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アメリカ人の対日戦争犯罪訴訟に反論するなら、韓国人の訴訟にも反論すべき

 アメリカ駐在の柳井俊二大使が、アメリカ人元捕虜達による日本に対する戦争犯罪訴訟に対して強い不快感を表明しました。

 11月10日の産経新聞夕刊に「柳井駐米大使 対日戦争犯罪訴訟に反論」、「強い不快感 『請求権放棄で決着』」と言う見出しで、「柳井俊二駐米大使は9日、米国での日本の戦争犯罪をめぐる訴訟がひん発している最近の動きについて、『ナチス・ドイツと違う』などと強い不快感を表明すると共に、『請求権の問題はサンフランシスコ平和条約で決着している』と述べ、根拠のない訴訟−との見方を強調した」、「日本人の戦争犯罪追及は、カリフォルニア州で活発に行われ、・・・元捕虜が強制労働させたとして新日鉄、三菱重工などを相手取って訴訟を起こしている・・・」などと報道されました。

 柳井大使の言うとおり、この問題は対日講和条約の 

 第14条B (賠償及び在外財産の処理) 「この条約に別段の定めがある場合を除き、連合国は、連合国のすべての賠償請求権、戦争の遂行中に日本国及びその国民がとった行動から生じた連合国及びその国民の他の請求権並びに占領の直接軍事費に関する連合国の請求権を放棄する」 

 第16条 (捕虜に対する賠償と非連合国にある日本資産) 「・・・日本国及びその国民の資産・・・赤十字国際委員会に引き渡すものとし、同委員会は・・・捕虜であったもの及びその家族のために、適当な国内機関に対して分配しなければならない。・・・」 

の条項により、明確に決着がついていて、元捕虜達にはもはや何の請求権もないことは明白です。日本政府が曖昧な態度をとらずにはっきりと指摘するのはよいことです。

 しかし、これと同じようなことは実は韓国人についても言えるのです。多くの在日韓国人の元軍人、軍属などがわが国政府に補償や年金、恩給の支払いを求めて、訴訟を起こしていますが、これらの請求権については、1965年に日韓両国によって結ばれた、「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」によって完全に決着がついてます。

 同協定第2条で、「両締約国は両締約国及びその国民(法人を含む)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、1951年9月8日にサンフランシスコ市で署名された日本国との平和条約第4条(a)に規定されるものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」とされているのです。

 さらに、両国によって合意された議事録には、「協定第2条に関し同条1に言う完全かつ最終的に解決されたこととなる両国及びその国民の財産、権利及び利益並びに両国及びその国民の間の請求権に関する問題には、日韓会談において韓国側から提出された『韓国の対日請求権要綱』(いわゆる8項目で、その中に戦争による被徴用の被害に対する補償、韓国人の対日本政府請求恩給関係その他が含まれることが明記されている)の範囲に属する全ての請求が含まれており、従って同対日請求要綱に関してはいかなる主張もなしえないこととなることが確認された」と明記されているのです。同協定により韓国人にはいかなる請求権もないことは明白なのです。

 それにも関わらず日本政府は、これら韓国人の請求に対して明確な態度を表明してきませんでした。駐韓日本大使がこれらの訴訟に不快感を表明したことはありませんでした。日本の裁判所は彼らの請求を棄却はするものの、いつも、判決理由の中で補償の必要性を強調していました。今では自民党の一部にさえ彼らへの補償を提案する者がいます。これは全く矛盾しています。このような韓国人の理不尽な請求に対して、毅然とした態度をとらないことは、将来アメリカ人元捕虜達に格好の口実を与えることになりかねません。

平成11年11月21日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ