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法制度の全体像、全容は、採決の前に提示すべき −外国人材法(出入国管理法)改正案審議で、重要な中身を隠して強引に可決した安倍政権、平気でそういうことをする彼の人格に問題あり


 12月10日のNHKニュースは、「安倍首相 外国人材受け入れ 制度運用に万全期す」と言うタイトルで、次のように報じていました。
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安倍首相 外国人材受け入れ 制度運用に万全期す
2018年12月10日 19時03分外国人材 NHK






 臨時国会の
閉会を受けて安倍総理大臣は今夜記者会見し、最大の焦点となった外国人材の受け入れを拡大するための法律について、必要性を強調した上で、技能実習制度を含め、制度の運用に万全を期す考えを示しました。また、憲法改正について、再来年の2020年を新しい憲法が施行される年にしたいという考えに変わりはないとしながらもスケジュールは国会次第で、予断を持つことはできないと述べました。

 この中で安倍総理大臣は、臨時国会で最大の焦点となった外国人材の受け入れを拡大するための法律について、「全国的な人手不足の中、優秀な外国人材にもっと日本で
活躍してもらうために必要だ」と述べ、新たな制度の必要性を強調しました。

 そのうえで、「直ちに
しっかりとした運用体制を構築する。受け入れる人数には明確に上限を設け、期間を限定する。いわゆる移民政策ではなく、国会での議論も十分に踏まえ、技能実習制度を含め、今後、制度の運用に万全を期していく」と述べました。

(以下略)
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 このニュース画面の字幕を見ると、「
年内に政府の基本方針や分野別運用方針、外国人受け入れ共生の為の総合的対応策を示す」、「施行前には法制度の全体像を国会に報告、全容を示す」とあり、現時点(12月10日)ではそれらの重要な部分が明らかにされていません。

 新聞で報じられる
「改正出入国管理・難民認定法の要旨」などを見ても、条文は枠組みだけで、具体的な中身はほとんどが「法務省令で定める」となっていて、何も書いていないとの印象を受けます。

 しかし、法律改正案の
“基本方針”とか“法制度の全体像”などは、法律の根幹であり、議会の審議の時に当然提出されているべきもので、議会で採決され可決されてから提示すると言うのは、順序が逆と言うべきです。法律案の根幹の説明無くして、どうして審議が出来、採決が可能だったのでしょうか。

 可決成立後の12月13日、14日の読売新聞には、下記のように新制度の中身が続々と報じられていますが、「
概要判明した」とあり、まだ全部ではなく正式発表でもないようです。法案自体は政府の原案通り成立していて修正はないにも拘わらず、全体の重要な部分が出来ていないとすれば、中身のない法案を可決・成立させたというに等しく、甚だしい怠慢と言うことになります。

 12月13日の読売新聞は、「外国人材 
多言語で支援…運転免許試験、医療通訳」と言う見出しで、次のように報じていました。
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外国人材 
多言語で支援…運転免許試験、医療通訳
2018年12月13日15時0分 読売

 来年4月に始まる外国人労働者の受け入れ拡大に伴い、政府がまとめた
外国人との共生のための「総合的対応策」の概要判明した。運転免許の学科試験を全国的に多言語化し、病院を受診する際の医療通訳を地方の病院にも配置するなど、「生活者」視点の対策を充実させるのが特徴だ。



(以下略)
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 これを読めば今回の改訂は、単なる労働問題を超えていて、日本が
単一民族国家ではなく、複数言語多民族国家に一歩を踏み出したという印象を強く持ちます。「共生」「生活者」と言う言葉からは、外国人扱いを超える法的地位を思わせます。時間の経過と共に彼等の定着性は一層強まり、なし崩し的に移民化する恐れが大であると感じられます。

 安倍政権がこれらの資料を議会に提出しなかったのはもっともだと思います。これを出したら、
移民ではないという彼の詭弁は全く説得力がありません。(しかもこの記事は“判明した”としており、まだ正式発表ではないようです。)

 このような資料が法案可決後の短期間に作成されたとは考えられません。当然、法案提出時にはできあがっていたものと思われます。であれば、当然
議会には資料として提出しなければならないものです。しかるにこれを隠して法案審議に臨んだ政府は、国民を欺いたと言われて当然だと思います。

 ではなぜ重要資料を提出せず、中身が不明のままの法案審議となったのでしょうか。それは中身が国民に知られれば、法案に対する
反対意見が勢いを増し、安倍政権はそれに反論できず、可決・成立が覚束ないからです。法案を通すためには平気で重要事項を隠す、彼の人格には問題があると言わざるを得ません。

平成30年12月15日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ