G59
教師の長時間労働の原因(教師の劣化)に触れずに進められる「待遇改善」 -学校は教師の生活のために有るのでは無い 児童・生徒の為にあることを忘れるな
6月17日の読売新聞の社説は「教員の待遇改善 労働時間をいかに削減するか」と言う見出しで、次の様に論じていました。(茶色字は記事、黒字は安藤の意見)
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社説
教員の待遇改善 労働時間をいかに削減するか
2024/06/17 05:00 読売
「教育は人なり」と言われるように、学校教育の成否のカギは教員が握っている。良質な教員が増えるように処遇を改善し、働きやすい環境を整えることが大切だ。
その一つが「残業代」である。文部科学省の中央教育審議会特別部会が公立学校教員の待遇改善策をまとめた。残業代の代わりに基本給の4%を一律支給してきた教職調整額を引き上げ、「10%以上」に改めるよう求める内容だ。
「学校教育の成否のカギは教員が握っている」、これは「公務員は国民に対する奉仕者」と位置づける考え方とは根本的に相容れません。
ここで言っていることは、“教師は一般の公務員とは異なる“聖職者”である”という伝統的な“教育者観”の名残のようですが、これは残念ながら戦後の労働組合(日教組)の結成・活動、“文部官僚の劣化”により、以後崩壊の一途をたどっています。
しかるに彼らは未だに自分の都合に合わせて「聖職者」と「労働者」を使い分けて、ある時(義務を免れる時)は労働者、ある時(権利を主張する時)は聖職者と「良いとこ取り」をしているのが現状です。
次に言っていることは良質な教師が減少(良質でない教師が増加、教師が劣化)し、学校教育の成否が危ぶまれる事態となっていると言うことを意味しています。
また、“働きやすい”とは教師の仕事を減らし労働時間を減らすことではありません。それは単なる良質ではない教師の言う事で、良質な教師の望むことではありません。
「働きやすい環境」とは働きがいがある、つまり児童・生徒の成長に繋がり、努力が報われる職場を望む教師が求める環境のことであるはずです。
ではなぜ、良質でない教師が増えたのでしょうか。その点を問題視し対策を考えるためには、まず原因を突き止め必要な対策を講じることが不可欠です。
それをすることなく、残業手当を4%→10%以上に引き上げても、長時間労働はなくならず、現職の良質でない教師が良質な教師に変身することは期待できません。
長時間労働が良質でない教師が増加した原因であるとするならば、長時間労働となった原因を突き止める必要が出てきます。そしてその為には、教師と教育関係者の意見を聞くだけでなく、学校の中心的存在である児童・生徒、保護者の意見を聞くことが必要不可欠の筈ですが、記事を見る限りではその形跡が全くありません。
それらをすることなく、いきなり“4%→10%以上”とは、甚だしい論理の飛躍です。まず“結論ありき”が疑われる論理の展開です。長時間労働となった原因を突き止めることなく、残業手当の金額を引き上げても残業は減らず、長時間労働はなくなりません。
教職調整額は、1972年施行の教員の給与等に関する特別措置法(給特法)で4%とされた。当時の残業時間は月8時間程度で、これに合わせて設定された。
しかしこの半世紀で、学校が直面する課題は複雑かつ多様化している。文科省の調査では、国が上限とする月45時間を超える残業をしていた教員は、小学校で65%、中学校では77%に及ぶ。
残業が増えたことに関連して、学校の「複雑かつ多様化」を挙げていますが、「学校」でなく「教師」の立場で考えれば、「複雑かつ多様化」 しているのは一面であり、その反対に簡略化・省略化されている側面も少なくありません。
例えば1クラスの人数が50人から30~40人に減り、運動会、学芸会、プール、クラブ活動、父兄会、PTA、家庭訪問、給食費その他の集金、登・下校時の見守り、いじめ・不登校対応など各種の業務が、近年縮小・外部に丸投げされ、一部では1人の教師が担当する学科の科目数を減少する動きも始まっています。
これらの点に注目すれば、「仕事は増えていない。むしろ減っている」と言うのが正しい認識です。これに対する否定的な実態は全く報じられていません。
今まで長年小学校では1人の担任教師が国語・算数・理科・社会等、体育や音楽などの一部を除いて、1人で全部教えていたことが、なぜ最近になってできなくなったのでしょうか。外国ではどうなのでしょうか。誰からも、何の説明もありません。それどころかその点を指摘する声すら聞かれません。児童・生徒にどの様な影響があるのか考える声も全く聞かれません。教育関係者、マスコミが心配している(関心がある)のは教師の事だけです。
なぜ今まで出来ていたことが出来なくなったのでしょうか。なぜ長時間かかるようになったのでしょうか。文科省、マスコミからその説明、報道がありません。その説明をせずに口から出てくるのは“教師の待遇改善”ばかりです。
今まで長年教師達が出来ていたことが、理由もなく出来なくなったという事は、原因は学校側に有るのでは無く、教師の側にあると考えるべきです。教師が劣化したのです。教師のほとんどが女性教師となったことも無視できません。
それ(教師の劣化)を知っている教育学部の学生達が、教師になるのを避けるようになったのではないのでしょうか。教師にならなかった教育学部卒業生に、その理由を聞いたことが有るのでしょうか。
良質な学生が求めるのは、短時間労働と高給だけではないはずです。むしろそれだけが狙いで応募して来る教師に碌な人間はいないでしょう。
ところでこのような問題には従来「日教組」が深く関与してきた問題だと思いますが、報道を見る限り「日教組」の動きは皆無です。
読売新聞の過去の記事を「日教組」をキーワードにして検索すると、以下の様な結果で、期間約5年間で検出されたのは全部で21件で、今年になっての記事は1件だけです。そのうち「日教組」、「教研集会」が記事の見出しになっているのは7件だけでした。それ以外の14件は日教組は記事の主役ではなく、関係者程度の脇役と思われます。
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日教組 検索(2024.09.01) 読売新聞
検索結果:21件
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この結果を見るとかつて猛威を振るった「日教組」は、なぜか現在は全く存在感を失っているという事です。
4%の支給は現状との隔たりが大きく、今の勤務実態に見合っているとは言えない。長時間労働が敬遠され、なり手不足が深刻な教員の人材確保という観点からも、引き上げは当然だろう。
文科省は来年の国会で給特法を改正し、2026年以降の教職調整額引き上げを目指している。
一部には、給特法を廃止し、時間外勤務に応じて残業代を支払うよう求める声もあるが、支出が一気に膨張する恐れもある。国や地方の厳しい財政事情を考えると、教職調整額の引き上げは、現実的で妥当な選択だと言えよう。
だからといって、いくらでも残業させていいわけではない。大切なのは、業務の効率化を図り、労働時間を削減することだ。
特別部会は今回、小学5、6年生で導入している「教科担任制」を3、4年生に拡大することや、負担の重い学級担任の手当増額などを求めた。このほか、全中学校への生徒指導担当教員の配置なども提言している。
非効率な会議を減らし、行事の簡素化を進めるなど、各学校の運営を見直すことも必要だ。中学校の部活動指導については、外部の指導員を活用して、教員の負担軽減を図ることも推進したい。
運動会、学芸会、遠足なども“行事”として捉えて、簡素化を進めるのであれば、それは本末転倒です。「学校」は児童生徒の為にあるのであって、教師のためではありません。
教員の待遇や労働環境を改善することは、学校現場に優秀な人材を呼び込み、教育の質を高めることにもつながる。
仮に以後優秀な人材を呼び込むことが出来たとしても、今の(非優秀)人材が優秀化することには繋がりません。別の対策が必要です。仕事を減らし給与を増額するのは“方向が反対”です。
民間企業では、人材の獲得競争が激しさを増し、賃上げの機運も高まっている。このタイミングを逃せば「教員離れ」がますます加速しかねない。政府は本腰を入れて、取り組まねばならない。
今の学校が抱える問題は教師の“長時間労働”だけではなく、それ以外の“いじめ・不登校”を始めとする児童・生徒が遭遇している問題は深刻です。
そして、それにもかかわらず教師の劣化が進む中で、一筋に脇目も振らず(児童・生徒のことなどお構いなし)に、日教組亡き後、日教組に代わって「教師」を守り抜く為に総てを捧げているのが、「文科省」なのです。そんな事で良いはずがありません。
民間企業では的確な勤務(成果)評価を実施しており、総てに於いて“一律”という事はありません。
文科省の使用者としての使用人(教師)に対する行動が甘すぎるのです。果たして「使用者」としての自覚があるかすら疑わしいと言うべきでしょう。使用者不在です。
かつて教師は労働者ではなく、“聖職者”として扱われていたと言えます。教師は労働者ではないから、残業手当もなかったのです。
教師を聖職者ではなく労働者として捉えるのであれば、使用者としてするべき事をしなければなりません。それは労働者としての勤務評定の励行です。
賃金の対象は労働時間ではなく、仕事の成果です。仕事の範囲・内容を明確にし、仕事の範囲・内容に応じた給与体系を確立すべきです。今はその体系がないために、彼ら・彼女らの多忙を口実にした仕事の削減の主張には際限がありません。
今後は教師を本人の希望を参考にして「聖職者コース」と「労働者コース」に分ける事が必要・有益です。
例えば労働者コースは給与体系を能力・実績別に明確にするべきです。
(労働者コース月額給与体系の一例)
教師の給与 クラスの生徒数などによる給与の差別化
○学級担任 担当するクラスの生徒1人当たりの単価5,000円×人数
35人のクラスは 5,000円×35=175,000円
○科目数の多数による差別化 1科目20,000円
4科目の教師は 20,000円×4=80,000円
○部活担当20,000円+部員人数1人×3,000円
部員が10人の場合は、20,000円+3,000円×10=50,000円
上記に該当しない教師は、学習塾の講師の給与水準に準じる
(使命感・責任感・能力のある教師は、“聖職者”コースとして、年俸制)
学級担任もせず、部活もしない教師は学習塾の講師並みになりますが、当然の事です。
令和6年9月7日 ご意見・ご感想は こちらへ トップへ戻る 目次へ