G11
変化の芽をことごとく摘み取る官僚政治

 5月13日の読売新聞夕刊によると、文部省は予備校が大学入試問題作成を請け負うことを禁止するそうです。

 記事によると
「文部省は、・・・『予備校など受験産業に入試問題の作成を委託するのは望ましくない』と言う見解を各大学に伝える方針を決めた。大手予備校・河合塾が問題作成請負を“宣言”したのを受けた対応で・・・発覚した場合は個別に事情を聞き指導するなど厳しい姿勢で臨むという」、「同省では『強制は出来ないが、予備校が入試問題を作成するのは、問題がある』との立場」だそうです。

 なぜ、予備校が入試問題を作ってはいけないのでしょうか。文部省は「予備校が入試問題を作るのは問題がある」と言っていますが、何が問題なのか、禁止する根拠が全く示されていません。入試問題作りは大学本来の学問研究とは少し異質なもので、必ずしも大学教授の方が問題作りに優れているとは言えないと思います。

 特に規模の小さな大学や、専門の教授がいない科目では、受験生に適した問題が作れず、愚問、悪問、難問、誤問が出題される可能性があります。専門家が揃う大手予備校の方が良い試験問題を作る可能性は十分あります。デメリットもあるかもしれませんが、やってみる価値は十分あるのではないでしょうか。

 学内で問題を作る大学と予備校に外注する大学の情報が自由に受験生に行き渡れば、良い方のやり方が残ってゆくと思います。どちらがよいかは、まずやってみて、大学なり受験生が判断すれば良いことではないでしょうか。文部省は今まで各大学の入試問題をチェックしていたわけでもないのに、なぜ予備校が入試問題を作るのを妨げようとするのでしょうか。批判するにしても、それは作られた問題を見てからにすべきだと思います。予備校が競い合って問題作りをすれば、デメリットがあったとしても、改善されていく可能性が十分あります。始める前から禁止しては、変化や改革の可能性の芽を摘み取ることになってしまいます。

 文部省はかつて高校の実力テストでも、民間の作るテストを「業者テスト」と言って禁止しましたが、法的な根拠のないことを国民に強制するべきではないと思います。官僚達が「強制は出来ないが・・・」と言いつつ、実質的な強制をするのは、悪名高い「行政指導」の常です。
 文部官僚が業者テストや受験産業を嫌うのは、営利事業に対する偏見があるのと、営利企業との競争で学校が敗北するのを見たくないからだと思います。学校の敗北は文部省の敗北につながるからだと思います。

平成12年5月16日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ