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クリントン大統領の宗教的発言

 アメリカのクリントン大統領が6月28日、9日間にわたる中国公式訪問中、北京市内の崇文門教会で行われた日曜礼拝に出席し、スピーチで「神は一人の人間から全ての民族を作り出した」との聖書の一節を引用し、「米中両国民は神の子供であり、兄弟姉妹だ」と強調しました。
 中国はキリスト教国ではありません。キリスト教徒が国民の多数を占める国でもありません。キリスト教徒は極端に少ない少数派にすぎません。このような国で、その少数派の宗教行事に参加しスピーチをすることは、多数の中国人に対する非友好的な行為であると言えます。「米中両国民は神の子ども」などというのはキリスト教徒でない多くの中国人に対する侮辱であると思います。中国政府はなぜ不快感を表明しないのでしょうか。

 公人である大統領が政教分離に反し、訪問先の外国でこのようにキリスト教徒として宗教的発言をすることが、なぜ容認されるのでしょうか。大統領の行為は公人としてではなく、一私人としてのものだというのは詭弁です。大統領がその日一日休暇を取って、「おしのび」で教会を訪れたというのではないのです。アメリカは今年2月にも大統領の意向を受けたアメリカの宗教指導者を中国に派遣し、拘束中の宗教指導者の釈放を求めています。
 我々は米国の大統領が、連邦議事堂前で行われる就任式でキリスト教の聖書に左手を当て、大統領として誠実に任務を遂行することを神に誓っていると言う事実に注目すべきです。アメリカではキリスト教が表面に見える以上に政治に密接な関わりを持っていると言えます。

 一方、我が国の最高裁は昨年四月の「愛媛県玉串料訴訟」の判決で愛媛県が戦没者の慰霊のために、靖国神社と護国神社にわずか五千円、一万円の玉串料、供物料を支出した行為を、政教分離を定めた憲法に違反すると断定いたしました。そして、新聞記者は毎年戦没者慰霊のため靖国神社を参拝する閣僚をつかまえては、「公人か私人か」と態度の明確化を迫っています。その憲法を日本人に押しつけた、当のアメリカの大統領が公然とこのような宗教的発言をしていることを我々はどう考えるべきなのでしょうか。占領軍の目的は神道の排除、弱体化、ひいては日本国の、日本人の弱体化であったとしか考えられません。

平成10年7月11日     ご意見・ご感想は   こちらへ      トップへ戻る      F目次へ