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オバマ大統領の広島訪問 広島・長崎の無差別大量殺戮に、抗議の意思表示さえしなくなった日本人


 5月10日のNHKニュースは、オバマ大統領の広島訪問について次のように報じていました。
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ホワイトハウスもオバマ大統領広島訪問を発表
NHK 5月10日 22時02分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160510/k10010515711000.html?utm_int=nsearch_contents_search-items_015

ホワイトハウスもオバマ大統領広島訪問を発表

 アメリカのホワイトハウスは、オバマ大統領が伊勢志摩サミットに出席したあと、今月27日に現職のアメリカ大統領として初めて被爆地、広島を訪問すると発表しました。

(中略)

 アメリカ国内には日本への原爆投下を戦争を早期に終結させ多くのアメリカ兵の命を救ったとして正当化する意見も根強くありますが、有力紙のニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストが相次いでオバマ大統領に広島訪問を促す社説を掲載するなど、訪問については支持する意見が徐々に増えていました。

(中略)

 一方で、オバマ政権は2010年に当時のルース駐日大使を8月6日に行われた広島の平和記念式典に現職の駐日大使として初めて派遣しました。その後も、ケネディ駐日大使やアメリカ政府で核軍縮を担当するゴッテモラー国務次官が式典に参列しました。
そして先月、広島で開かれたG7=主要7か国の外相会合にあわせてケリー国務長官がアメリカの現職の閣僚として初めて平和公園を訪れ、原爆資料館や原爆ドームを訪問し被爆地で原爆の犠牲者を追悼しました。
 アメリカ国内では日本への原爆投下を戦争終結を早め、多くのアメリカ兵の命を救ったなどとして
正当化する意見も根強くありますが、ケリー長官の広島訪問に対する反発は少なく、訪問が原爆投下のぜひを巡る議論に大きく発展することもありませんでした。このためオバマ大統領は環境が整ったとしてみずからの広島訪問を決断したものとみられます。
 オバマ大統領としては任期最後となる日本訪問で「核兵器のない世界」という理想の実現に向けて再び機運を高め、政治的な遺産=レガシーとしたい考えです。

米国内の世論に変化
 アメリカの有力紙「ニューヨーク・タイムズ」と「ワシントン・ポスト」は、ケリー国務長官の広島訪問を受けて、核兵器のない世界の実現に向けオバマ大統領に被爆地、広島を訪問するよう促す社説を相次いで掲載しました。
 日本への原爆投下を承認したアメリカのトルーマン大統領の孫のクリフトン・トルーマン・ダニエルさんも、NHKのインタビューに対し、「オバマ大統領は犠牲者を追悼するために広島を訪問すべきだ。被爆者と面会し、話を聞くことが重要だ。オバマ大統領が広島に行けば、核兵器に対する考え方を変える一歩になると思う」と強調しました。
アメリカ国内には原爆投下について戦争を早期に終結させ、多くのアメリカ兵の命を救ったなどとして正当化する意見が根強くあります。その一方で、去年行われた世論調査によりますと、若者の間では正当だったと答えた人が47%にとどまるなど、戦後70年余りがたつなかで見方が変わりつつあります。

(以下略)
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 記事は、オバマ大統領が環境が整うのを待っていたと言う趣旨で報じています。私も2010年のルース駐日大使の広島訪問以来、ケネディ駐日大使ケリー国務長官と徐々に高位の政府関係者を広島に訪問させているのを見て、
日本国民の反応を見ているのだと思っていました。“環境”とはあくまで日本の環境だと思っていました。

 それには訳があります、被爆者達がアメリカの謝罪を拒み、
アメリカ海軍艦長の献花を踏み躙った過去があるからです。1989年、米海軍フリゲート艦ロドニー・M・デイビス(4、100トン)のピーター・G・ロバーツ艦長(42)が長崎の平和公園で記念像に献花したところ、周囲の反対運動家らに花輪を踏みつぶされた経緯があるからです。

 その後アメリカは広島・長崎に対していっそう慎重になり、2010年にルース駐日大使を広島に派遣するなどして、慎重に機が熟するのを確認しているのだと思っていました。
 ところがNHKの報道によれば、オバマ政権が注視していた“環境”とは、
日本の国内ではなく、アメリカの国内だったのです。

 私は自らの
不明を恥じる心境になりました。ルース駐日大使、ケネディ駐日大使、ケリー国務長官の広島訪問を見ても明らかなように、花束を踏みつけるどころか、「無差別大量殺戮」に抗議の意思表示をする日本人すら、もはやいなくなってしまったのです。

 日本のマスコミの広島・長崎に関する報道は、
被爆者個人の被害感情、被害救済に矮小化され、無差別大量殺戮、戦争犯罪という視点が完全に抜け落ちています。
 永年このような報道に慣らされて、日本人はアメリカに対して抗議する気力も失うに至ったのです。

平成28年5月11日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ