G23
なぜ呪縛は解けないのか(GHQ占領教育政策の呪縛)

 2月19日の産経新聞は、「GHQ占領政策の呪縛」と言う見出しで、次のように論じていました。
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国旗の前での起立などを求めた都教委の通達に反対する先生が起こした裁判で、東京地裁は平成18年、原告の主張をほぼ全面的に認める判決を出した。あのとき私は、今でもGHQ(連合国軍総司令部)によって植え付けられた自虐史観に立って判断する裁判官がいたのかと驚き、腹立たしい思いがしたものだ。

 今年1月28日の東京高裁判決は右の1審判決を取り消し、原告の請求を棄却した。ホッと一息つく思いだが、喜んでばかりもいられない。際限なく繰り返されるこのような国旗国歌を巡る喧噪(けんそう)は、わが国の学校教育があの忌まわしい占領政策の呪縛からいまだに抜け出していないことを表象するものであるからだ。・・・
(中略)
 問題の本質は底知れぬほど深刻だが、私たち国民はこのことにあまりにも無頓着のようである。占領政策の呪縛もここに極まった観があるが、嘆いていても始まらない。できることから日本の誇りを取り戻す行動を起こし、占領政策の呪縛から学校教育を解き放すことが必要だ。・・・
(以下略)

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 記事は反日教育の根源がアメリカの占領政策であることを認めています。それでは、占領が終わって60年近くもたつのに、なぜ占領の呪縛が解けないのでしょうか。占領期間はわずか7年です。その10倍近くもの年月が経過して、呪縛が解けるどころかますます強固になっていくのはなぜなのでしょうか、それを考えなければなりません。

 まず第一には、占領下の昭和22年に制定された教育基本法により、「教育の
政治的中立」なる概念が導入され、日教組の主導する偏向教育を是正することが、非常な困難を伴うようになったことがあげられます。
 問題となるのは下記の、(旧)教育基本法の第10条です。さりげない条文ですが、これが平成18年に全面改定(つまり廃棄)されるまで、60年近くにわたって、日本の教育を蝕み、学校教育を荒廃させた元凶です。
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第十条(教育行政) @ 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。

A 教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。

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 「不当な支配」とは何なのか、何者による支配を指しているのか、また、「直接」とは誰が国民に対して直接なのか、意味不明の条文です。一公務員に過ぎない教師が「直接」と解釈するならば、それは議会制民主主義に抵触します。

 結果的には、わが国ではこの条文が一人歩きし、政治・行政が偏向教育を是正せんとすることは「不当な支配」の試みであり、教育は行政を介さず、一公務員に過ぎない教師が生徒(父母)に対して「直接」責任を持つものと解釈され、教師は神聖不可侵のごとくになり、行政は学校の施設を建設・維持だけしていればよいとされてしまいました。その結果、日教組の暴走に歯止めをかけることが出来なくなったのです。

 アメリカの公立学校における“進化論を教えることの是非論争”を見ても分かるように、アメリカでは公立学校の教育は、ストレートに政治家が論じる問題であり、教育の政治的中立なる概念はないと思います。その自国にもない概念を日本に導入し、民主主義に反する教育制度を日本に強いたのは、占領終結後も、
反日の呪縛が解けないようにと言うアメリカの深慮遠謀だったと思います。

 日本人の中に、占領政策の継続を願い、占領政策の見直しに反対する人間がいることは否定できません。そういう日本人が多数であるならば、民主主義の建前上現状の反日教育の横行は甘受しなければなりません。
 しかし、日教組の組織率が激減していて、国旗・国歌法が成立し、旧教育基本法が廃棄されたことを考えれば、日本国民の中で占領政策の継続を願う人が多数であるとは考えられません。

 それにもかかわらず、学校で反日教育が後を絶たないのはなぜでしょうか。それは旧教育基本法廃棄の意義が徹底されず、教育行政の様々な段階で、旧法の悪弊が残滓となって残っているからだと思います。

 旧教育基本法は長く、民主教育の聖典視され、マスコミでその弊害を論じるものはきわめて少数でした。その背後にあるアメリカによる占領と結びつけて批判するものは皆無でした。たとえ「占領」は批判しても、その批判が「アメリカ」に行き着くことは決してありませんでした。平成18年の旧法廃棄についてもその意義をたたえるものは少数です。そして、学校における教育の荒廃と目を覆うばかりの教師の質の低下の現実、その原因を報じる記事も十分ではありません。

 反日の呪縛はなぜ解けないのか、その責任の小さくない一端はマスコミにあると言わざるを得ません。

平成23年2月20日   ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次へ