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「非核三原則」を連呼して、“思考停止状態”にある被爆者・政治家達 −北朝鮮の核開発を黙認したアメリカが日本との核兵器の「共有」に応じるかは不明−

 3月1日と3月2日のNHKテレビニュースは、それぞれ「岸防衛相「非核三原則を堅持」米核兵器の共有運用は認められず」、「非核三原則見直しなどめぐる与野党発言 日本被団協が強く批判」と言う見出しで、次の様に報じていました。
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岸防衛相「非核三原則を堅持」米核兵器の共有運用は認められず
2022年3月1日 18時48分 NHK

 自民党の安倍元総理大臣がアメリカの核兵器を同盟国で共有して運用する政策をタブー視せずに議論すべきだという考えを示したことについて、岸防衛大臣は、非核三原則の堅持が政府の方針であり、日本の領土にアメリカの核兵器を置くことなどは認められないと強調しました。

 ウクライナ情勢を踏まえた今後の安全保障政策をめぐり、自民党の安倍元総理大臣は、アメリカの核兵器を同盟国で共有して運用する政策について、日本でもタブー視せずに議論すべきだという考えを示しました。

 これについて岸防衛大臣は1日、記者団に対し「政府としては政策上の方針として、非核三原則を堅持していく考えに変わりはない」と述べました。

 そのうえで「平素から自国の領土にアメリカの核兵器を置き、有事には自国の戦闘機などに核兵器を搭載・運用可能な体制を保持する枠組みを想定しているのであれば、非核三原則を堅持していくことから認められるものではない」と述べました。

松野官房長官非核三原則を堅持に変わりはない」
 松野官房長官は、午後の記者会見で「多くの国々が経済分野を中心に、ロシアに対する制裁措置を導入しているが、その文脈でロシアが核抑止力部隊の態勢を引き上げたことは、情勢のさらなる不安定化につながりかねない危険な行動だ」と指摘しました。

 そのうえで「核兵器は、いったん使用されると広範囲で多大な惨禍をもたらす。唯一の戦争被爆国であり、核兵器の非人道性を知るわが国として、核兵器が用いられることはあってはならないと考えており、強く訴えていきたい」と述べました。

 また、ウクライナ情勢を踏まえた今後の安全保障政策をめぐり、与野党の一部から、アメリカの核兵器を同盟国で共有して運用する政策を議論すべきだという声が出ていることについて「政府としては政策上の方針として非核三原則を堅持していく考えに変わりはない」と強調しました。

林外相「認められない」
 林外務大臣は、記者会見で「政府としては、政策上の方針として非核三原則を堅持していくという考えに変わりはない。例えば、有事に自国の戦闘機に核兵器を搭載し、運用可能な体制を保持することなど、自国などの防衛のためにアメリカの核抑止を共有する枠組みを想定しているということであれば、非核三原則を堅持していくということから認められない」と述べました。

自民 福田総務会長「議論 回避すべきでない」
 自民党の福田総務会長は記者会見で「わが国が唯一の被爆国であることを踏まえたうえで、議論は回避すべきではなく、すべきだ。国民や国家を守るのであれば、どんな議論も避けてはいけない。国民の感情や、これから先の日本、それに世界の在り方を考えたうえで、しっかり枠をつくっていくのが政治の役割だ」と述べました。

自民党の
世耕参議院幹事長は、記者会見で「政府が明確に非核三原則を堅持するという考えを私は支持するが、今後も未来永ごうやっていけるのか、議論する必要はあるのではないか。安倍元総理大臣も議論は必要だと問題提起したと受け止めている。国防上の問題は常に議論してベストな選択ができるように構えておくのは当然のことだ」と述べました。

立民 泉代表何でも議論すればいい、は違う」
 立憲民主党の泉代表は、記者団に対し「核兵器は使われるべきではなく、互いに持つべきではない。特に日本は被爆国であり、われわれが核を持ったり、持ち込ませたりするという態度ではいけない。何でも議論すればいいという話がよくあるが、それは違う。議論はすればいいという話にしてはいけない」と述べました。
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非核三原則見直しなどめぐる与野党発言 日本被団協が強く批判
2022年3月2日 19時07分 NHK

 ロシアによるウクライナへの侵攻に関連して与野党の一部から非核三原則の見直しなどをめぐる発言が相次いでいることを受けて、日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会が記者会見し「『再び被爆者をつくらない』という努力を根底から覆すものだ」などと強く批判しました。

 ウクライナ情勢を受けて与野党の一部からはアメリカの核兵器を同盟国で共有して運用する政策や、非核三原則の見直しをめぐって発言が相次いでおり、このうち
日本維新の会は2日、議論を始るよう政府に提言することを決めました。

 こうした状況を受けて全国の被爆者団体でつくる日本被団協はオンラインで記者会見を開き、長崎で被爆した田中重光代表委員(81)は「66年前の結成以来『再び被爆者をつくらない』という思いで運動を続け、核兵器禁止条約の発効にまでつなげた人々の努力を根底から覆すもので心の底から怒りがわいてくる」と述べ、一連の動きを強く批判しました。

 また同じく長崎で被爆した和田征子事務局次長(78)は「核兵器の脅威が高まっている今だからこそ、日本が核兵器禁止条約に参加する機運を高めていくべきなのに、日本の
国是である非核三原則をないがしろにするかのような動きが出るのは本当に残念だ」と述べました。

 日本被団協は2日、日本維新の会に対し提言の撤回を求める声明を送ったということです。
 長崎県被爆者手帳友の会 会長“非核三原則 堅持を”
長崎県被爆者手帳友の会の会長で外務省の「核軍縮を推進する賢人会議」のメンバーでもある朝長万左男さんはNHKの取材に対し、核兵器を共有して運用する政策をめぐる議論について「ウクライナのことだけを見て『核の共有』しかないという提案のしかたは無責任だ」と述べ、日本政府はあくまで非核三原則を堅持するべきだという考えを強調しました。
核廃絶などに取り組む学生は…
 核兵器の廃絶など平和活動に取り組む大学生からは落胆や憤りの声が聞かれました。

 被爆者の証言を集める活動などを行ってきた広島出身の大学3年生、高橋悠太さんは「核兵器に関する議論が安易に進みすぎていると懸念しています。日本の核兵器に対するモラルが低下し、被爆の記憶が風化していることを感じています。核兵器については本来は被害の視点で語るべきなのに安全保障の視点でのみ語られていることにやるせない思いです」と話していました。

 また長崎出身の大学3年生、中村涼香さんは「今までに感じたことのない無力感があります。政治家が言う『国を守る』ということばが自分の国に核兵器が落とされなければいいという安易な考えから出ているように聞こえます。これまで核の脅威に触れることがなく、核兵器が使用された場合にどういったことが起きるのかを想像しにくい時代になっているのかもしれませんが、だからこそ核兵器が非人道的な破壊をもたらすことに改めて焦点を当てるべきだと思います」と話していました。

「核兵器の共有」とは
 核兵器を同盟国で共有して運用する政策はアメリカと、NATO=北大西洋条約機構の一部の非保有国の間で取り入れられています。

 アメリカが管理する核兵器をそれぞれの国の領土に置き、有事にはアメリカの決定のもと、その国の軍用機などに核兵器を搭載して運用する仕組みです。

 NATOのホームページによりますと、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、それにトルコにはこの政策に基づいてアメリカの核兵器が配備されているということです。

 仮にこの仕組みをアメリカと日本の間で取り入れるとした場合、アメリカの核兵器が日本の国内に持ち込まれることになるため「非核三原則」に反することになり、岸防衛大臣は1日、記者団に対し「非核三原則を堅持していくことから認められるものではない」と述べています。

非核三原則と核兵器
 核兵器について「持たず、作らず、持ち込ませず」と定めた非核三原則は日本が唯一の戦争被爆国であることを踏まえ、1971年に国会で決議されました。

 1954年、静岡県のマグロ漁船「第五福竜丸」の乗組員がアメリカの水爆実験で被ばくし、国内で原水爆禁止運動が高まりました。

そして翌1955年原子力基本法が制定され、原子力の利用は平和目的に限定されました。

 また1976年には日本はNPT=核拡散防止条約に批准し、原子力基本法と合わせて核兵器の製造、保有は法律でも全面的に禁止されました。

 一方、非核三原則のうち「持ち込ませず」については法的に禁止されてはおらず、アメリカの核の傘に守られている実態を踏まえ是非を議論すべきだなどの指摘が出されたこともあります。

 しかし歴代の政権は非核三原則を被爆国・日本の「国是」として一貫して堅持してきました。

松野官房長官も1日の記者会見で「政府としては政策上の方針として非核三原則を堅持していく考えに変わりはない」と述べています。
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 この問題で一番大事な事は、日本が三度目の原爆被害に遭わないようにする事と、核の脅迫に屈することのないように備えることです。理想論・きれい事を言い続けることではありません。

 核武装しなければ核攻撃を受けることは無いという保障は無いし、核の脅迫に遭わないと言う保障もありません。むしろ正反対です。日本が核を保有していたら、広島・長崎はなかったであろうと言う外国の見解を聞いたことが有ります。

 すべての核保有国が「世界で最初の、唯一の被爆国である日本には絶対に核攻撃をしない」という誓約をしているならともかく、そんな誓約はどこもしていないし、仮に有ったとしても、日ソ不可侵条約を破ったロシアの誓約などは全く当てになりません。

 「日本は唯一の被爆国であるから、核武装するべきではない」と言うのはむしろ反対で、「だからこそ三度目の被害に遭わないようにするのは当然だ」という方が、理にかなっています。

 その為に必要・不可欠なことが核兵器の保有(共有)であり、それ以外に手段がなければそれを進めるしかありません。
 そしてそれが“非核三原則”に抵触するのであれば、“非核三原則”を改正すればいいのです。所詮“非核三原則”などは、憲法でも法律でもない、51年前の単なる国会の議決に過ぎません。法的拘束力を伴うものではありません。

 それにも拘わらず非核三原則声高に連呼して、そこで自ら
“思考停止”に陥るのは愚劣の極み、無責任の極みです。他意あるものと考えざるを得ません。

 核兵器について「持たず、作らず、持ち込ませず」と定めた「非核三原則」は、今から51年前の1971年に国会で議決されました。同じく原子力の平和利用を定めた原子力基本法1955年、今から67年前の制定です。
 当時と今とでは、日本を取り巻く環境は大きく変わっています。

 その後インド、パキスタン、北朝鮮の3国が核兵器を保有し、更に現在ではイランの核開発が進行し、日本は核保有国に周囲を囲まれていると言って良い状態で、当時とは比べものにならないほど、
核の脅威は拡大しています。

 それに対して多くの“非核三原則”信奉者達は、全く思考停止状態で、“非核三原則”を呪文のように唱え続けています。

 また、アメリカの北朝鮮の核保有に対する
甘い姿勢と、イランの核開発に対する厳しい姿勢には極端な違いがあり、注目すべきです。それはアメリカの日本に対する姿勢とイスラエルに対する姿勢の違いであり、日本はアメリカの核の傘で安心していられると言えるのかは疑問が残ります。

 日米安保条約はアメリカには日本防衛の義務がある一方で、日本にはアメリカ防衛の義務がないという片務条約です。なぜアメリカがこのような片務条約に応じたかと言えば、“日本を愛している”からではなく、日本に大規模な米軍基地を引き続き置く必要があったのと、日本を非武装(軽武装)に止めておきたかったからです。日本防衛義務はその見返りというだけです。

 一方アメリカイスラエルとの関係はと言えば、両国間には“安全保障条約”はなく、アメリカにはイスラエルを守る法的義務はありません。しかし、アメリカとイスラエルの関係は法律を超越した“超法規的”関係が存在するのです。

 このような関係から考えると、アメリカがイランの核疑惑に
厳しい対応をして、一方で北朝鮮の核開発を(結果的?に)見逃して、核保有の今日に至った経緯を日本人は軽く考えるべきではありません。

 一方で、3月2日のニュースでは、被団協他の“被爆者”の人達の反対意見が、大きく・広く報じられていますが、全国民の数から見れば極めて少数
被爆者の意見が、特別扱いされるのは感情論の拡大報道であり、冷静な安全保障の議論ではありません。核への対応は、少数の被爆者の意見に左右されるべきではありません。

 日本とアメリカの「核共有論」
 アメリカが日本との核の共有に
同意する事が前提の議論の筈ですが、誰か確認したのでしょうか。同意するかは疑問です。単なる持ち込みなら同意するでしょうが。
 もし、アメリカが持ち込みを要求してきた時に、日本がアメリカに対して、一部「共有」を条件にして交渉することは有意義と思います。

 「国を守る」、「自分の国に原爆が落ちなければ良い」という考えは、安易であるとの指摘がありますが、決して安易はなく切実な考えです。それを安易と批判する意見の方が「安易」と言うべきでしょう。

 それにしても60年安保の時は、日本の社会は「安保反対」、「
非武装中立(今ロシアが武力でウクライナに要求していることと同じ)」の主張(怒号)とデモ行進が社会を覆っていました。当時の学者・新聞記者・若者で、高齢になってはいても未だ存命の人は、今頃は何を考えて生きているのでしょうか。

令和4年3月10日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ