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問題を避けて通っている教育白書

 文部省の平成11年度版教育白書が公表されました。新聞報道(12月7日の読売新聞、産経新聞)を見ると白書は戦後教育について、反省すべき点として、@受験競争の激化で学校教育が知識に偏り、思考力や豊かな人間性をはぐくむ教育がおろそかになった。A家庭や地域の“教育力”が著しく低下し、いじめや不登校などの背景になった。B教育の機会均等を重視し過ぎ、個性や能力に応じた教育が不十分だった、等の点を挙げています。そして、今後の課題としては、@心の教育の充実。A個性を伸ばし、多様な選択ができる学校制度の充実。B現場の自主性を尊重した学校づくりの促進、などを挙げています。

 果たしてこられが日本の学校教育が抱えている課題でしょうか。この白書は、多くの公立学校から国旗と国歌が姿を消してしまったという偏向教育の実態にも、歴史教科書の反日(自虐)ぶりにも触れていません。広島県や三重県のように、日教組の圧力の前に校長の権限が有名無実化し、教師の評価が全員一律になっているなど、学校が労務管理不在の無法地帯化しているという実態(月刊誌『正論』12月号)にも、全く触れずに避けて通っています。また、痴漢教師、テレクラ教師、盗撮教師の激増に見られる、教師の目を覆うばかりの質の低下にも、一言の言及もありません。

 12月10日の産経新聞には、大阪府豊中市の市立小学校で、教職員組合に加入するある教師が、卒業式と入学式の当日、掲揚されていた国旗を勝手に引き降したことや、その教師が通知票を校長印のないまま(つまり、校長に見せないまま)児童に渡し、校長が児童の自宅を訪問して印鑑を押して回ったという事が報じられていました。しかも、市教委がこの教員から事情聴取しようとしたところ、聴取の場に教職員組合のメンバーが数十人現れ、交渉を要求され、調査が打ち切られてしまったそうです。こういう出来事は全国の学校の至る所で起きているのだと思います。

 なぜ、教育白書はこれらの問題点に目をつむるのでしょうか。それは、日教組らの教職員組合と文部省が、いつの間にか癒着してしまい、両者がなれ合いの関係になってしまったからだと思います。癒着のきっかけは、学校の週休二日制です。学校の週5日制に反対意見が多かった世論を排してこれを実現するために、文部省と日教組が同じ公務員として共闘関係になってしまったことです。そして、これを契機に左翼運動が行き詰まった日教組と、細川内閣のもとでの社会党の政権参加により方向を見失った文部省が手を握り、両者が「歴史的和解」をしてしまったことが原因です。これ以後文部省は日教組を批判できなくなってしまったのです。現在の学校荒廃の原因のほとんどは、日教組らによる学校の組合管理にあると思います。その日教組に何も言わない、何もしない文部省などは存在する意義がありません。

 白書は教育改革の成果として、「小学6年生の授業時間数が1,015時間から945時間に、およそ3割減ったこと」を挙げていますが、授業時間が減ったことがどうして「成果」なのでしょうか。代わりに何かしたのでしょうか。授業時間が減ったことを「成果」と認識するのは、労働組合の発想です。文部省が労働組合と同じ発想をしていたのでは救いがありません。

平成11年12月11日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ