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日米開戦の真相

 終戦五十周年国民委員会編「世界がさばく東京裁判」(ジュピター出版)の中に、アメリカの詩人、ウェン・コーエンの言葉が紹介されているところがあります。

 彼は、大学に入って図書館でたまたまアメリカの歴史学の権威であるチャールズ・ビアード博士の、『ルーズベルトと第二次世界大戦』を見つけて読んだところ、それまで日本が一方的な侵略国と教えられてきたのが嘘であることを知り、目の覚めるような思いをしたそうです。その後、彼は日本人の「A級戦犯」が処刑された処刑場跡を訪れ、「ルーズベルト大統領が勝手に戦争を仕組み、日本に押しつけた事を知り、仰天の思いであった。アメリカが無実の日本の指導者を処刑してしまったことに対し、一アメリカ人として心より日本人に詫びたい。日本に行ったら、是非とも処刑場跡を訪れ、処刑された人々の霊に詫びたいと思っていたが、今日それが実現できて、大任を果たした思いである」と語ったそうです。

 さらに、「世界がさばく東京裁判」によると、「アメリカにおける東京裁判批判の決定打となったのは、歴史学の権威であったチャールズ・ビアード博士が1948年アメリカの公式資料に基づいて『ルーズベルト大統領と第二次世界大戦』なる著書を発表したことであった。博士はその著の中で戦争責任を問われるべきは日本ではなく、ルーズベルト大統領だと訴えたのである」、「アメリカの要人たちもビアード博士が学界の権威であるだけに弁解の余地もなく、『もしそうなら、戦犯も追放もあったものではない。アメリカから謝罪使を送らねばなるまい』と言う者や、『いまさら謝罪もできないから、この上は一日も早く日本を復興させて以前に戻してやらねばならぬ』と言う者もあったという」と書いてありました。

 私はこの、「ルーズベルト大統領と第二次世界大戦」を読みたいと思い、終戦五十周年国民委員会に問い合わせたところ、編集委員の方から、「・・・残念ながら日本語訳はありません。この本は、アメリカでも当時かなりの話題を呼び、内容が内容だけに、少なからず軍から反発を受けたと聞いています。そのためかどうか分かりませんが、邦訳については遺族の方が許さないのです」という回答をいただきました(ただし、英文の原著は日本の大きな図書館にはあるそうです)。

 私はこれを聞いて驚きました。著作物とは人に読まれることを目的に書かれるものであり、著作者の遺族が、「発禁」にするというのはあまり聞いたことがありません。遺族に著作者の意に反する事をする権利があるのでしょうか。かつてのソ連、現在の中国、北朝鮮の例を見ても分かるように、「発禁」とは自分たちの嘘がばれることを恐れる人達がすることです。遺族が日本語訳だけを「発禁」にする正当な理由があるのでしょうか。日本人には真相を知らしめないと、いう以外に理由は考えられません。

 アメリカは過去の外交文書を逐次公開しています。以前新聞で、「第二次大戦当時のドイツに関する文書はすべて公開されたが、日本に関するものは依然公開されていないものがある」と言う記事を読んだ覚えがあります。60年前の文書はもはや歴史上の資料で、外交機密ではないと思います。アメリカが公言してきた歴史に偽りがなければ、公開できない理由はないはずです。それを未だに公開できないでいるのは何故でしょうか。それは、アメリカが公言してきた歴史に偽りがあるからだと思います。

 今年7月15日の産経新聞の一面トップに、「宣戦布告なし日本爆撃 米も計画していた」、という記事があり、真珠湾奇襲以前にアメリカが日本爆撃を計画していたことが報じられていましたが、このニュースのもととなった米国立公文書館の文献は、1958年から1971年にかけて段階的に公開されたものだそうです。今から、30〜40年も前のものです。それが今頃記事になるのはあまりに遅過ぎます。日本人が隠された真相を知ろうと努力しないのは、大変情けないことだと思います。

平成11年9月15日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ