F53
天皇陛下の歴史認識

 天皇陛下は、12月23日の天皇誕生日に当たり、記者会見で次のように話されました。(12月23日読売新聞)
-------------------------------------------------------------------------------------------------------
 ――戦後60年にあたってサイパンへ慰霊訪問されたお気持ちや、今後の慰霊の在り方、次世代への継承などについてお考えをお聞かせ下さい。

 質問に従って十分にお答えができるよう紙にまとめましたので、それに従ってお話ししたいと思います。

 先の大戦では非常に多くの日本人が亡くなりました。全体の戦没者310万人の中で、外地で亡くなった人は240万人に達しています。戦後60年にあたって私どもはこのように大勢の人が亡くなった外地での慰霊を考え、多くの人々の協力を得て、米国の自治領である北マリアナ諸島のサイパン島を訪問しました。・・・(中略)

 日本は昭和の初めから昭和20年の終戦まで、ほとんど平和な時がありませんでした。この過去の歴史をその後の時代とともに正しく理解しようと努めることは、日本人自身にとって、また、日本人が世界の人々と交わっていく上にも極めて大切なことと思います。
 戦後60年にあたって過去の様々な事実が取り上げられ、人々に知られるようになりました。今後とも多くの人々の努力により、過去の事実についての知識が正しく継承され、将来にいかされることを願っています。・・・(以下略)
-------------------------------------------------------------------------------------------------------

 天皇陛下は、「日本は昭和の初めから昭和20年の終戦まで、ほとんど平和な時がありませんでした」と話されていますが、当時、平和な時がなかったのは、日本に限ったことではなかったと思います。そういう時代に日本だけが平和を維持しようとしても、それは不可能であったと思います。陛下のおっしゃることは世界史的視野を欠いた歴史認識で、とても「歴史の正しい理解」とは思えません。

 陛下は、「歴史を正しく理解しよう」、「過去を正しく継承しよう」とおっしゃっていますが、何が正しくて何が正しくないかについては直接触れておられません。表面的には政治的な発言ではないと言えますが、小泉首相の靖国神社参拝に反対する反日日本人、中国人、韓国人等が、「日本人は正しい歴史認識を持つべきだ」、「過去を反省すべきだ」と執拗に主張しているこの時期に、「正しい歴史認識が必要だ」とか、「過去の事実についての知識を正しく継承すべきだ」と訴えることは、暗に現在「歴史が正しく理解されていない」、「過去の事実が正しく継承されていない」と言っているのと同じです。これは、反日日本人、中国人、韓国人等の発想と軌を一にするものであり、とても容認できません。

天皇陛下はこの記者会見で
1.北陸地方を中心に各地を襲った豪雪
2.戦後60年にあたってサイパンへ慰霊訪問
3.清子さまのご結婚
4.「女性・女系天皇」容認
の4点について語っておられますが、あらかじめ用意した文書でお答えになっているのは、この戦争に関する部分だけです。この戦争に関する部分についてのお言葉は、宮内庁の意向によるもので陛下のお考えではないかもしれません。

 また、4の「女性・女系天皇」については、回答を控えておられますが、「女性・女系天皇」について回答を控えられるのであれば、きわめて政治色の強い、2.の「戦後60年にあたってサイパンへ慰霊訪問」についての質問に対して、なぜ、回答を控えられなかったのか疑問に思います。

 宮内庁の記者会は、天皇陛下の記者会見の度に、手を替え品を替えて天皇陛下に対して戦争についての質問を浴びせ続けています。本来政治的な発言をする立場にない天皇陛下に対して、「平和」にかこつけて「過去の戦争」について語らせることは、天皇陛下の政治利用に他ならないと思います。また、それを許している宮内庁はその職責を果たしていないと思います。

平成17年12月26日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ