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私大助成は学生への奨学金支給などによる間接助成とすべき −文科省の直接関与は学問・研究の自由を損ない、天下りを増やす−


 1月20日の読売新聞は、「経営難 私大助成を減額…新年度から 赤字5年連続など」という見出しで、次のように報じていました。
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経営難 私大助成を減額…新年度から 赤字5年連続など
2018年1月20日5時0分 読売

 文部科学省は、私立大・短大を運営する学校法人が著しい
経営悪化に陥った場合などに、法人への私学助成金を減額する新しい仕組みを2018年度に導入する方針を決めた。財務情報を開示していない法人の減額幅も拡大する。18年度は18歳人口が再び減少局面に入り、経営環境の一層の悪化が見込まれるため、経営改善が進まない法人には撤退を含む抜本的な対応を促す。

 文科省はこれまで、特色ある
研究や地域連携、大学の国際化などに積極的な法人には助成金を加算する一方、大学の大幅な定員割れや不正経理などの不祥事の際には減額を行い、改善を求めてきた。

 18年度からは減額要件として、従来の「定員割れ」に「5年程度の連続赤字」「
教育の質が低評価」を加え、すべて該当する場合はさらに助成金を削減する。法人の経営分析は私大・短大への経営支援を行う「日本私立学校振興・共済事業団」(東京)と連携して実施。教育の質は、討論などを通じた主体的な学び「アクティブ・ラーニング」や教員評価の実施状況などを数値化し、文科省が5段階で判定することを想定している。

 具体的な減額幅は今後検討するが、教育の質が
高評価の場合は、逆に加算の対象になる。

 受験生への情報公開も強化する。これまでホームページ上などで財務情報を公表していない法人には、助成金の一部を15%削減してきたが、これを50%程度に拡大する。また、従来は経営改善計画を策定すると助成金が加算されたが、今後は
第三者委員会が計画を評価し、実効性がないと判断された場合は加算分を減額または打ち切りとする。

 文科省はすでに今回の制度改正について各法人に説明を始めており、同省幹部は「メリハリの利いた補助制度に改めるのを機に、各法人は学校規模や教育内容が今のままで良いのか見つめ直してほしい」と話す。

 定員割れの私大は17年度、全581校のうち229校(39%)、短大は全304校のうち204校(67%)。同事業団が16年度時点の収支を分析した調査では、全国660法人のうち、17%にあたる112法人が経営困難な状態で、そのうち21法人は経営改善をしないと19年度末までに破綻する恐れがあると指摘している。

  ◆私学助成金 =
学生の負担軽減教育研究の向上のため、国が私大・短大を経営する学校法人に交付する補助金。学生数や教職員数などに応じた「一般補助」と、特色ある教育研究に配分する「特別補助」がある。2018年度の予算額(案)は総額3154億円。

時代に即し抜本的見直しを
 文部科学省はこれまで経営状態が悪い学校法人にも私学助成金を配分し、経営を支えてきた。しかし、今後はこうした法人への支援を縮小し、自力で生き残りを図るよう求める。「大学はつぶさない」という姿勢からの大きな転換といえる。

 相次ぐ新設と少子化で、私大の定員割れは20年前の5倍に上る。政府内には「多くの国費が
改革に取り組まない大学の救済に使われている」(財務省幹部)との声が根強くある。

 今回の見直しで、積極的に改革に取り組む法人には助成金が多く配分されるようになる。文科省幹部は「努力するところには影響は少ない」と強調している。

 文科省は現在、私大の学部を別の大学に譲渡できる仕組みの導入なども検討している。大学は
人口減に見合った組織の統合・再編を図り、人生100年時代に合わせて、離職した女性や高齢者の学び直しを充実させるなど、抜本的な見直しが求められている。(教育部 沢井友宏)
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 この文科省の政策は
「学問・研究の自由」という観点から見ると、非常に問題があると思います。大学は国立・公立・私立の別なく、学問・研究の自由が確保され、それに関する国の関与・干渉は控えなければなりません。

 しかるにこの方針によれば、文科省が
直接に(あるいは下部組織を通じて間接に)研究内容教育の質、教員の質5段階で評価し、それにより助成金の額を加減することになりますが、これは「学問・研究の自由」を制約する恐れは十分あります。

 
「特色ある研究」「教育・教員の質」の当否や質を客観的に評価するのは困難です。また、「第三者委員会」といっても、文科省が委員を指名する委員会は「第三者」とは言えません。評価は文科省の恣意的なものとなる可能性があります。また、そのような制度は必然的に文科省官僚の天下りを誘発する恐れが大です(もしかしたらそれが目的かも知れません)。

 一方で大学の中には
低レベル放漫経営のものが存在することも事実ですので、それらを放置することは出来ません。教育市場から撤退させるべきはどの大学かは、市場の消費者(学生とその父母)の判断に任せる方が良いと思います。つまり助成金は直接国から大学に交付するのではなく、奨学金という形で学生を通じて交付するのです。
 私立の中学・高校などの助成金が、直接学校へではなく、
授業料の補助、奨学金という形で生徒を通じて交付されているのと同じ形を取れば良いと思います。

 更に付け加えれば、「
離職した女性や高齢者の学び直し」に国費を使うよりも、これからの日本を担う若者の通う大学に国費を使う方が、有効活用になると思います。

平成30年1月25日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ