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アメリカ人は本当に「慰安婦」を「誤解」しているのか(アメリカ人の「悪意(敵意)」を直視すべき)

 6月28日の読売新聞と、同日の産経新聞は、アメリカ下院外交委員会で、「慰安婦決議」が採択されたことを受けて、社説で次のように論じていました。
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慰安婦決議 米議会の「誤解」の根元を絶て(読売)
 いわゆる従軍慰安婦をめぐる対日決議案が米下院外交委員会で採択された。全くの事実誤認に基づく決議である。
 日本政府は、将来に禍根を残さないよう、米側の誤解をときほぐし、当面、本会議での採択阻止に努めなければならない。
 決議案は日本政府に対し、「日本の軍隊が若い女性を強制的に性的奴隷化」したことへの歴史的責任を認め、謝罪せよと言う。「慰安婦制度は20世紀最大の人身売買事案の一つ」と表現している。
 事実をきちんと確かめることもせず、低水準のレトリックに終始した決議案だ。米議会人の見識を疑わせる。・・・

慰安婦決議案 事実を示し誤解を解こう (産経)
 米下院外交委員会で、慰安婦問題で日本の首相に公式謝罪を求める対日非難決議案が賛成多数で可決された。残念な結果である。
 可決された決議案は「日米同盟がアジア太平洋地域に占める重要性」を盛り込むなどの修正が加えられ、民主党のマイク・ホンダ議員が提出した当初の決議案より表現がやや緩やかになっている。しかし、「慰安婦制度は日本政府による軍用の強制的な売春」と決めつけるなど、多くの誤りを含んでいる。・・・
 米下院外交委員会では、慰安婦問題をナチス・ドイツが行ったホロコースト(ユダヤ人大虐殺)と同列に論じる非難の声も上がったといわれる。南京事件などをめぐり、これまでも米国の州議会などでしばしば繰り返されてきた誤解である。・・・
 日米同盟を一層揺るぎないものにするためにも、歴史問題で正しい事実を示し、誤解を解く粘り強い外交努力が必要である。
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 両紙の社説は、いずれもアメリカ人の「誤解」としていますが、彼らは本当に誤解しているのでしょうか。「慰安婦問題」に関して今まで日本人は、アメリカ人の誤解に対して様々な反論をしてきました。最近では日本の国会議員を初めとする人達が意見広告も出しました(下記参照)。しかし、下記の記事にもあるように、日本人が反論すればするほど、「誤解」はより強固になって行きました。
 日本人の具体的な指摘に対して耳を貸さず、何の反論もなく、問答無用の非難が繰り返されました。アメリカ人は本当に誤解をしているのでしょうか。中国系の反日団体の影響を指摘する向きもありますが、それだけでアメリカの議会、マスコミがこれほど過激になることは考えられません。

 わが国の主張に耳を貸さず、反論もせず、問答無用の態度をとり続けるのは、単なる誤解とは考えられず、悪意に基づくものだと考える他はありません。敢えて誤解というのであれば、それは「意図的な誤解」と言うべきです。アメリカ人は、かつて東京裁判で「南京大虐殺」を捏造し、日本人を無実の罪に陥れた張本人であることを忘れてはなりません。

 アメリカ人の悪意(敵意)を直視するのは恐ろしいことです。第二次世界大戦の記憶が甦ります。しかし、アメリカ人の悪意が現実のものであるならば、現実は直視しなければなりません。

平成19年7月1日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ
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慰安婦問題 米紙の対日批判激化 「同盟国の信頼失った」
[ 2007年03月10日 産経新聞 東京朝刊 総合・内政面 ]
 【ワシントン=山本秀也】いわゆる慰安婦問題で、狭義の強制性を裏付ける証拠はないとした安倍晋三首相の発言に対し、8日付のボストン・グローブ紙社説は首相発言が「近隣アジア諸国にとどまらず、同盟国たる米国の信頼も失った」と決め付け、ロサンゼルス・タイムズ紙の社説(7日付)が天皇陛下の謝罪を公然と要求するなど、リベラル系メディアを中心とした対日非難はエスカレートしている。

 これら米紙の「客観的事実に基づかない報道」(加藤良三駐米大使)に対して、日本政府は管轄の在米公館を通じて反論を投稿する構えだ。しかし、対日非難に加わる米地方紙の増加や、ニューヨーク・タイムズ紙のように非難を繰り返すメディアの登場で日本側の主張はかき消されている

 ボストン・グローブ紙の社説は、安倍首相の発言が「日本のプライド回復で内政的には有利だろうが、対外的には悪いタイミングで日本を孤立に追い込む」と拉致問題の全貌開示を拒む北朝鮮と慰安婦問題をめぐる日本の姿勢を並べて描いた。

 今月6日に慰安婦問題で日本非難の社説を掲載したニューヨーク・タイムズ紙は8日、1面の準トップ扱いで、シドニーで行われた元慰安婦らの抗議活動を報道。安倍首相について「戦時中の日本の過去を抑え込むことでキャリアを築いた民族主義者だ」と主張した。

 ロサンゼルス・タイムズ紙の社説は「日本と近隣の国民とを最も和解させ得る人物は、昭和天皇の子息である明仁天皇」として「家族(昭和天皇)の名において行われたすべての犯罪への謝罪」を求めた。

 慰安婦問題をめぐる下院決議案に関係する有力議員の多いカリフォルニア州では決議案を提案したマイク・ホンダ議員の地元紙サンノゼ・マーキュリー(6日付)も、首相発言について「ホロコースト(ユダヤ人虐殺)を否定するようだ」とのコメントを掲載。7日の社説では「下院は歴史の教訓を創出すべきだ」と決議案の採択を強く主張した。


慰安婦決議案 共同提案議員146人に 女性・人権…史実誤認も
2007年06月27日 産経新聞 東京朝刊 総合・内政面

 【ワシントン=山本秀也】慰安婦問題に関する対日非難決議案が、下院外交委員会(旧称・下院国際関係委員会)で採決されるのは、昨年9月以来だ。提案者のマイク・ホンダ議員(民主党)や在米韓国系団体などの推進派は、「女性」「人権」という政治的な“錦の御旗”を掲げ、日本側の謝罪や史実をめぐる議論を押し切る構えだ。

 決議案の共同提案者は、昨年の決議案が最終的に58人だったのに対し、今回は26日現在で146人と、下院定数(435)の3分のを超えた。

 米国内外に向け下院の見解を表明するこうした決議案は、昨年465議案が提案され、うち213議案が本会議で採択されている。法的な拘束力を伴わない半面、表現やや内容が精密さを欠くケースも多く、今回も慰安婦を「性的奴隷」と単純に規定するなど、多くの誤りを含んでいる。

 決議案の内容や表現の妥当性を問う議論は、これまでほとんどなされなかった。代わって、「日本はすでに謝ったので決議案は不要」という議論のほか、日米関係への悪影響を懸念するダニエル・イノウエ上院議員らの声が下院要人に伝えられていた。4月に訪米した安倍晋三首相が慰安婦問題で謝罪したことで、議会では沈静化の兆しも出ていた。

 決議案の推進派が巻き返しを進めるなか、慰安婦問題で史実を挙げて反論を図る日本の有識者、議員らの意見広告が、今月14日付の米紙ワシントン・ポストに掲載された。反論は米国内で波紋を広げ、6月になって共同提案に加わった16人のうち、決議案処理に強い影響力をもつラントス委員長ら10人は、意見広告の掲載後に共同提案者となっていた

 関係者によると、決議案を推進する議員や韓国系団体では、下院本会議での採択が実現すれば、過去に法案化を阻まれた太平洋戦争中の米軍捕虜の強制労働賠償問題や靖国問題など、歴史に絡む他の対日問題にも網を広げる構想を練っているという。
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