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「反日」の総仕上げ、自分の立場をすべて放棄した日本

 韓国の金大中大統領を迎えて、日韓両国政府の共同宣言の中で小渕首相が「我が国が過去の一時期韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受け止め、これに対し、痛切な反省と心からのお詫びを述べた」と発表されました。「多大の損害と苦痛」の内容が不明確であり無条件に事実であることを承認できませんが、事実であったとしても、それはすべて韓国人から見た歴史的事実に過ぎないと思います。しかも、事実のすべてではありません。この事実認識の中には日本人にとっての事実が全く欠落しています。ロシアの脅威、帝国主義の時代背景、日本の統治下における朝鮮の急速な近代化、民生の向上、人口の急増・・・、これらの重要な事実がすべて無視されています。
 偏った歴史認識と言わざるを得ません。台湾では近年中学校の社会科の教科書が改訂されるなど、日本の植民地支配を正当(良い面も悪い面も含めて)に評価しようという動きが高まっています。日本の植民地統治下における近代化がなければ、韓国の経済、文化水準が現在の中国並に止まっていることは十分考えられることです。

 金大統領はその後の日本の国会における演説で、明治維新を評価する一方で、「当時の日本は帝国主義と戦争の道を選択することにより、・・・」と言っていますが、当時の世界は帝国主義の時代であり、日本だけが「帝国主義と戦争の道」を選んでいたわけではないのです。アメリカがハワイを武力と謀略により併合し、スペインに戦争を仕掛けてフィリピンを奪い、コロンビアからパナマを奪ったと言う事実を知らないのでしょうか。世界の歴史を知らないと言うか、世界史的視野に欠けると言うか、日本しか見えないと言う狭視野、近視眼的な歴史認識であると思います。
 そして仮に日本の植民地支配が韓国人にとっては「苦痛と損害」だけのものであったとしても、それについて日本が謝罪をすべきと言うことにはならないのです。

 インドネシアは350年に及ぶオランダの過酷な植民地支配の後、4年間の独立戦争で80万人の犠牲者を出した末ようやく独立を果たしましたが、独立の条件としてオランダに60億ドルを支払いました。オランダが60億ドルの賠償金を支払ったのではありません。インドネシアが支払ったのです。そして、その後オランダは一言だってインドネシアに謝罪をしたことはありません(そのくせ日本に対しては執拗に謝罪を要求しています)。かつて植民地を支配した旧宗主国で自ら加害者であることを認めて謝罪している国などないのです。それとも韓国人は世界中で日本と韓国に関してのみ「加害者」「被害者」の関係が成り立つと言うのでしょうか。
 日韓両国の共同宣言が韓国人の立場から見た事実認定にのみ基づいて作成されるのは重大な誤りです。日本にとって自殺行為です。このようなゆがんだ歴史認識は将来必ず破綻すると思います。

平成10年10月10日     ご意見・ご感想は  こちらへ      トップへ戻る      F目次へ