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誤解を招く「中国、韓国に対する『親近感』調査」

 総理府が4月24日に発表した「外交に関する世論調査」によると、外国に対する国民の親近感(親しみ)では、アメリカが77.6%でトップ、ついで中国の48.9%、韓国の46.2%と続く結果となったそうです。
 「親近感」などという言葉は多分に情緒的な言葉で、外交に関する調査であれば、「友好国と思うか」とか、「信頼できるか」という質問をすべきであると思います。

 事実、同時期の4月28日に発表された、外務省がアメリカのギャラップ社に委託して、アメリカ人を対象にして行った世論調査では、「日本を信頼できるか」、「日米安保条約は重要であるか」、「アジアで重要なパートナーはどこか」という質問をしています。
「親近感」、とか「親しみ」という質問では、地理的、歴史的、文化的に近い関係にある事から来る親近感という趣旨と誤解したり、混同して回答する人が出てくる恐れがあります。その結果中国と韓国について、肯定的な回答がその分だけ多めに出ると思います。外交で重要なのは「友好的であるか」、「信頼できるか」であって、「親近感」、「親しみ」とは別の問題だと思います。

 新聞の報道を見ると、産経新聞では「韓国への親近感8.3%増の46.2%」という見出しで、記事本文では「諸外国への親近感では・・・」となっており、一方、読売新聞では「韓国に親しみ8ポイント増」という見出しで、記事本文では「韓国に対して『親しみを感じる』と答えた人は・・・」となっていて、世論調査の質問が「親近感」なのか、「親しみ」なのか食い違っています。実際にどういう質問をしたのか記事を見ただけでは分かりません。

 中国、韓国に対する質問で、両国が日本に対して「友好的であると思うか」とか、「信頼できると思うか」という質問をすれば、両国に対する肯定的な回答はこれ程高率にはならなかったと思います。
 総理府の調査では似たような言葉で、各国について「関係が良好と思うか」という質問をしていますが、国民に対してはこのような観察者の立場に立ったような質問ではなく、日本人の立場から見て、各国についてどう思うかを率直に問うべきだと思います。韓国などではいつも「日本は好きか嫌いか」という世論調査をしています。

 総理府が「親近感」、あるいは「親しみ」などという情緒的な質問をあえてするのは、中国と韓国に対して否定的な回答が多くなるのを防ごうという思惑があってのことだと思います。国民感情を表面に出さずに抑え込もうとすることは、外交上不利益になることはあっても、有利になることは何もないと思います。

平成11年5月18日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ