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学校の夏休みはなぜ短くなったのか 本当に生徒のためだろうか(夏休み短縮は教師のため)

 8月26日の読売新聞は、「編集手帳」というコラムで、次のように書いていました。
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8月26日 編集手帳
2017年8月26日5時0分 読売

 蝉せみ時雨は聞こえても、力感のある入道雲をどうも見かけない。天変がつづく夏も盛りを過ぎ、歌人米川千嘉子さんの一首が浮かぶ。〈母の手をふとほどきたる幼な子に入道雲はしづかなる餐さん〉◆紺碧こんぺきの空に現れた雲の造形は、ときに幾多の絵画にも増して胸に迫る。見上げる幼子にとって、大いなる自然の営みに目を開くひとつの起点になるだろう。餐、つまり日々の食事とひとしく、自然体験は心の養分とも言える◆
夏休みを縮める動きが、公立の小中学校で広がりつつあるらしい。大阪市の全小学校では今年から1週間短縮して、きのう2学期に入った。東京でも、9月を待たずに休みを切り上げる学校が珍しくない◆「授業時間の確保」という名分はわからなくはないがその分、学校に縛られて自然とじっくりふれあう機会が減りはしないか。「しづかなる餐」もまた、子らの成長にとって欠かせまい◆〈大きな木大きな木蔭こかげ夏休み〉(宇多喜代子)。新学期を迎えていてもいなくてもあすは8月最後の日曜である。予報通りなら、好天が期待できよう。子供を誘って緑陰で秋の気配を探してみるのも悪くない。
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 確かに夏休みを短くすることの是非については、多くの児童生徒に関わることで有り、いろいろな意見を聞いて、決定すべきであると思います。また、
学校ごとに個別の事情がある問題ではないので、全国で(積雪事情なども考慮した)統一した基準を作ることが望ましいと思います。

 読売新聞はこの「編集手帳」と同時に、いくつかの記事でこの「短くなった夏休み」の学校記事を報じていますのでご紹介します。
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新学期から涼しい教室 =和歌山
2017年8月26日5時0分 読売

 和歌山市の公立中学校で25日、例年より約
1週間早く2学期の始業式が行われた。小中一貫の伏虎義務教育学校を含む全18校で空調設備が完備され、残暑厳しいこの時期でも快適に授業が受けられるようになった。

 市立西浜中(西小二里)では、式後、1年1組の教室で担任の宮崎雅臣教諭が「
1年間で最も長い2学期が、さらに延びることになった。その分、行事や部活などにも力を入れ、充実した学期にしよう」と生徒に呼びかけた。生徒たちは夏休みの思い出話を交わすなどして、久々の再会を喜んでいた。

 同組の教室も、夏休み中に工事を行い、エアコンを導入。喜多悠姫ゆうあさん(12)は「
夏休みを少し損したような気持ちもあるけど、やっぱり涼しい。苦手な数学も頑張れる気がします」と笑顔だった。
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ひと足早く新学期 =愛媛
2017年8月26日5時0分 読売

 ◇西予・大野ヶ原小

 西予市立大野ヶ原小(野村町大野ヶ原)で25日、県内のトップを切って2学期の始業式が行われた。標高1160メートルにある同小は、周辺で冬に気温が氷点下10度くらいまで下がり、
雪が1メートル以上積もることもあるため、夏休みを短縮して冬休みを長く取ることにしている。

 全校児童9人は、自作のポスターなど夏休みの宿題を持って登校。体育館で行われた始業式で、片山文彦校長が「今日から2学期。9人が一つのチームになって新しいことにチャレンジしよう」とあいさつした。

 式後、児童たちは教室に戻り、夏休み中の楽しかった思い出を発表。6年武田心ろこさん(11)は「伊方町での海水浴や西予市明浜町でのキャンプが楽しかった」、5年有間惺菜せいなさん(11)は「2学期は苦手な算数を頑張りたい」と話した。

 県教委によると、
同小以外の県内の公立小277校は9月1日に始業式を行うという。
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夏休みの思い出発表 大分など小中学校で始業式 =大分
2017年8月26日5時0分 読売

 大分市の多くの小中学校で25日、始業式が行われ、夏休みを終えた児童・生徒が元気に登校した。

 同市は、
台風などによる臨時休校で授業時間が不足するのを防ぐため、今年度から夏休みを短縮。市立の小中学校はこの日、いつもより1週間早い2学期を迎えた。

 市立春日町小では、児童約630人を前に馬場宣昌校長があいさつ。全国高校野球選手権大会に出場した明豊高の活躍を紹介し、「最後まであきらめない心を持って2学期は頑張って」と呼びかけた。

 その後、児童3人が壇上で夏休みの思い出や2学期の目標を発表した。

 県内ではこのほか、日田市、中津市などでも始業式が行われた。
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短くなっても思い出いっぱい…小中・2学期始業 =関西発
2017年8月25日15時0分 読売

 近畿地方の多くの公立小中学校で25日、2学期の始業式があり、夏休みを終えた児童、生徒が元気な姿を見せた。

 大阪市は、市内の
全小学校290校にエアコンを設置し暑さ対策が整ったため、今年から夏休みを例年より1週間短縮した。市教委によると、市立中でも3年前から短縮しており、授業時間を確保して学力向上につなげるという。

 同市北区の豊仁ほうじん小(363人)では、服部敬一校長が「2学期は運動会や学習発表会があります。頑張りましょう」とあいさつ。式の後、児童らは教室に戻り、工作や絵画などの夏休みの宿題を見せ合った。
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 夏休みを短縮することについて、各地の理由はバラバラです。バラバラな理由が偶然今年に集中したのでしょうか。しかし、少なくとも生徒の側、保護者の側からその種の要望があったわけではないようです。学校関係者(公務員)にしか取材をしていないようです。日頃、何かと言えば「国民」、「市民」という新聞がこれで良いのかという疑問が湧いてきます。

 それに日頃長時間労働を厭い、土曜休日を強く主張し、今でも土日の部活に対してぶつくさ言っている教師や学校関係者が、
自発的に夏休みを短縮して授業時間を増加するとは、にわかには信じられない出来事です。

 
1.和歌山市では空調設備が整ったことが理由であるかのように報じていますが、はっきりした理由は不明です。これが理由なら夏休みはなくても良いことになるのではないでしょうか。同じ記事の中で「最も長い2学期が、さらに延びる」ことを考えれば、「空調設備」を理由にした夏休み短縮は「本末転倒」ではないのでしょうか。何か隠された理由の存在を窺わせます。

 
2.愛媛県では積雪の多い西予市立大野ヶ原小が従来より「夏休みを短縮して冬休みを長く取ることにしている」ことと、県内の他の277校は9月1日が2学期の始まりであると報じられていますが、このように北海道や東北などの豪雪地帯では、夏休みが短く冬休みが長いことは、従来より行われていることです。他の学校は従来通り9月1日始業であるのですから、記事は、愛媛県は夏休みの短縮は行わないと書くべきです。この記事は誤解を与える記事です。

 
3.大分市では夏休み短縮の理由として、「台風などによる臨時休校で授業時間が不足するのを防ぐため、今年度から夏休みを短縮」としていますが、今年災害があったから、来年以降は(災害があるかないかにかかわらず夏休みを短縮するというのはまるで理由になっていません。
 かつて教員採用試験で不正のあった大分県は日教組の強い県と言われ、反対に愛媛県は日教組の弱い県と言われています。このあたりに本当の理由が隠されているのではないでしょうか。

 
4.大阪市では、「エアコン設置」と「授業時間確保による学力向上」を理由に、市内の全小学校290校で、今年から夏休みを例年より1週間短縮したと報じていますが、「確保」とはどういう意味でしょうか。大阪市全域で夏休みを1週間短縮しないと授業時間を確保できない、1週間短縮すると確保できるというのはどういう事情なのか説明不足で理解できません。
 
 
エアコン授業時間だけの問題なら、1週間が最適かどうか2週間はどうかの議論が必要かと思います。そのような議論の形跡がないのは、他県と変わりません。やはり不自然さが残ります。

 以上読売の記事を見ると
胡散臭さ不可解さが募ります。地域により、学校により異なる事情があるとは考えられない中で、各県、各市が別々の理由を挙げているのは、夏休みを短縮する本当の理由が、公言しにくいものだからだと思います。つまり、嘘をついているのだと思います。

 
日教組の強い大分県が災害を口実にして来年以降夏休みの短縮をして、日教組の弱い愛媛県が夏休みの短縮を行わない点から推測できることは、夏休みの短縮は教師のためだということです。教師にとって42日の夏休みは長すぎるのです。夏休みを短くしてその分冬休み春休みを長くし、できれば秋休みを創設するのが理想なのだと思います。

 読売新聞は生徒、父母からの要望がないのに、各地で夏休みが短縮され、その理由がバラバラな理由を知っているはずです。知っていながら隠しているとしたら、本当に
悪質だと思います。

平成29年8月28日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ