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「A級戦犯」は過去の遺物

 朝日新聞は4月20日付けの社説で、「日中首脳会談 大きな利益を目指せ」と題して次のように論じていました。
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 小泉首相は、歴史認識でもっと意を尽くした説明をする必要がある。日本政府が踏襲している95年の村山首相談話はこのように述べている。
 「わが国は国策を誤り、植民地支配と侵略によって、とりわけアジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えました。痛切な反省の意を表し、心からのお詫(わ)びの気持ちを表明します」
 この言葉と、中国侵略の責めを負うべきA級戦犯が合祀(ごうし)された靖国神社を首相が参拝することは、どうしても相いれない。これをそのままにして根本的に関係を改善できるとは思えない。
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 朝日新聞は「A級戦犯合祀」を問題にしていますが、なぜ問題にするのでしょうか。靖国神社には「A級戦犯」以外の多数の英霊が祀られていますが、7人の「A級戦犯」のために、多数の英霊に非礼を働いてもいいのでしょうか。

 「B・C級戦犯」は合祀してあってもいいのでしょうか。中国大陸で多くの中国人を「殺した」一般兵士はいいのでしょうか。もし、中国が「B・C級戦犯」もけしからんと言ってきたら、朝日新聞は何というのでしょうか。中国人の感情を尊重すべきだと主張するのでしょうか。「A級戦犯」と他の英霊との本質的な違いはないと思います。
 元々、朝日新聞らは、政教分離を根拠に、「反靖国、反神道」の主張をしていたのであって、「A級戦犯」云々は中国政府の干渉を招来するために新たに付け加えた口実に過ぎません。

 言い尽くされたことですが、戦争を始めることは犯罪ではありません。近年、アメリカはイラクに戦争を仕掛け、その考え方が今でも有効であることを自ら示しました。アメリカは自衛目的でなく、大量破壊兵器を破棄させるためにイラクに戦争を仕掛け、イラクを征服しました。大量破壊兵器がないことが分かった今に至っても、誰も戦争犯罪には問われていません。そのアメリカも、クウェートを併合せんとして戦争を始めたフセイン大統領を戦争犯罪に問うていません。要するに、今も昔も戦争を始めることは犯罪ではないのです。

 日本人を犯罪者とするために、様々な残虐行為が指摘されましたが、戦争に残虐行為はつきものです。敗戦後、満州でソ連兵は日本の軍人、民間人に対して暴虐の限りを尽くしましたが、実行した兵士も、それを黙認(あるいは奨励)した将軍も、国家の指導者も誰も罪を問われていません。朝日新聞も彼らを戦争犯罪者として処罰すべきだと主張したことはありません。
 戦場での残虐行為などは、せいぜいその国の軍事法廷で裁かれるべきレベルの問題で、戦争犯罪とは何の関係もありません。まして、実行した兵士ではなく、トップの軍人や国家の指導者の罪を問うなどとは論外のことと言っていいと思います。

 日本の社会は戦後、「A級戦犯」容疑者の岸信介を内閣総理大臣にし、「A級戦犯」の賀屋興宣を法務大臣に、重光葵を外務大臣にしました。しかし、アメリカはじめ外国は何の非難もしませんでした。日本の社会もアメリカも彼らを「犯罪者」とすることは止めたのです。冷静になって考えれば彼らに罪となるべきことは何もなかったのです。「A級戦犯」などと言う死語になりかけていた言葉を、亡霊のごとく甦らせてはなりません。

 我々は戦争に敗れた敗者であることは認めざるを得ませんが、犯罪者であることは決して認めてはいけないと思います。敗者は犯罪者ではないのです。敗者を犯罪者として処刑するのは野蛮な風習です。

平成17年4月24日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ