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日韓対立はアメリカの利益

 5月1日の読売新聞は、「米韓首脳会談『北の核』主題…21日開催」と言う見出しで、次の様に報じていました。
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米韓首脳会談「北の核」主題…21日開催
2021/05/01 05:00 読売

 【ソウル=豊浦潤一】韓国大統領府は30日、文在寅ムンジェイン大統領が5月21日にワシントンを訪問し、バイデン大統領と会談すると発表した。文氏は4月中旬に訪米した菅首相に続き、バイデン氏が迎える2人目の外国首脳となる見通しだ。

 米ホワイトハウスも29日(米東部時間)、文氏の訪米日程を発表した。韓国大統領府によると、北朝鮮の核問題が主要議題となる。米韓関係筋によると、中国を念頭に置いた「クアッド」と呼ばれる日米豪印の枠組みへの韓国参加も議題となるとみられる。だが、中国に配慮して参加に難色を示す韓国と米国との意見差は大きく、会談に向けた調整は難航しているという。

 一方、韓国国防省は28日、米最新鋭ミサイル防衛システム「最終段階高高度地域防衛(THAAD=サード)」が配備された慶尚北道キョンサンプクト星州ソンジュの在韓米軍基地に、
米兵の居住空間を改善するための装備を搬入した。

 THAAD配備に反対する市民団体が基地入り口にバリケードを築いているため、基地内の米兵はコンテナでの寝泊まりを余儀なくされ、3月中旬に訪韓したオースティン米国防長官が早期改善を求めていた。

 文政権は、
日本に対米外交で後れを取っているとの世論の批判を避けるため、首脳会談の日程を早期に確定させる必要に迫られていた。装備搬入「米韓関係の円滑化を図る」(米韓関係筋)狙いがあったという。
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日韓対立はアメリカの利益

 韓国は「対米外交で
日本に後れを取った」と言う“対日劣位”を回復する為に、「米軍基地に装備を搬入する」と言う“対米譲歩”をしたと言えます。この場合は韓国にとって、対日関係は、対米関係よりも優先する事を示しています。と言っても、良好な対日関係を維持するためには、対米関係悪化も辞せずと言うのではなく、その反対です。

 韓国は対日優位が損なわれたり、
対日劣位に立たされたら、劣位を覆し優位を回復する為には、対米譲歩を辞さないのです。対日優劣関係が何よりも重要なのです。従って、日韓関係が悪化し、韓国が苦境に立たされる場面は、アメリカにとって韓国から対米譲歩を勝ち取るチャンスと言えます。韓国は必ずアメリカの助けを求めます。
 
このように日韓対立の基本構造は、アメリカの対韓外交の上では有力なカードとなって効果を発揮しています。
 但し日本にとっては“要注意”です。アメリカが何か日本に対韓譲歩を求めてくる可能性があります。

 同じような事は、
アメリカの対日外交の上でも言うことが出来ます。
 日本の総理大臣が
靖国神社を参拝でもしようものなら、アメリカが黙っていても韓国が騒ぎ出すので、アメリカは一言「失望した」と言うだけで、日本を黙らせることが出来ました。

 また、韓国が
“慰安婦問題”や、“原発処理水”問題で、最近対日軟化の兆しを見せているのは、アメリカの対韓(強硬)姿勢が大きくものを言っていると思います。
 これは当然のこととは言え、アメリカが
“日本に恩を売っている”一面を否定出来ません。それにより、日本の対中姿勢をアメリカ寄りにするという効果を期待できます。

 要するに
日韓対立の基本構造は、アメリカにとって利益であると言うことです。従って、例え僅かに不利益があったとしても、利益はその何倍にも上るのですから、その利益をフイにするような、日韓改善に本気で取り組むなんて言うことは、絶対ありません。日韓対立は簡単には無くならないと考えるべきです。

 
トランプ前大統領は、大の“親イスラエル大統領”で、在任中はイスラエルと周辺のアラブ諸国との関係改善(国交樹立)に多大な貢献をしました。やる気があればアメリカの影響力から考えて、日韓の改善にはかなりのことが出来ると思いますが、アメリカは日韓対立が消滅するような動きは決して取りません。ものを言う時も注意深く対立の火が消えないように発言していることが見て取れます。

 イスラエルと日本ではなぜアメリカの対応が違うのかと言えば、簡単に言えば
イスラエルはトランプ氏にとってまたアメリカにとって(同盟国以上の)大事な国であるのに対して、日本(同盟国以下の)“保護国”でしかないと言う現実に行き着きます。
 
“竹島問題”“慰安婦問題”日韓対立の主戦場ですが、震源地をたどればいずれもアメリカに行き着きます。
 同様なことは
“尖閣問題”アメリカの施政権下で発生してからの経緯をたどれば、アメリカが震源地と言えます。

 現時点で、
米中対立に直面するアメリカが、日米韓3カ国の結束を望み、その障害となる日韓対立苦慮しているとしても、日本はアメリカの立場を心配する必要は無いし、仮にアメリカが本当に困っているとしても、それは“自業自得、身から出た錆”でしかありません。

 いま、
米中対立の激化という中で、日本の重要性が増したと、肯定的な評価が大勢を占めているように見えますが、そんなに単純に考えて良いものか不安です。

令和3年5月2日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ