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広島とパールハーバー、アメリカの「姉妹公園」提案は、自分の戦争犯罪を薄めることが目的だ。 −協定期間5年で消滅する姉妹関係などは“姉妹”とは言えない−

 7月1日の読売新聞は、「広島と真珠湾むすぶ「姉妹公園」協定…オバマ氏『共有する過去つなぎ、共通の未来を』」と言う見出しで、次の様に報じていました。
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広島と真珠湾むすぶ「姉妹公園」協定…オバマ氏「共有する過去つなぎ、共通の未来を」
2023/07/01 08:12 読売

 広島市は29日、平和記念公園(広島市中区)と米ハワイ州の真珠湾(パールハーバー)国立記念公園
「姉妹公園」にする協定を、米国と結んだ。松井一実市長が東京都港区の在日米国大使館を訪れ、ラーム・エマニュエル駐日大使と共に協定書に署名した。

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姉妹公園の協定書を手にするエマニュエル駐日大使(左)と松井市長(東京都港区で)

 パールハーバー国立記念公園には、旧日本軍が1941年に米太平洋艦隊を奇襲した真珠湾攻撃の歴史を伝える記念館などがある。
5月の先進7か国首脳会議(G7サミット)開催を機に米側から打診があり、市も核兵器廃絶の機運醸成につながるとして受け入れた。

 協定の期間は
5年間。両公園の資料を活用した企画展の開催や、若い世代向けの平和教育に関する情報共有などで連携する。

 米側の説明によると、2016年にバラク・オバマ氏が現職の米大統領として初めて広島を訪問し、安倍晋三元首相も同年に真珠湾を訪れたことが協定の背景にあるという。オバマ氏は協定に際し「日米が
共有する過去をつなぐことで、共通の未来を構築できる」とのメッセージを寄せた。

 今回の協定に対し、一部の被爆者からは「十分な
説明がなされていない」などと保留を求める意見が出ているが、松井市長は「協定が追い風となり、武力に頼らず平和な国際社会を築く大きな一歩になると確信している」と強調。エマニュエル氏は「過去にとらわれていては友情まで至ることはできない」などと述べた。
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 広島は人口の多い大都市で、
アメリカの原爆投下と言う無差別攻撃により多数の子どもを含む非武装・無抵抗の市民10万人が一瞬に殺された。これは戦争犯罪である。一方日本が攻撃した真珠湾軍事基地で、攻撃により犠牲となったのは2,334名でほとんどが軍人である。日本の攻撃は犯罪には該当しない。

 日本が被爆地広島を記念するのは多数の一般市民の
死を悼み追悼してのことだが、アメリカが真珠湾を記念するのは、この戦争は日本が始めたという宣伝のためである。(アメリカは事前に日本の攻撃を知っていたにもかかわらず、何の準備もしなかった」という説は有力視されている)

 
両国が経験した過去はそれぞれ異なり“共有”してはいない。従ってこれを“共通の未来の構築”に結びつけることは非論理的である。現にアメリカは今後も核兵器による先制攻撃を否定していない。

 「両公園の目的」は共通していない。犠牲者の
軍・民の違いを考えても、並列して“姉妹”と称するのは不適当と言わざるを得ない。アメリカの広島とパールハーバー、「姉妹公園」提案は、自分の戦争犯罪を薄めることが目的だ。

 「
過去とらわれていては友情まで至ることはできない」と言うが、清算すべき過去を放置して“友情”は無い。

 
姉妹関係を結ぶ協定が、最初から期間を5年と定めるのは極めて異例と思われる。聞いたことがない。「姉妹関係」を結ぶというのは、肉親のように切っても切れない(永久または半永久)の関係として結ばれるのが普通で、当初より5年の短期間を定めて締結するのは極めて異例である。5年経ったら赤の他人に戻る“姉妹関係”などはあり得ないし、提案する方がかなり常軌を逸しているとしか言いようが無い。

 協定の期間が5年間と短いのは、
目前のG7サミットをやり過ごすことだけを考えたもので、誠意のないことをあからさまに示している。日本にとってこれにより今後“戦争犯罪”を不問とする事になれば、アメリカにとっては大きな勝利という事になろう。(それを防ぐという意味から考えれば、5年で終了(消滅)は“永久”よりは好ましい)

 この協定を批判しない日本人(日本政府・読売新聞)は安易過ぎる。これを受け入れて調印に至った
広島市長は批判されて当然である。

令和5年7月3日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ