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「いわゆる移民ではない」と詭弁を弄し、国民を欺く安倍総理の人格に疑問符

 10月29日の産経新聞と、11月1日の読売新聞は、「いわゆる移民政策をとることは考えていない」という、安倍総理の発言を次のように報じていました」
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安倍晋三首相「移民政策をとることは考えていない」 衆院代表質問

2018.10.29 15:18 産経
https://www.sankei.com/politics/news/181029/plt1810290015-n1.html

衆院本会議で立憲民主党・枝野幸男代表の質問に答える安倍晋三首相=29日午後、国会(春名中撮影)

 安倍晋三首相は29日の衆院本会議で、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた入管難民法改正案に関し「政府としては、
いわゆる移民政策をとることは考えていない」と述べた。立憲民主党の枝野幸男代表の代表質問に答えた。

 首相は、受け入れ拡大は「深刻な人手不足に対応するため、真に必要な業種に限り一定の専門性技能を有し即戦力となる外国人材を
期限を付して、わが国に受け入れようとするものだ」と説明し、移民政策ではないと強調した。今後、外国人労働者の労働環境の改善や日本語教育の充実などに取り組んでいく考えも示した。
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国会論戦の詳報 31日の参院代表質問から
2018年11月1日5時0分 読売

(前略)

参院本会議で代表質問する立憲民主党の牧山ひろえ氏
 入管難民法の改正は
移民政策への転換になりかねず、拙速に成立させるのは大きな問題だ。憲法改正は機運が醸成されて初めて取り組むべきもので、行政府の長が主張するのはおかしい。

(中略)

首相答弁 
移民政策 考えてない

(中略)

 ■外国人労働者

 外国人材の受け入れ、共生のための総合的対応策を実行に移し、
外国人との共生社会の実現に向けた環境整備に努めていく。政府として、いわゆる移民政策をとることは考えていない。できる限り客観的な指標により、人手不足の状況を確認し、真に必要な業種に限り、受け入れを行う。農業、建設、宿泊、介護、造船など14業種で受け入れ希望が示されており、受け入れ見込み数を精査している。医療保険や年金は外国人労働者にも既に日本人と等しく適用されており、制度見直しは考えていない。不法滞在者、偽装滞在者対策を含む犯罪防止の取り組みも的確に進めていく。

(以下略)
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 ここで気になるのは安倍総理は移民について説明する時にはいつも、「
いわゆる移民ではない」と“いわゆる”を付けていることです。なぜいちいち“いわゆる”を付けるか不可解ですが、世界でも移民について共通な明確(厳密)な定義がないと言うことが理由の一つかも知れません。厳密な定義はないものの、国連では下記の通り定義しています。
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国際連合広報センター
難民と移民の定義
http://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/22174/
2016年12月13日

(中略)

移民

国際移民の正式な法的定義はありませんが、多くの専門家は、移住の理由法的地位に関係なく、定住国を変更した人々を国際移民とみなすことに同意しています。3カ月から12カ月間の移動を短期的または一時的移住、
1年以上にわたる居住国の変更を長期的または恒久移住と呼んで区別するのが一般的です。
                           ―国連経済社会局

主な移民関連の用語についてはこちらをご参照ください(英語[別窓])。
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 また一方で、安倍総理は以前「移民の定義」について議員の文書による質問に対して、下記のような答弁書で回答しています。
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質問本文情報
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a196104.htm
経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成三十年二月二十八日提出
質問第一〇四号

外国人労働者と移民に関する質問主意書
提出者  奥野総一郎

外国人労働者と移民に関する質問主意書

 厚労省はわが国における外国人労働者が、昨年十月末時点で百二十七万八千六百七十人だったと発表した。安倍政権が発足した五年前から倍増となっており、日本の雇用者総数の約二パーセントを占めるまでになっている。飲食などサービス業から建設、農業、漁業、福祉などわが国のあらゆる産業が、外国人労働者なくして成り立たなくなっている。安倍総理も二月二十日の経済財政諮問会議で、外国人労働者受け入れの拡大を表明した。しかし、安倍総理は一方で
「移民政策はとらない」としている。
 そこで、以下質問する。

一 わが国における政府の
「移民」及び「移民政策」の定義を示されたい。
二 安倍内閣が「
いわゆる移民政策をとる考えはない」とする理由を示されたい。
三 安倍内閣以外の政権が「いわゆる移民政策」をとることは現行法上、可能か。
四 国連統計委員会への国連事務総長報告書(一九九七年)では、移民の一般的な定義について「通常の居住地以外の国に移動し、少なくとも十二ヵ月間当該国に居住する人のこと(長期の移民)」としている。この定義に当てはめれば、在留期限が一年を超える外国人技能研修制度による研修生等は
移民ではないのか。
五 前述、百二十七万八千六百七十人の外国人労働者には
移民は含まれていると認識しているのか。いるとすれば、概ね何人か示されたい。

(以下略)

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答弁本文情報
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b196104.htm
経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成三十年三月九日受領
答弁第一〇四号

  内閣衆質一九六第一〇四号
  平成三十年三月九日

内閣総理大臣 安倍晋三

       衆議院議長 大島理森 殿

衆議院議員奥野総一郎君提出外国人労働者と移民に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員奥野総一郎君提出外国人労働者と移民に関する質問に対する答弁書

一、二、五及び九について

 お尋ねの
「移民」や「移民政策」という言葉は様々な文脈で用いられており、それらの定義及び御指摘の「百二十七万八千六百七十人の外国人労働者」に係るお尋ねについて一概にお答えすることは困難である。
 その上で、政府としては、
例えば、国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を家族ごと期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策については、専門的、技術的分野の外国人を積極的に受け入れることとする現在の外国人の受入れの在り方とは相容れないため、これを採ることは考えていない。

三について

 お尋ねの「
いわゆる移民政策」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

四について

 御指摘の報告書の個々の文言が意味するところについて、政府として
お答えする立場にない。

(以下略)

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 安倍総理は「移民政策ではない」、「移民政策考えていない」、「
いわゆる移民政策をとることは考えていない」と繰り返し述べていますが、上記質問と答弁書から分かるように、これらの言葉についての議員からの質問に対して、回答は困難としていて答えていません。

 かろうじて、「例えば、
国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を家族ごと期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策については、・・・これを採ることは考えていない」と述べるに止まり、暗にこれを“移民・移民政策”の定義と考えているように受け取れます。
 ここに示されている安倍総理の語る
“移民像”は、新大陸発見当時の移民やかつての日系ブラジル移民を彷彿とさせる古色蒼然たる“移民”の定義(狭義の移民)に近く、国連の定義(広義の移民)とはかけ離れており、今の情勢には全く適合しない認識です。

 国連の定義に従えば日本に永住する外国人、
永住を希望して居住している外国人、永住を予定して入国した外国人はすべて「移民」です。移民でない「外国人労働者」とは永住の意思がなく、帰国の予定・意思があるものに限られると考えるべきです。

 安倍総理が国連の定義(広義の移民)とかけ離れた認識(狭義の移民)に立っているのであれば、多くの
国民の不安に答える意味からも、“いわゆる”の中身を具体的に明確にしてその是非を問うべきです。多くの国民が不安を感じていると言うことは、国民の認識は“狭義”ではなく“広義”だと言うことです。

 国民は狭義の移民定義では“移民”には該当しない外国人定住者が、今回の出入国・難民認定
法改正により移民への道が開かれ、広義の移民が激増するのではないかと、不安を募らせているのです。それにも拘わらず、安倍総理が現実離れした狭義の認識に固執し、しかもその認識を隠して、“いわゆる移民政策を取ることは考えていない”と言う説明に終始するのは、国民を欺いていると言わざるを得ず、彼の人格には疑問符が付くと思います。

平成31年2月2日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ