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少子化対策に無気力・無策な安倍総理の、安っぽくって大げさで内容空虚な、教育無償化をアピールする施政方針演説

 1月29日の読売新聞は、安倍総理の施政方針演説の全文を報じていました。
 その中で、安倍総理は少子化問題について下記のように述べて、無為・無策を露呈していました。
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安倍首相の施政方針演説 全文<1>
2019/01/29 05:00 読売

1 はじめに
20190128-118-OYTPI50085安倍首相の施政方針演説が行われた衆院本会議(28日午後、国会で)

 本年4月30日、天皇陛下がご退位され、皇太子殿下が翌5月1日にご即位されます。国民こぞってことほぐことができるよう、万全の準備を進めてまいります。

(中略)

 
急速に進む少子高齢化、激動する国際情勢。今を生きる私たちもまた、立ち向かわなければならない。私たちの子や孫の世代に、輝かしい日本を引き渡すため、共に力を合わせなければなりません。

(中略)

 <教育無償化>

 我が国の
持続的な成長にとって最大の課題は、少子高齢化です。平成の30年間で、出生率は1・57から1・26まで落ち込み、逆に、高齢化率は10%から30%へと上昇しました。

 世界で最も速いスピードで少子高齢化が進む我が国にあって、もはや、
これまでの政策の延長線上では対応できない、次元の異なる政策が必要です。

 
子どもを産みたい、育てたい。そう願う皆さんの希望を叶(かな)えることができれば、出生率は1・8まで押し上がります。しかし、子どもたちの教育にかかる負担が、その大きな制約となってきました。

 これを社会全体で分かち合うことで、子どもたちを産み、育てやすい日本へと、大きく転換していく。そのことによって、「希望出生率1・8」の実現を
目指します。

 10月から
3歳から5歳まで全ての子どもたちの幼児教育を無償化いたします。小学校・中学校9年間の普通教育無償化以来、実に70年ぶりの大改革であります。

 待機児童ゼロの目標は、必ず実現いたします。今年度も17万人分の保育の受け皿を整備します。保育士の皆さんの更なる処遇改善を行います。自治体の裁量を拡大するなどにより、学童保育の充実を進めます。

 来年4月から、公立高校だけでなく、
私立高校も実質無償化を実現します。真に必要な子どもたちの高等教育も無償化し、生活費をカバーするために十分な給付型奨学金を支給します。

 家庭の
経済事情にかかわらず、子どもたちの誰もが、自らの意欲と努力によって明るい未来をつかみ取ることができる。そうした社会を創り上げてこそ、アベノミクスは完成いたします。

 
子どもたちこそ、この国の未来そのものであります。

 多くの幼い命が、今も、虐待によって奪われている現実があります。わずか5歳の女の子が、死の間際につづったノートには、日本全体が大きなショックを受けました。

 子どもたちの命を守るのは、私たち大人
全員の責任です。

 あのような悲劇を二度と繰り返してはなりません。何よりも子どもたちの命を守ることを
最優先に、児童相談所の体制を抜本的に拡充し、自治体の取り組みを警察が全面的にバックアップすることで、児童虐待の根絶に向けて総力を挙げてまいります。

(以下略)
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 少子化(人口減少)問題は
30年前に1.57ショックとして報道されて以来、喫緊の課題と認識され、以後、深刻の度合いが増してきた問題で、「急速」に進んできたというのは認識の誤りです。

 以下は今までも言ってきたことですが、わが国の前途に立ちふさがる最大の危機は、「人口減少
(少子化)」です。少子化と高齢化は別問題で、これを繋げて“少子高齢化”というのは、問題点をぼかすことが目的です。
 また、この問題は
「持続的成長」云々の問題ではなく、国家・民族の存亡に関わる問題です。

 今まで政府がしてきた(しかし何の効果も無かった)少子化対策は、「保育所増設」、「育児休暇」に代表される
子育て支援であり、今回の「教育無償化」は次元が異なるどころか、文字通り従来の政策の延長線上の政策です。

 出生率が低下した主な原因は
結婚しない(出来ない?)男女が激増したことであり、結婚した夫婦の子供の数が若干減少の傾向を示したのは比較的最近のことであり、少子化の主たる原因ではありません。従って教育費の無償化はほとんど効果を期待できません。

 
3歳から5歳の子供の保育園の費用は「教育費」ではありません。

 高校、大学の教育費を無償にしても、対象となって喜ぶのは主として
離婚してひとりで子供を育てる母親などであり、彼女らを支援することが間違いではないとしても、出生率の向上には結びつきません。

 従来の保育園の増設、育児休暇の創設などの子育て支援が、共働きの推奨(半強制)になっただけで、出生率の向上に結びつかなかったように、今回の高校、大学などの教育費の無償化は、なるとすれば(間接的な)離婚の推奨になるだけです。
 なぜなら子持ちの女性が離婚を決断するに際して、一番の難問は
離婚後低収入になった時の子供の養育費の問題だからです。

 離婚した女性に子供の
学費の支援をすれば、離婚に踏み切る決断がしやすくなると言うことはあっても、次の子供は期待できません。むしろ離婚に際しての障害が減るので離婚が増加する方向に作用することが考えられ、少子化を加速する恐れがあります。

 いずれにしても
教育費の無償化は、全く少子化の解消に効果が無かった従来の、子育て支援の少子化対策の愚を繰り返すだけです。総理が言う文字通りの「これまでの政策の延長線上」です。安倍総理は同じ失敗を一体何度繰り返すのでしょうか。

 アベノミクスは完成いたします」、「子どもたちこそ、この国の未来そのものであります」の二言は発言の趣旨が分かりません。

 安倍総理は演説で
5歳の子供の虐待死事件に触れていますが、「全員」、「最優先」、「抜本的」、「全面的」、「総力」などの威勢の良い言葉が並んでいますが具体的な政策は何もなく、安倍総理の日頃の“しっかり節(ぶし)”と変わりません。

 今、厚労省は
統計を巡る不正で批判の矢面に立っていますが、少子化問題を巡る過去30年来の愚行の繰り返しを見ると、厚労省の官吏はどうしようもない愚か者の集団と考えるほかはありません。
 その官僚が書いた
愚劣極まる作文をそのまま施政方針とし、意味の無い大げさな表現をまじえて演説する安倍総理は、一体何と評したら良いのか言葉に詰まります。

平成31年2月6日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ