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アフガン誤爆は重過失、広島・長崎の原爆投下は未必の故意

 9月19日のNHKテレビニュースは、「『
謝罪で済まされない』米軍のアフガン誤爆 遺族が補償求める」と言うタイトルで、次の様に報じていました。
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「謝罪で済まされない」米軍のアフガン誤爆 遺族が補償求める
2021年9月19日 5時44分  NHK

 アメリカ軍が先月、アフガニスタンの首都カブールで行った空爆が
誤爆だったと認め、子どもを含む10人の市民が死亡したと明らかにしたことについて、遺族の1人がメディアの取材に応じ、アメリカ政府に対して責任者の処分と遺族への補償を求めました。

 アメリカ軍は先月29日、アフガニスタンの首都カブールで、過激派組織IS=イスラミックステートの地域組織による攻撃の脅威を取り除くためだとして
無人機による空爆を行いましたが、これについてアメリカ中央軍は17日、誤爆だったと認め、子どもを含む10人の市民が死亡したことを明らかにしたうえで、謝罪しました。



 遺族のうち、3歳の娘や兄を失ったエマル・アフマディさんが18日、AP通信のインタビューに応じ「私たちは多くの家族を失い、二度と戻ってくることはない。決して
謝罪だけで済まされることではない」と述べ、悲痛な胸の内を明かしました。

 そのうえで「無実の子どもたちを殺し、空爆を実行したのは誰なのか、
特定し罰するべきだ」と述べ、アメリカ政府に対して責任者の処分を求めるとともに、遺族への経済的な補償もあわせて求めました。
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 この爆撃に対して、アメリカ中央軍の
最高司令官が、「悲劇的な誤爆であったとして、心からの謝罪」を表明しました。

 
戦場での空からの爆撃において、目標以外の人・物に命中したことを「誤爆」として「心から謝罪する」と言うのは初めてのケースではないかと思います。戦場における戦闘行為であっても、過失は過失(場合によっては重過失)であり、免責にはならないと言うことです。

 今回の場合は
無人機による攻撃で、攻撃目標の設定を誤ったから誤爆と言うことのようですが、もし、設定に誤りはなく目標には命中したものの、目標の周囲は民家が密集していて、民間人10人が巻き添えになって殺害されたら、その場合その人達への謝罪はあるのでしょうか。目標に命中したから誤爆ではないとしても、周囲の状況から爆撃すれば多数の民間人が巻き添えで犠牲になることが、当然に予測できる状況であれば、やはり謝罪が必要になるのではないでしょうか。

 次に無人機ではなく、
有人爆撃機の場合はどうなるのでしょうか。
 
 有人機でも無人機でも、
攻撃目標は敵の兵士軍事施設や軍需工場などであることに変わりはないはずで、住宅内一般国民(非戦闘員)が攻撃目標になることはないはずです。戦時の国際法ではそのような攻撃は認められていないと思います。

 では
有人爆撃機が今回の様に、目標を爆撃して周囲の住宅などの非軍事施設内の非戦闘員を巻き添えにしてて殺害した場合はどうなるのでしょうか。無人機の場合と同様に過失責任を問われるのでしょうか。爆撃を指揮した者、爆撃機の操縦者等は責任を負うことになるのでしようか。

 その場合に
精密誘導兵器である無人機と、そうでない爆撃機との違いが問題になるかもしれません。高高度を飛行する爆撃機から大都市を爆撃するとなれば、住宅を避けて爆撃することは不可能であり、過失責任は問えないという考え方が出てくるでしょう。
 精密誘導兵器ではない爆撃機の操縦者には過失責任は問えないと言う事でしょうか。

 であれば、そもそも
大都市を無差別爆撃すること自体が不適切と言う事ではないでしょうか。そう考えれば、それはもう過失云々の問題では無く、“未必の故意”(見方によっては故意)と言う事になると思います。

 そう考えると、
アフガン誤爆による10人の殺害は過失もしくは重過失にあたり、広島・長崎の原爆投下による一般国民20万人の殺害未必の故意もしくは故意に当たると言うことにならないでしょうか。
 
「重過失」より、「未必の故意」の方が“重罪”である事は言うまでもありません。

令和3年9月29日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ