F48
イラクは日本を映す鏡

 5月17日の産経新聞は、「米国務長官 主権移譲後も米軍駐留 イラク軍指揮権『連合軍が維持』」と言う見出しで、次のように報じていました。
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 「パウエル米国務長官は十六日、訪問先のヨルダンから米テレビ各局に出演、イラクへの主権移譲が実現した後も、米軍を中心とした連合軍の駐留継続が必要との考えを示した。パウエル長官はその際、イラク軍は連合軍司令官の指揮下に入るべきだとの見解を示した。
 パウエル長官は『われわれは七月一日に発足するイラク暫定政府が米軍に対し、引き続きイラクにとどまって支援してほしいと要請するだろうと考えている』と予測。イラク国内で米軍の撤退を望む声が強いことについては『イラクは再建に当たって財政の支援が必要であり、かれらには米国と連合軍による安全保障の確保が必要だ』と述べ、イラク暫定政府も米軍の駐留継続を望んでいるとの認識を強調した。・・・
 パウエル長官は以前から軍の指揮権を引き続き米軍が維持することを強調、移譲後もイラクの主権は制限されるとの見解を明らかにしている」
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 アメリカは「イラクの主権は制限される」と言っていますが、制限付きの主権などと言うものは、主権と呼ぶに値しないと思います。アメリカの駐留継続を望むか望まないかは、主権委譲後のイラク政府が判断すべきことで、アメリカが決めることではありません。アメリカは度々「6月のイラクへの主権の委譲」と言ってきましたが、アメリカが言っている「主権」とは名ばかりのもので、実質はアメリカの占領が続くことは明らかだと思います。

 このイラクの「主権」問題を見ていると、わが国の敗戦・占領後の「独立」がだぶって見えてきます。わが国の独立は本当の独立だったのでしょうか。
 昭和27年、わが国はサンフランシスコ講和条約により独立を回復しましたが、同時に締結された旧日米安保条約により、引き続きアメリカ軍が駐留することになりました。それまでの「占領軍」が一夜にして、日本を守る「同盟国軍」に変身したことになりますが、そんなことがあり得るでしょうか。当時の日本にアメリカ軍駐留のない独立を選択する余地はなかったと思います。今のイラクと同じだったと思います。

 パウエル長官は「イラク暫定政府が米軍に対し、引き続きイラクにとどまって支援してほしいと要請するだろう」と言っていますが、旧日米安保条約も前文で「・・・日本国は武装を解除されているので、・・・ よつて、日本国は、・・・アメリカ合衆国との安全保障条約を希望する。・・・日本国は、・・・日本国内及びその附近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを希望する。アメリカ合衆国は、平和と安全のために、現在若干の自国軍隊を日本国内及びその附近に維持する意思がある」と謳って、日本国民が駐留という名の占領状態の継続を希望していることとされました。この点も今のイラクと全く同じです。

 今、日本国民はアメリカとイラクの問題を客観的に見ることができます。アメリカの言う「主権委譲」がいかに欺瞞に満ちたものであるかを目の当たりにすることができます。そして、今のイラクが置かれている状況は、そっくり50年余り前のわが国の姿だと思います。日本国民が戦後を見直すよい機会だと思います。

平成16年5月18日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る   目次へ