F52
外交の目的

 11月1日の朝日新聞は、「内閣改造 アジア外交が心配だ」と言う見出しの社説で、次のように論じていました。
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 小泉改革を継続し、残り1年の任期で総仕上げを目指す。今度の内閣改造で首相の決意はよく伝わってきた。だが、不安になるのは外交の布陣である。これでアジア外交は立て直せるのか、大きな懸念を抱かざるを得ない。 ・・・

 私たちが驚いたのは外交だ。首相の靖国神社参拝で中国や韓国との関係はこじれ、アジア外交は浮遊しつづけている。その正面に立つ外相にポスト小泉候補の一人、麻生前総務相を横滑りさせた。 ・・・

 国内では改革継続の旗を振り、アジア外交の停滞には目をつぶり続ける。この小泉路線があと1年続く。その痛手の深さが心配である。
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 「アジア外交」のために靖国参拝を中止すべきだという、朝日新聞のこのような論法が正しいとすれば、アメリカ政府が「日本人が広島を聖地にして参拝するのは、日米友好に相容れない」と抗議してきたら、「対米外交」の停滞を慮って原爆犠牲者の追悼行事は中止すべきだと言うことになります。
 ロシア政府が、北方領土返還運動は日露友好に反すると抗議してきたら、「対露外交」の停滞を慮って北方領土返還運動も中止すべきと言うことになります。

 外交の主要な目的の一つは外国の干渉を排除し、自国の独立を守ることです。外国との友好関係は自国の独立を損なわないことが前提になります。自国の利益を放棄した「外交」は外交の名に値しません。外国の干渉を受け入れることによって成り立つ「友好」とは、友好と呼ぶに値しないものだと思います。相手が抗議するから主張を取り下げよと言うのは、自己主張をするなと言うに等しい愚論だと思います。

平成17年11月7日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ