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「住専」は大蔵官僚が自分たちのために作った

 住宅金融債権管理機構の中坊社長が、住専破綻について住友銀行などの母体行(母体と言っても複数の金融機関が出資しているので本当の意味の母体行は存在せず、その母体行が存在しないことが問題の本質だと思います)の経営者の責任を追及していますが、真に責任を負うべき者は大蔵官僚だと思います。

 一体、住専とは誰が何のために作った会社なのでしょうか。住専の最大の特徴は大蔵省主導のもとに都市銀行、地方銀行、生保、信託、農協などが業態別に各企業の出資により、7つの住宅ローン専門会社を作ったことです。普通、複数の企業が出資して会社を作るときは、財閥企業グループ、親密な取引関係のある企業、資本関係のある企業などが共同出資して作るものです。ライバル同士の企業を含む親密でない複数企業が、一律に出資して新たな事業会社を設立するなどと言うことはきわめて異例です。住専以外にその例はありません。実際の親会社がどこなのか、経営の方針を誰が決めるのか、責任の所在が不明確で無責任経営に陥ることは目に見えています。事実、住専は銀行本体が住宅ローンに進出して、その役割がなくなったにもかかわらず、業務の縮小廃止をすることができず、審査能力がないにもかかわらず住宅ローン以外の融資にのめり込んでいきました。そして、それが住専の破綻の最大の原因なのです。

 もし、民間企業が住宅ローンを扱う専門会社の必要を認めたならば、単独で子会社を設立するか、あるいは、たとえば三菱グループであれば、東京三菱銀行、三菱信託、東京海上、明治生命の各社で出資して「三菱住宅ローンサービス」と言う会社を作るはずです。現に今、三菱グループは4社で共同出資して証券会社を作ろうとしています。それが当然の形態です。大手都市銀行が共同で出資して「共同都銀証券」と言う会社を作ろうという発想は考えられません。

 私は住専とは大蔵官僚が住宅ローンの普及拡大を口実に自分たちの天下り先を確保することを目的として、民間企業に出資させて作ったものだと思います。それ以外に考えられません。事実、当初、住専7社のうち6社に大蔵官僚が天下って社長になっていました。住専は金融機関でない一般の貸金業者であるにもかかわらず大蔵省によって特別扱いをされていました。
 官僚が私利私欲のために多数の企業に出資させて会社を作らせたこと、これが住専問題の根本だと思います。それからあとの不正融資などは問題の本質ではないと思います。

平成10年9月23日      ご意見・ご感想は   こちらへ      トップへ戻る      H目次へ