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日韓対立の中で、「アメリカの介入」は、日本の対韓譲歩をもたらし、「アメリカの不介入」は韓国の対日譲歩を促す

 5月6日の産経新聞は、「『韓国との問題は日本に任せて』茂木氏、米国の介入防ごうと先手」と言う見出しで、次の様に報じていました。
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「韓国との問題は日本に任せて」茂木氏、米国の介入防ごうと先手
2021.5.6 19:06政治政策 日米首脳会談 産経



 5日に英ロンドンで行われた日米韓外相会談は、ブリンケン米国務長官の意向で実現した。バイデン米政権の新たな北朝鮮政策を進めるには、最前線の同盟国である日韓両国の協力が鍵となるためだ。日本は対北をにらんだ3カ国の安全保障協力には前向きに対応する一方、
慰安婦問題などで冷え込む韓国との関係では原則を譲らない方針で、米国に対しては日韓問題への介入を防ぐための先手も打っている。

 米国の北朝鮮政策の見直しについて、政府は当初、
核・ミサイル開発の進展を許したオバマ政権の「戦略的忍耐」への逆戻りや、米本土に届かない短中距離弾道ミサイルの容認などを警戒した。このため米側に対し、日本の問題意識の「インプット」(茂木敏充外相)を水面下で続けた。

 米国は北朝鮮政策の詳細を公表していないが、
完全非核化あらゆる射程の弾道ミサイルを容認しない考えは堅持しており、茂木氏は「支持」を表明した。

 北朝鮮政策の内容に加え、同盟国の結束を重視する
米国が日韓の仲裁役を買って出ることも懸念材料として浮上した。ブリンケン氏はオバマ政権の国務副長官として日米韓の協議を主導した経験もあるだけに、非核化という大局のため日本に妥協を迫る可能性も否定できなかった。

 ただ、慰安婦問題やいわゆる徴用工問題で
国際法や日韓合意をほごにする韓国に対し、日本が譲れる余地はない。

 茂木氏は機先を制した。就任直後のブリンケン氏との電話会談や3月の対面会談で「安全保障に影響が出ないよう3カ国の連携はしっかりやる。その代わり
韓国との問題は日本に任せてほしい」と繰り返し念を押した。外務省幹部は「米国は日本の立場を理解している。こちらが困ることは言ってこない」と語る。


 茂木氏がこれまで、韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相との電話会談さえ受けなかったのは「韓国が解決策を示さない中で外相同士が原則を言い合っても意味がない」との考えからだ。ただ、5日の日米韓外相会談後には、ブリンケン氏の顔を立てるように鄭氏との個別会談に臨んだ。
約20分間の初顔合わせは、想定通り平行線をたどった。(石鍋圭)
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 記事は米国の「介入」について論じられていますが、一般論で言えば、
「米国の介入=日本の対韓譲歩」とは限らないはずです。
 しかるに日本がアメリカの
介入の意向の有無、その場合のスタンスを聞くまでもなく、介入の拒否を伝え、ブリンケン長官も介入の意向の有無、その場合のスタンスを述べるまでもなく日本の要請を受け入れたことは、「介入」についての茂木外相の認識とブリンケン長官の認識は一致していたものと考えられます。

 つまり、
“アメリカの介入=日本の譲歩”であって、“韓国の対日譲歩”ではないと言うのが、両者の共通認識であったと言うことです。これは韓国の認識とも一致しているのだと思います。

 そして、この認識は
今回に限ったことではなく2015年の日韓合意の時のアメリカの介入も同様であったと思われます。日本はアメリカの介入により、1965年の日韓協定に依り「完全かつ最終的に」解決済みであった日韓間の請求について、お詫びと金銭の支払い余儀なくされました。
 前回アメリカの介入の下で、
協定に反する譲歩を余儀なくされた上に、更に今回再度の介入(譲歩)を受け入れるなどは論外と言うべきです。

 韓国は
アメリカの介入が期待できる限り、日本に譲歩することはありません。だから韓国は何時も日本に対して強気であり、今回もアメリカの介入を期待して来たのです。

 福島原発の処理水の排出問題でも、韓国の鄭義溶外相は、訪韓した米国の
ジョン・ケリー気候問題担当大統領特使に、アメリカの介入(=韓国支援)を求めましたが、ケリー特使がこれを断ったため、韓国は方向転換(対日譲歩)を迫られることになりました。
 アメリカが介入しなければ韓国は譲歩するしかないのです。

 アメリカの介入(日本の譲歩)は、日韓両国に対する
戦後一貫したアメリカの基本姿勢・政策であると言って良いと思います。

 中国をめぐる情勢が変化し、
アメリカの対韓姿勢がターニングポイントを迎えると言う展開も有るかも知れませんが、アメリカは韓国という対日カードは容易に手放そうとはしないでしょう

令和3年5月11日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ