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アフガン女性の笑顔

 11月15日の産経新聞他各紙には、「解放」され、素顔を見せたカブールの女性達の笑顔の写真が大きく報道されていました。今回のアメリカ軍のアフガニスタン攻撃は、アメリカの同時多発テロに対する自衛行動、制裁行動であると説明されてきました。そうであれば、アフガニスタンの女性達が「ブルカ」をつけようが、「ヘジャブ」をつけようが、そのようなことはこの戦争の本質と何の関わりもないことです。アメリカも、この戦争はイスラムに対する戦争でもなければ、アフガニスタン国民に対するものでもないと、繰り返し強調してきました。それなのになぜ日本の新聞は、女性の笑顔を強調するのでしょうか。

 顔を隠すブルカをつけるのが女性の抑圧になるのなら、髪を隠すヘジャブは抑圧にはならないのでしょうか。そういう議論をするのはイスラム教徒に対する干渉になると思います。

 今までアメリカの軍事行動に批判的だった人達も、勝敗が決しつつあるのを見て、「女性の解放」という観点に話しをすり替え、一気に立場を転換したように見受けられます。女性の写真だけでなく、ひげを剃っている人や、ブロマイドを見る若者などの写真で、解放ムードを煽っています。

 このような報道を見ていると、私は戦後の日本について考えざるを得ません。日本の戦後をテレビ番組などで特集すると、必ず出てくるのが「リンゴの歌」です。アナウンサーは決まって、「重苦しい戦争が終わって、国民は明るさを取り戻した」というようなことを言います。しかし、それは偽りだと思います。敗戦による虚脱感、喪失感の方が大きかったはずです。

 敗戦によって明るさを得たというのは、一面の事実かもしれませんが、それによって失ったものもまた大きいと言わなければなりません。伝統的な価値観、倫理観を喪失したことが、現代の精神的荒廃につながっていると思います。

平成13年11月15日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ