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すでに教師の“仕事減らし(手抜き)”が続いている中で、“長時間労働是正”が“待ったなし”になる原因をなぜ調査・確認しないのか

 7月18日の読売新聞は、「教員の長時間労働『是正待ったなし』と危機感、タブレット端末は『必需品』…文部科学白書」と言う見出しで、翌日19日には「教員の働き方改革『加速』…文科白書 魅力向上『喫緊の課題』」と言う見出しで、次の様に報じていました。
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教員の長時間労働「是正待ったなし」と危機感、タブレット端末は「必需品」…文部科学白書
2023/07/18 11:18  読売

 文部科学省は18日、2022年度の文部科学白書を公表した。社会問題化している
教員の長時間労働について、「是正は待ったなしだ」と危機感を示し、学校現場の働き方改革を推進する必要性を明記した。



 白書では、改革を進めるため「
教師でなければできないこと教師集中できるよう、業務の適正化を図る必要がある」と指摘した。意欲や能力のある人材が教員を目指さなくなり教育水準が低下する状況は、「我が国や社会にとってあってはならない」と、強い懸念を示した。

 教員確保に向けては、社会人らを対象にした教員資格認定試験について、現在は休止している高校教員の試験を24年度から「情報」に限って再開するなど、
多様な専門性や背景を持つ人材を登用する方針を打ち出した。

 人工知能(AI)などの先端技術については「社会のあり方そのものが劇的に変わる」と評価し、現代の子どもにとって、
タブレットなどの端末は鉛筆やノートと並ぶ「マストアイテム必需品)」だと強調した。そのうえで、小中学生に1人1台の学習用端末を配る「GIGAスクール構想」をさらに推進していく姿勢を明確にした。
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教員の働き方改革「加速」…文科白書 魅力向上「喫緊の課題」
2023/07/19 05:00 読売

 文部科学省が18日に公表した
文部科学白書は、教員に質の高い人材を確保するには抜本的な教職の魅力向上が「喫緊の課題」とし、働き方改革を加速させる考えを強調した。



 永岡文科相は同日の記者会見で「教師のあり方や成長分野を 牽引けんいん する人材の育成にしっかり取り組んでいく」と述べた。

 白書では、
教員の長時間労働について「依然として多い」と指摘。意欲と能力のある人材を確保するため、教員の長時間労働の是正は「待ったなし」と言明した。対策として、少人数学級支援スタッフの配置、部活動の見直しなどをさらに進めていくとした。

(以下略)
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 記事の内容を要約すると以下の通りになります。
@
長時間労働に危機感、待ったなしだ。
A改革を進める(長時間労働をなくす)為には、「
教師でなければできないこと教師集中できるよう、業務の適正化を図る(支援スタッフを採用して教師でなくても出来る事の業務を減らす)必要がある。
B
意欲や能力のある人材が教員を目指さない社会はあってはならない。教師希望者を増やすにはどうしたら良いか、となります。

 
「長時間労働に危機感」最初に出てきて、「教師希望者のレベル低下を憂慮」は最後に出てくるので、“長時間労働の是正”目的で、「教師希望者のレベル低下」付け足し・おまけの感を免れません。学校教師の生活ためにあるのではなく、児童・生徒教育・育成のためにあるはずですが、その視点は皆無です。唯一触れているのは“タブレット・端末”だけで、これも付け足しの感を免れません。文科省(含、各地の教育委員会)がこれで良いのでしょうか。
 教師にとっての
“改革”は、見方を変えて“児童・生徒の視点”に立ってみれば、“改悪”になりかねません。

 
「長時間労働の是正」が目的であるのなら、「長時間労働」の原因を把握しなければなりませんが、した形跡がありません。原因把握をすることなく、「教師でなければできないことに教師が集中できるよう、業務の適正化を図る必要がある」と指摘(対策を提案)しているのは不可解です。はじめから「対策ありき」をうかがわせます。

 「
教師希望者レベル低下歯止め・改善」が目的なら、まずその(教師希望者のレベル低下の)原因を把握しなければなりません。記事の上では、原因が「長時間労働」だと明言はしていませんが、長時間労働が原因なのか、他に原因はないのかから始めるべきです。

 今の小中学校では、
1クラスの生徒数の削減運動会・学芸会・文化祭の簡略化プールの廃止部活の廃止PTAの廃止家庭訪問の廃止など、「教師でなければ」の多くの分野で、既に“省力化(手抜き)”進んでいる一方で、新たに加えられた教育項目は皆無です。それなのに、なぜいまだに「長時間労働が進行」になるのでしょうか。教師の劣化が先行(進行)しているのではないのでしょうか。長時間労働が教師の劣化をもたらしたと言うよりも、教師の劣化が長時間労働の原因であると言うことではないのでしょうか。

 
教師の劣化には考えられる原因があります。現行の教師の給与体系は一律・悪平等を基本にしていて、受け持ちのクラスの生徒が多くても少なくても、部活の指導をしてもしなくても給与は変わらないようです。
 そして、相手は子どもですから、教頭・校長になろうという気さえなければ、
怠け者には天国です。このような職場の実態は、間もなく教育学部の学生達の知るところとなり、意欲・能力のある学生にとって教職は魅力を失ったのです。

 近年「
日教組組織率が低下し、その活動が報じられる事」が無くなりましたが、これは公立学校の教師という職業は、労組の存在すら不要の天国だという事を意味しています。労組がなくても文科省と各地の教育委員会がその役割までを果たしているのです。

 現行の
教師の業務(範囲)明確にされておらず、「教師でなければ出来ない業務」を厳格に適用すれば、時間割通り「授業時間」以外は、「教師以外でも出来る」と言う事になるかも知れません。そうするとそれ以外の仕事をするために、新たに多数の支援スタッフ(非教師職員)を雇用する必要があり、大幅な人件費の増大が避けらないかも知れません。あるいは「適正化」により業務が減った教師の給与を(学習塾の講師並みに)減額すべきだという議論になるかも知れません。

 今回の変更(改革?)は教師の実態(多くの
教師はもはや“聖職者”ではなく、少なからぬ教師は意欲と能力に問題のある“労働者”である)に合わせ、教師の業務と給与体系の明確化、抜本的改革(聖職者コースと労働者コースに分割)に結びつける良い機会にするべきです。

令和5年7月22日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ