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今回のウクライナへの「戦闘機供与」とロシアの反応を、過去の米・ロ(米・ソ)の間接戦争(紛争)との比較で考える 
−キューバ、ベトナム、アフガニスタンとの比較−
 
 3月10日のNHKテレビニュースは、「“米軍基地経由でウクライナに戦闘機”ポーランド提案を米拒否」と言うタイトルで、次のように報じていました。
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“米軍基地経由でウクライナに戦闘機”ポーランド提案を米拒否
2022年3月10日 10時23分 NHK



 アメリカ国防総省のオースティン長官は、ポーランドの国防相と電話会談し、ドイツにあるアメリカ軍基地を経由してウクライナに戦闘機を供与するというポーランド側の提案を拒否しました。

 国防総省は、戦闘機の供与に反発するロシアとの間で、軍事的な緊張を高めるおそれがあることなどを理由に挙げています。

 欧米諸国が、ロシアの軍事侵攻を受けるウクライナへの武器の供与を進める中、ポーランドはウクライナ軍が扱いに慣れている旧ソビエト製のミグ29戦闘機をドイツにあるアメリカ軍基地を経由させて供与し、代わりにアメリカから別の戦闘機を受け取る形を提案していました。



 これについてアメリカ国防総省のカービー報道官は9日の記者会見で、オースティン国防長官がポーランドのブワシュチャク国防相と電話会談し「現時点では、ウクライナへの追加の戦闘機の輸送は支持できない」と述べ、提案を拒否したことを明らかにしました。

 その理由についてカービー報道官は、ウクライナの陸上の防空システムがロシアからの攻撃を一定程度防いでいることや、
戦闘機の供与がロシアからの強い反発を招き、NATO=北大西洋条約機構との軍事的な緊張を高めるおそれがあることなどを挙げました。

 戦闘機の供与は、ウクライナのゼレンスキー大統領が、より強力な軍事支援として要請し、アメリカ側は当初、ポーランドから直接、ウクライナに輸送することを想定していたとみられ、アメリカ軍基地を経由する提案が発表される前までは、前向きな姿勢を示していました。

 一方、ロシア側は、近隣諸国の空港がロシア軍の攻撃などに使用された場合「紛争の
当事者とみなすこともありうる」と警告していました。

 アメリカの姿勢が一転した背景には、戦闘機がアメリカ軍基地からウクライナへ供与されれば、アメリカとロシアの軍事衝突につながるおそれがあるという判断があったとみられます。
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 第三国を舞台にした米・ロ(米・ソ)の間接戦争(紛争)は過去にいくつも例があります。一番古いのは、キュ−バを舞台にしたキューバ危機です。

 (キューバ危機(キューバきき、(英: Cuban Missile Crisis、西: Crisis de los misiles en Cuba、露: Карибский кризис)は、1962年10月から11月にかけて、旧ソ連がキューバに核ミサイル基地を建設していることが発覚、アメリカ合衆国がカリブ海でキューバ海上封鎖を実施し、米ソ間の緊張が高まり、核戦争寸前まで達した一連の出来事のこと。フリー百科事典『ウィキペディア
(Wikipedia)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%90%E5%8D%B1%E6%A9%9F

 この時アメリカはキューバを“海上封鎖”して、ソ連の艦船がキューバに入港するのを阻止しました。
アメリカ軍はキューバに対して軍事行動は取りませんでした。アメリカにとって脅威となる行動を取っていたのは、ソ連であってキューバではなかったからです。ソ連は当事者であり、支援者ではなかったのです。

 今回のウクライナの事態は、当事者はあくまで独立国家のウクライナであり、アメリカ以下のNATO加盟国はあくまで支援者です。そこが「キューバ危機」とは決定的に違う点でしょう。

 仮にウクライナのNATO加盟が確実で、それがロシアの安全保障に深刻な障害となるとしても、ウクライナが独立国家である以上、武力行使は正当化できないと考えるべきです。
 キューバ危機の際のアメリカの軍事行動(キューバへ向かうソ連の艦船阻止)は正当化できても、今回のロシアのウクライナに対する公然の侵略行為は正当化の余地はありません。

 次のケースはベトナム戦争です。ベトナム戦争ではアメリカは当事者として北ベトナムと戦いソ連と中国は北ベトナムの支援者として、莫大な兵器支援をしました。アメリカはそれにより大変な苦戦を強いられ、ついに撤退に至りました。ソ連・中国の支援が無ければ、アメリカの敗退はなく、歴史は変わっていたでしょう。
 しかるにアメリカは陸路・空路・海路から兵器、弾薬、軍需物資等を陸揚げする
ソ連・中国の輸送車・航空機・艦船に対する攻撃や阻止の行動を一切取ることなく黙認していました。

 今回のウクライナのケースでは、ロシアはNATO諸国がウクライナに兵器・弾薬等を持ち込む行為を「“当事者”と見なす」と脅迫し、アメリカもそれを恐れているようですが、それはベトナム戦争当時に、今とは
立場が反対とは言え、自分達(米・ソ)がしていたことと矛盾します。

 次はアフガニスタンです。ソ連はアフガニスタン国内のクーデターを装って、軍隊を送り侵略しました。アメリカはアフガニスタン国内の抵抗勢力「タリバン」武器を供与して、対ソ連抵抗戦争を支援しました。アメリカがタリバンに供与した対空ミサイル等の威力によりソ連軍は劣勢となり、ついに敗退に至りました。

 この戦争でもアメリカは当事者ではなく支援者に止まり、膨大な武器・弾薬をタリバンに供与しました。それが勝敗を決したと言って良いと思います。そして、それに対して
ソ連アメリカの支援阻止することはありませんでした。

 これは
ベトナム戦争とは米・ソの立場が逆転したケースですが、立場が逆でも「武器・弾薬の支援」「参戦」ではないという共通の認識があったと言えます。
 更にアフガニスタンはベトナムとは違い、当時のソ連が
国境を接していた隣国です。その点は今のウクライナと同じです。

 そうすると今回のプーチンの言い分は、かなり
身勝手で、また、バイデンは弱気であると言えるのではないでしょうか。

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