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国家と宗教

 森首相が神道政治連盟国会議員懇談会の会合で、「日本は天皇を中心とした神の国」などと発言したことに対して、朝日新聞は5月18日の社説で「・・・日本を『天皇を中心とする神の国』とみなす発言は、どう弁明しても、憲法の国民主権の原理と相入れない。・・・精神的自由をはじめとする基本的人権の尊重原理に抵触する。象徴天皇制や政教分離の原則にも反する」と批判しました。

 森首相の発言はそのような問題視すべき発言でしょうか。2年前の平成10年6月28日、アメリカのクリントン大統領は、9日間にわたる中国公式訪問中、北京市内の崇文門教会で行われた日曜礼拝に出席し、スピーチで「神は一人の人間から全ての民族を作り出した」との聖書の一節を引用し、「米中両国民は神の子供であり、兄弟姉妹だ」と強調しました。このアメリカ大統領の宗教的発言に対して、中国政府もアメリカのマスコミも誰も批判はしませんでした。

 森首相が主権在民を否定して、天皇親政を実現しようと考えているとは到底考えられません。朝日新聞の批判は明らかに過剰反応と言うよりも、ためにする批判であると思います。クリントン大統領の教会での発言が許されるのであれば、神道政治連盟国会議員懇談会という志を同じくする有志の会合で、この程度の発言をすることは何の問題もないと思います。

 四年に一度行われるアメリカの大統領就任式は、大統領がキリスト教の聖書に左手を当て、誠実に大統領としての職務を遂行することを神に誓うという、宗教的な形式で行われています。イギリスでも女王が首相の助言で教会首脳を任命したり、カンタベリー大主教ら宗教貴族が自動的に英上院に議席を与えられ、国政関与の特権を持つなど、国家と宗教は深く関わっています。これを「政教分離の原則に反する」といって批判するのを聞いたことがありません。キリスト教国家における国家と宗教の濃密な関係を是認し、神道のみを目の敵にするのは理不尽であると思います。

平成12年5月18日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ