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欧米の諸国は、なぜグローバル・サウスの人達の支持を得られないのか

 7月30日の読売新聞は、「ワグネルが介入示唆、ニジェールに軍事政権成立の可能性…ロシア傾斜の懸念」と言う見出しで、次の様に報じていました。

❶、❷・・・❼番号は安藤が挿入
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ワグネルが介入示唆、ニジェールに軍事政権成立の可能性…ロシア傾斜の懸念
2023/07/30 23:53 読売

 【ヨハネスブルク=笹子美奈子】西アフリカ・ニジェールのクーデターで
❶親米欧派のモハメド・バズム大統領が失脚し、軍事政権が成立する可能性が高まっている。周辺国でロシアの民間軍事会社「ワグネル」の影響力が強まっており、❷米欧がアフリカ関与の拠点としてきたニジェールがロシアに傾斜する懸念がある。

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30日、
❸ニアメーでクーデターへの支持を表明する群衆。
ロシア国旗を持った人もいた=AP


 クーデターは26日、大統領警護隊が首都ニアメーの大統領府を取り囲み、バズム氏を監禁して始まった。
❹アブドゥハーマン・チアニ大統領警護隊長が他の勢力の支持を取り付け、28日に国のトップに就任し、憲法を停止すると宣言した。

 バズム氏は監禁された後も危害は加えられていないとみられ、米欧諸国と電話などで接触している。国内では、大規模な戦闘は起きていないとみられる。

 中国やロシアとの友好関係を維持する国が多いアフリカで、ニジェールは2021年にバズム氏が大統領に就任後、
❺米軍の訓練受け入れなどで協力した。旧宗主国フランスは、対イスラム過激派作戦のために10年間派遣した部隊を昨年8月に隣国マリから撤退させ、ニジェールに拠点を移した。
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 マリやブルキナファソでは最近、ワグネルが関与を強めている。クーデター発生後の今月27日には、ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏とみられる人物がニジェール情勢に触れ、「ワグネルは秩序を再構築し、市民を守ることができる」と介入を示唆した音声がSNSに投稿された。

フランス大使館のドア放火
 AP通信によると、ニアメーでは30日、
❻フランス大使館前で数千人がデモを行い、ドアが放火された。ロシア国旗を手にして、プーチン露大統領を支持すると訴える人の姿もあった。

 
❼欧州連合(EU)とフランスは29日、ニジェールへの援助停止を発表し、クーデターを起こした勢力への圧力を強めた。

 ◆ ニジェール =アフリカ西部の内陸国で、人口は約2600万人。世界最貧国の一つとされる。国民の大多数がイスラム教徒。フランスの旧植民地で、1960年に独立した。クーデターがたびたびあり、最近は2010年に起きた。核燃料となるウランの世界有数の産出国でもある。
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 今回の記事の
要点は❶~❼の部分です。

 ウクライナ戦争を始めとする
世界各地の紛争(武力・非武力を問わず)に於いて、グローバル・サウス(以下サウス)と一括りに呼ばれる開発途上国(そのほとんどが欧米諸国の旧植民地または中南米のアメリカの強い影響下にあった国)の多くが、欧米諸国と一線を画すケースが増えています。このニジェールもその一例と言えるでしょう。

 欧米の
旧宗主国の人達は、旧植民地の独立国に対して、謝罪も賠償金も支払っていません。それにもかかわらず「新興国」である旧植民地で何か問題が起きると、“人権、人権”上から目線で批判することがしばしばです。それだけでなく援助を停止するなどの制裁を科す事も常態化しています。

 彼らが
なぜそのような行動に出るのかと言えば、何世紀にもわたる植民地支配における自分たちの残虐行為の罪を薄め、反対に優越感を維持し、過去に対する批判に逆襲を図っているのだと思います。

 
サウスの人達からすれば、植民地統治下で自分たちに対して、過酷な人権侵害をしておいて、独立国家となった自分たちに対して人権云々という資格があるのか、それよりも過去に植民地を持たず、独立後の自分たちを支援してくれるロシア・中国の方が遙かにマシだと感じるのはある意味でやむを得ないところだと思います。本当はロシアも中国国内の少数民族や周辺諸国に対しては、かつての欧米の植民地支配同様・類似の事をしていますが、そのことは目に入っていないのか、目をつぶっているのでしょう。

 それに加えて
今の欧米諸国は、自分たち(サウスの国々)が独立を勝ち取った当時と比べて、軍事力、経済力共に相対的に弱体化しています。欧米(特に)の経済力、軍事力が、長期的に見れば、世界に対して、サウスの国(例えばインド、インドネシアなど)に対して、かつてのような圧倒的な優位を保てなくなって来ています。

 それに対して、
サウスの国々(特にアジアの)は経済的な離陸を図りつつあり、いくつかの国は既に経済的な離陸を成し遂げ、もはや“低開発国”ではなくなりつつあります。この辺が最近のサウスの動き(欧米離れ)と、欧米諸国の反応を決定づけていると思います。

令和5年8月6日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ