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部活動の地域移行と「教員の働き方改革」 -学校は誰のためにあるのか-

 2022年12月27日と、2023年1月21日のNHKテレビニュースは、「中学校の休日の部活動の地域移行 “可能なかぎり早期”に修正」、と「吹奏楽コンクール 中学生主体の地域の楽団なども出場可能に」と言うタイトルで、次の様に報じていました。
茶色字は報道 黒字は安藤の意見)
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中学校の休日の部活動の地域移行 “可能なかぎり早期”に修正
2022年12月27日 12時42分  NHK

 
中学校の休日の部活動を、地域へと移行する取り組みに対し、地方自治体などから懸念する声が相次いだことを受けて、国は来年度から3年間でおおむね地域移行を達成するという計画を見直し、地域の実情に応じて、可能なかぎり早期の実現を目指すとして、達成時期の目標を修正しました。国は、こうした内容を盛り込んだ部活動の新たなガイドラインを発表しました。

 
部活動教員の働き方改革両立させるため、国は、来年度から3年間で、中学校の休日の部活動を、地域のスポーツクラブや文化芸術団体などに段階的に移行する計画で、この方針を盛り込んだ、部活動のガイドラインの改定案を先月公表し、国民から意見を募っていました。

 
部活動教員の働き方改革両立」と言う言い方は、両者を対等に扱っている言い方ですが、それは間違っています。学校教育は児童・生徒の為にあるのであって、教師の生活のためにあるのではありません。最優先は児童・生徒です。

 「働き方
改革」という言い方は曖昧な言い方です。何が改革なのか、改革なのか改悪なのかは立場によった異なります。ある「改革」が教師のためには「改革」であっても、「児童・生徒」にとっては「改悪」である事は十分あり得ます。この部活動の地域移行はその典型です。

 そのように考えると、
「改革」放置すれば、「改悪」蔓延となりかねません。
 民間企業では
市場経済の元でライバル(競争相手)が存在するので、行き過ぎた「改革」には自然とブレーキが掛かりますが、「公務員の世界」ではそれがないため組合活動が活発である事もあって、「改革」にブレーキが掛かりません。
 また公立学校を始め多くの官公庁の職場では、一部を除いて
組合活動の影響もあり、概して「横並び意識」が強く、これも議論が一方的な「改革」の方向に流れやすい傾向にあります。
 
国(文科省)、マスコミは「改革」については当然児童・生徒の立場で考えるべきです。

 その結果「3年間での達成は現実的に
難しい」とか「受け皿もなく指導者もいないのに移行するのか」といった意見が、国民や自治体の関係者から寄せられたということです。

「休日の部活動の地域移行」児童・生徒・保護者の意見は何も聞かずに決定されたことを物語ります。いかに強引で拙速であったか、そしてその理由は何かが問われます。

(中略)

 
永岡文科相「地域の実情に応じて段階的な体制整備を」
永岡文部科学大臣は、閣議のあとの記者会見で「部活動改革は、将来にわたって、生徒のスポーツや文化芸術活動の
機会を確保するために大変重要だ。多様な地域の実情に応じて、段階的な体制整備を進められるよう、今後とも幅広く関係者の声を伺いながら、文部科学省一丸となって取り組みを進めていきたい」と述べました。

 
「機会の確保」などと言う後ろ向きの発言は適切ではありません。学校は生徒の為にあることを忘れず、「質量共にレベルの高い機会の確保」を目指さなくてはなりません。それが文科相の役割です。「関係者の声を伺いながら」と言っていますが、当然その前に、児童・生徒・保護者の声に耳を傾けなければなりません。
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吹奏楽コンクール 中学生主体の地域の楽団なども出場可能に
2023年1月21日 6時48分 NHK

 国は、中学校の
部活動の運営主体地域の団体などへ移す動きを進めています。
全日本吹奏楽コンクールなどを主催している全日本吹奏楽連盟は、これまでコンクールの出場条件を中学校単位としていましたが、新年度からは中学生が主体となって所属する地域の吹奏楽団なども出場できるよう参加条件を見直したことが分かりました。

 少子化による生徒の減少などが課題となる中、国は中学校の休日の部活動を新年度から、地域の団体などに段階的に移行する方針ですが、専門家などからは中学校単位での出場が条件となっている、コンクールや大会への参加条件を見直す必要があると指摘されています。

 ここでは「少子化」を前面に出して、「働き方改革」に触れていませんが、なぜでしょうか。12月の時は「働き方改革」だけで、「少子化」はありませんでした。
 何となくいかがわしさを感じます。大事な目的・理由が
1か月で変わり、どちらの時も詳しく言及していないのは不可解です。

 正しい理由・目的はどちらなのか。「少子化」が正しく「働き方改革」は間違いなのか、その反対に「働き方改革」が正しく「少子化」は間違いなのか。
 それとも両方正しいのか、あるいは両方間違いなのかどちらでしょうか。

 多分
両方間違いなのだと思います。児童・生徒数が減少したのは、休日に限った話しではないし減少(増加)の程度は地域により異なります。
 学校と部活の繫がりをなくすことは、単なる教師の手抜き指向に過ぎず、児童・生徒にとっては「改革」と呼べるものでない事を指摘されることを内心恐れているのです。


(中略)

 さらに、音楽教室やスポーツクラブが移行先になる場合、新たに
会費などが必要になり保護者の負担が増す可能性もあります。

 このため経済的な事情で、部活動に参加したくても参加できない
「機会の格差」が広がることも懸念されています。

 改革(改悪)により教師の仕事が軽減されるわけですから,当然その相当分の教師の給与は減額して、その代わりを務める外部の団体への支払に充当すべきです。

 人間形成にもつながる子どもたちの大事な学びの場をどう守るか、
先進的な事例を参考にしつつ、それぞれの地域にあった形を模索していく必要が求められています。

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