G22
大分県の教師不正採用事件、一体誰が主犯なのか

 8月31日の読売新聞は、「大分県教委 採用取り消し」、「多くの対象者 反発」、「今年度分だけ 不公平」という見出しで、次のように報じていました。
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 採用試験をめぐる汚職事件を受け、今年度採用された教員のうち21人の「取り消し」を決めた大分県教委。30日には退職済みの1人を除く対象者全員と面談を実施したが、「私は不正を頼んだ覚えはない」などと猛反発を招いた。
 ・・・「どの教師も納得してくれなかった。採用試験の点数改竄は元県教委の幹部がしたことなので、とにかく謝罪を続けるしかない」・・・。
 取り消し対象の教師も希望すれば臨時講師として10月以降に再雇用されるが、勤務場所は未定で、9月中は混乱が避けられない情勢だ。
 ・・・穂坂邦夫・前埼玉県志木市長も次のように批判している。「採用に関する不正は長年続いてきたとされるのに、今年度分だけ対象となるのは公平性に欠ける。採用主体である教育委員会の責任こそ問われるべきではないか」
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 教師らは、「不正を頼んだ覚えはない」と言っていますが、それでは一体誰が、何のために不正を働いたのでしょうか。当たり前のことですが、不正とか犯罪とかは(恨みによる場合とか政治犯罪等を除いて)、経済的な利益を目的に行われるものです。犯罪の結果誰が利益を得たかを確認すれば、主犯が誰かは自ずから明らかになると言うものです。

 今回の犯罪での最大の受益者は不正採用された教師達です。50万円、100万円程度の商品券などを受け取った者達ではありません。生涯安定した身分と高収入、高額の退職金と年金を得る不正採用教師自身であることは明白です。主犯が教師自身であることは明白と言うべきです。それにもかかわらず主犯が教委幹部達であるかの如き報道は、話のすり替えです。教師達は、「知らなかった」などという言い訳が、通用すると思っているのでしょうか。

 もし、これらの不正行為が経済的利益を目的としたものではなく、従って教師の個人的責任を問えないと言うのであれば、一体これらの犯罪は誰が何のために起こしたものなのでしょうか。読売新聞や教育評論家穂坂氏が彼等を主犯としないのであれば、誰が主犯なのかを明らかにすべきだと思います。
 今回の一連の報道を追っていて、ひとつ不可解なことがあります。それは、
日教組の反応が全く報じられていないことです。教育に関わる重大な不正事件に接して、日頃政治問題に声を大にして発言している彼等が、なぜ今回の事件に関して沈黙を守っているのでしょうか。

 今年7月17日の読売新聞は、
「[スキャナー]大分不正採用教員 「解雇」根拠は何? どこまで…見通し立たず」という見出しで次のように報じていました。
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 教員採用試験を巡る汚職事件に絡み、16日、不正な手段で合格した教員全員の採用取り消しを決定した大分県教委。なぜ不正の全貌(ぜんぼう)が明らかにならない段階で、「過去に例を見ない」(文部科学省)という厳しい措置を打ち出したのか。・・・
 ただ、法曹界の中には、この判断を疑問視する声もある。あるベテラン民事裁判官は、地公法が「懲戒、分限の理由がなければ意に反して免職されない」との身分保障規定を明文化していることを挙げたうえで、「合格ラインに達しなかったからといって一律に取り消すのは難しいのではないか」と指摘。労働紛争に詳しい岩本充史弁護士も「不正な採用だから直ちに適格性を欠くとは言えず、懲戒免職も本人が不正を認識していたケースに限られるのではないか」と語った。
 県教委が採用の取り消しに踏み切った場合、その対象者は県に対し、教員としての地位の確認を求める裁判を起こすこともできる。日本労働弁護団の菊池紘弁護士は「県教委の組織的不正が原因なのだから、不正のつけを受験者だけに負わせるのはおかしい。取り消しが容認されるのは大幅に得点がかさ上げされるなど、極めて不公正なケースに限られるはず」と話した
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 労働問題の専門家達が、早くもこの段階で不正に採用されたもの達を擁護し、かつ、読売新聞が彼等の主張を紹介していることは、不正は単なる個人の問題でないことを窺わせます。そうであれば、残る動機は「政治的目的」しか考えられません。政治的動機とは、左翼、日教組の支持者を採用するということが考えられますが、そうであれば読売新聞は事件の背景を明確に報じるべきだと思います。

平成20年9月27日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ