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アメリカとキリスト教

 6月27日の産経新聞は、「『星条旗への誓い』は違憲」と言う見出しで、次のように報じていました。

 
「米国の公立学校などで行われている『星条旗への忠誠の誓い』について、サンフランシスコの連邦高裁は26日、『誓いの中の“神のもとに”という表現は宗教的に中立でない』として違憲とする初の判断を示した」
 「同高裁はリベラルな判決が多いことで知られているが、『独立宣言や通貨にも“神”という表現があり、米国の精神的支柱を揺るがしかねない』といった批判が噴出。上院は同日、満場一致で判決の非難決議を採択し、ホワイトハウスのフライシャー報道官はサミット開催先のカナダで『ブッシュ大統領は“間違った判断だ”と考えている』と述べた」


 そして、6月28日の朝日新聞は
「違憲判決1日で効力停止」という見出しで、次のように報じていました。

 
「星条旗に対する誓いの言葉について違憲判決を下した米サンフランシスコ連邦控訴裁のグッドウィン裁判長は判決翌日の27日、判決の効力を当面、停止するとの決定を下した。・・・同裁判長がなぜ新たな決定を下したのかは明らかではない。違憲判決のニュースはすぐに全米を駆けめぐり、米政府や連邦議会がその日のうちに抗議声明や決議を出すなど激しい反発が起きていた」

 今回の事態は司法の判断が、立法府と行政府の反発により一日で覆されたことになりますが、司法の独立という観点からの議論は今のところ起きていないようです。
 これがもし日本だったらどういう騒ぎになるでしょうか。小泉首相が玉串料の公費支出を違憲とした裁判所の判断は誤りであると発言したら、大変な騒ぎになると思います。今の日本では、首相や閣僚が判決を批判することはタブーになっています。国が当事者になっている裁判に対してさえ、閣僚は批判を控えるのが当たり前になっています。

 戦後、現行憲法によりわが国では厳格な司法の独立と政教分離が行われ、神道が公の世界から厳しく排除されるようになりました。森前首相が「神の国発言」で政権を追われたのはその典型と言えます。
 アメリカでは、「神」の排除で「アメリカの精神的支柱を揺るがしかねない」といった批判が出たとのことですが、わが国では、神道の排除が皇室行事の制限や靖国神社参拝の否定等へとつながり、精神的支柱が大打撃を受けました。

 その憲法を日本国民に強いたアメリカで、政治により司法の判断が覆され、キリスト教が精神的支柱として、公の世界で特別の地位を占め続けていることに大きな矛盾を感じます。アメリカが日本国民に現行憲法を強いて神道を排除したのは、日本国民の精神的支柱に打撃を加えることが目的であったのだと思います。


平成14年7月20日     ご意見・ご感想は こちらへ     トップへ戻る     目次へ