。

 私が気になるのは、2015年に世界遺産に登録された
「軍艦島」のことを思い浮かべたからです。軍艦島の時も韓国はの主張を国際会議の席で繰り返し、日本と韓国は一旦合意したにも拘わらず、会議の席ではその合意を覆して世界遺産登録に反対し、登録を焦った日本“強制労働”という虚偽を認めて、韓国に敗北を喫するという失態がありました。

 それ以前にも日本の
調査捕鯨国際捕鯨取締条約に違反するとして、オーストラリアにより国際司法裁判所に提訴され、敗北したこともあります。この件は、その後日本は国際捕鯨委員会脱退しましたが、結果論になりますが、今から考えればもっと早く、オーストラリアが提訴する前に脱退した方が良かったのではと思います。

 国際機関を舞台にした争いという同じような場面で、同じような
失態を外務省が繰り返したことは軽視できません。軍艦島の時も、その後強制労働の事実はないと反論していますが、国際会議の場で認めたという事実は重いものがあります。

 このように例が続いたことから、
外務省は大丈夫なのかと言う不安が脳裏をよぎります。日頃日韓の険悪な交渉の映像を見ても日本の外交官が頼りなく見えることはしばしばです。

 まず、
WTO提訴が最善だったかと言うことがあります。読売新聞の報道では、近年WTOは弱体化した、アメリカはもはや信用していないという報道がありました。
 一般的には諸外国は
国際機関を余り信用せず、彼等に委ねるよりも当事者の交渉、圧力と報復で対処する方が一般的ではないのでしょうか。国際機関の裁定に委ねるのは、どちらかと言えば、どうでも良いような問題だけではないのでしょうか。

 各種の国際機関は厳密な意味での
司法の独立性、中立性が確保されているとは言えず、ロビー活動が横行しているという実態が有るにも拘わらず、日本は国際機関を信用しすぎているのではないでしょうか。今の世界は「法が支配する世界ではない」と言う厳然たる事実を再認識しなければならないと思います。
 
「憲法前文」に書かれていることは、現実離れした理想であって現実ではないのです。現実を直視しなければ成りません。
 そして、その
国際機関はさほど日本の信頼に応えることはない、むしろ反対であると言う実態があるのではないでしょうか。

 そうであれば、結果論になってしまいますが、WTO提訴ではなく、可能であれば
個別の対抗措置、報復措置という対応の方がではなかったのかという気もします。

 すべてを外務省の責任とすべきだとは思いません。
日本が置かれている立場は我々が思っているよりも厳しいものだという感じがします。捕鯨、軍艦島、WTOは結果から見れば楽観的すぎたようです。日本はそういう現実を直視していなかったのではないでしょうか。

 今後のことで心配なのは
“慰安婦”、“徴用工”問題です。安倍総理は国際機関への提訴を辞さないと考えているようですが、それらの機関は信用できるのでしょうか。WTOの二の舞と言うことはないでしょうか。
 その為にも外務省は今回と前回「軍艦島」、前々回「調査捕鯨」の経緯を改めてて見直して、同じ失態を繰り返すことのないようにしなければならないと思います。

 もし、信用できないとすれば、
日本独自の制裁・報復で解決することも視野に入れなければならないと思います。今の世界は法が支配する世界ではないことを認識しなければ成りません。
 今回の敗北を教訓として、気を引き締めて同じ誤りを繰り返さないようにすべきだと思います。

平成31年4月19日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ