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スマホ料金の問題は、「SIMロック」による、抱き合わせ販売である −料金の分離表示よりも、「SIMフリー」を義務づけ、抱き合わせ販売を禁じる方が効果的−

 4月15日に、NHKのニュースはドコモのスマホ料金について、「ドコモ 通信料金と端末代金を分離 6月から新料金プラン」と「ドコモの新料金プラン ネットの反応は?」のタイトルで2件のニュースを報じていました。
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ドコモ 通信料金と端末代金を分離 6月から新料金プラン
2019年4月15日 15時23分 NHK

 NTTドコモは国の義務化に先立って、通信料金と端末代金を分離した料金プランを6月1日から導入すると発表しました。
通信だけの契約で料金は2割から最大4割の値下げになる一方、多くの利用者にとって端末代金の負担が重くなると見られ、今後負担軽減を検討するとしています。

 NTTドコモは15日、吉澤和弘社長が記者会見を開き、6月1日から導入する新たな料金プランを発表しました。

新しい料金プランは、
通信料金と端末代金をより明確に分離し、通信料金だけを見ると少なくとも2割の値下げになるとしています。

 このうち、家族3人以上の契約と、2年間の契約の継続を条件にしたプランの場合、データの使用量が1ギガバイト以下だと毎月の通信料金が1980円と現在と比較して最大の4割の値下げになるとしています。

 一方、一般的に「2年縛り」と呼ばれた端末代金と通信料金のセット契約は、来月31日で新規の受け付けを終了し、多くの利用者にとって端末代金の負担額が増えると見られます。

 この結果、同じ端末を
長く使い続ける人は料金の負担が減るものの、比較的短い期間で新製品などの端末を買い替える人にとっては負担が増えるケースもあるとしています。

 このためNTTドコモは、今後
端末代金の負担軽減を検討するとしています。携帯の料金プランをめぐっては、国が通信料金の値下げに向けて今の国会で端末代金との分離を義務づける法改正を目指していて、ドコモとしては法案の成立を待たずに全面的に取り入れた形です。

 また、auのブランドを展開するKDDIも料金プランを見直すことにしているほか、ソフトバンクは第2ブランドの「ワイモバイル」で値下げを検討しています。

通信料 ドコモ「最大4割安くなる」

 ドコモの新しいプランは
通信料金だけをみると、2割から最大4割安くなるとしています。
新たなプランでは、ネット接続のデータ通信量が30ギガバイトまで、速度制限なしで使えるプランと、毎月のデータの使用量に応じて通信料金が変動する大きく2つのプランに分かれています。

 このうち、4割安くなるのは、料金が変動するプランで、家族3人以上の契約と、2年間の契約の継続を条件にしデータの使用量が比較的少ない、1ギガバイト以下の場合です。

 この場合、毎月の通信料金は1人1980円となります。これまでの同等のプランでは、家族3人で5ギガバイトを分け合う場合で単純計算で1人当たり1.7ギガバイトで3480円でしたから、およそ4割の値下げになるとしています。

 また、2割安くなるのは、料金が変動するプランを1人で契約し、2年間の契約を条件としなかった場合で、新しいプランでは5ギガバイト以下の使用量で毎月6480円となります。従来の同等のプランでは、5ギガバイトで7780円でしたから、およそ2割の値下げになるとしています。


”2年縛り”はなくなるの?

 通信料金と端末代金が分離されることで、NTTドコモの新たな料金プランでは、通信の契約を続けることを前提に、端末代金を実質的に割り引くこれまでの
「2年縛り」は無くなります。

 一方で、通信の契約を2年間続けることを前提に通信料金自体を割り引くプランもあって利用者に長期の契約を促しています。

 また、新しいプランには端末代金の割引は盛り込まれておらず、多くの利用者にとって
端末代金の負担額はいまよりも増えると見られます。

(中略)

 携帯
値下げの経緯 国のねらい

今回の料金刷新のきっかけは、去年8月の
菅官房長官の「今より4割程度下げる余地がある」という発言でした。

 大手携帯電話会社の主要プランの1か月の通信料金はパリで2554円、ロンドンで2505円となっている一方、東京は4割程度高い3760円になっているという総務省がまとめたデータが根拠の1つでした。

 携帯電話料金は
複雑で高いという批判は従来からあったこともあり、翌月には総務省が第三者の専門家らでつくる特別委員会を設け、料金引き下げに向けた議論を加速。
委員会で議論になったのは
端末と通信をセットで販売し、高額な端末代の割り引きにかかる費用を、割高に設定した月々の通信料金で回収している仕組みでした。

 いわゆる「2年縛り」などに代表されるこの仕組みはiPhoneなど高価格帯の端末が登場してから各社の間に広がりました。

 しかし、端末を2年など比較的早いサイクルで買い替える人が優遇される一方、同じ端末を長く使っている人の通信料金が下がっていないと指摘されたのです。

このため、総務省は
端末と通信を切り分けてユーザーが通信料金のみで比較・選択できるようになれば、各社の競争が促され、通信料の引き下げにつながると考えました。

 先月、
端末と通信の分離を義務づける法案を閣議決定し、今の国会で審議が始まっています。

 菅官房長官 納得いく料金とサービスを

 菅官房長官は午後の記者会見で、「政府として、個別の企業の経営方針についてはコメントを差し控える。一般論として、
携帯電話は公共の電波を利用してサービスが提供される中で、料金が不透明、そして諸外国に比べて料金が高いとの指摘がある」と述べました。

 そのうえで、「政府の役割は、事業者間で
競争がしっかり働く仕組みをつくることであり、国会に提出している電気事業法の改正案の早期成立に取り組み、利用者にとって分かりやすく、納得のいく料金・サービスをできるだけ早く実現したい」と述べました。

中古スマホに注目

 携帯電話代の毎月の出費をどうすれば減らせるのか。一つのカギとなるのが
中古の端末の「活用」です。

 中古端末を取り扱う買い取り販売チェーンの「ゲオ」の都内の店舗では、2年半前に9万円ほどで発売されたスマートフォンが状態が良いものは3万円余り、少しだけ傷があるものだと3万円弱と発売当時の3分の1程度の価格で販売されています。

(中略)

 中古端末利用の現状

 総務省が全国の消費者を対象におととし行った調査では、60%の人が「中古端末を利用したことがなく、今後も利用したいとは思わない」と答え、活用が進んでいないのが実態です。

 その理由については、「バッテリーのもちが悪そう」「きちんと動作するかわからない」「衛生的ではないイメージがある」などといった回答が目立っています。

 さらに中古の端末をめぐっては流通する台数が少ないことも課題です。総務省の調査でも、およそ62%の人が使い終わった端末を「みずから廃棄したり、保管している」と答えています。
「セキュリティーが心配」という声が根強いことが原因だとみられます。
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ドコモの新料金プラン ネットの反応は?
2019年4月15日 19時09分IT・ネット NHK


 NTTドコモが発表した新しい料金プランについて、ネット上では歓迎する声がある一方で、結局、
端末が高かったら実質的には値上げになるのではないかと懸念する声が見られました。

 15日、NTTドコモが発表した新しい料金プランについて、ネット上では、発表直後からさまざまな意見が投稿されています。

 この中には、「家族割引が、大きくてビックリ!!!」と新しい料金プランを歓迎する一方、「まあこんなものかな。格安(スマホ事業者)には対抗できないのは分かってたし」と冷静に受け止める声もありました。

 また料金を試算した結果として「データ通信をほとんど使わない場合、老夫婦2人とかだったら、9000円程度が5000円程度になる」とする投稿があった一方、「もっとデータ通信をバンバン使う、未来ある若者を優遇して欲しかった」という声も寄せられています。

 一方で、「
まだ高いんですけど。これでスマホ本体の割引がなくなると、全体では値上げになるんではないだろうか」「結局端末が高かったら月々高くなるのは避けられないのでは」「よくわからない!」といった意見も数多く投稿されています。
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端末価格と通信料金を別々に明示することを、料金制度の改革としていますが、果たして改革になるのでしょうか。
 改革を要するのは端末価格と通信料金の合計額が、
「高値に張り付いている」点であるはずです。

 報じられている内容を見る限り、二つの料金表示を分離したことが、端末価格、通信料金の
価格低下に結びつく要素は何もありません。通信料金は下がるが端末価格は値上がりしそうだとのことです。

 いくら端末の価格と通信料金を分けて表示しても、
分けて買うことが出来ず、抱き合わせで買うしかないのであれば、分けて表示することが直ちに合計額の低下に結びつくとは思えません。

 料金の内訳が分かれば、
使用頻度の高い人と低い人が、それぞれ自分に有った料金プランを選択することが可能になることは確かですが、ただそれだけのことではないでしょうか。
 今まで通信料金を高値に維持するために、端末代金が不当に安く抑えられていたという側面があるようですが、それぞれについて原価が公表されたわけでもなく、“不当”かどうかは確かめようもありません。

 要するに、高値に張り付いているスマホ料金を
引き下げるためには、単に端末と通信料金を別々に表示するだけでは不十分だと言うことだと思います。別々に表示するのであれば、当然別々に調達できなければ、余り意味がありません。

 ドコモが通信料を値下げし、端末代金が値上げされたのであれば、
ドコモとは通信契約のみとし、端末はドコモ以外の例えばソフトバンクから、あるいは家電量販店、ネット通販などから購入すると言う選択肢が不可欠です。公正な市場における自由競争の実現です。そうでなければ料金の分離表示はトータルの値下げには結びつきません。

 端末と通信契約を別々に調達するためには、
SIMフリーが不可欠ですが、現在のほとんどの契約はSIMロック契約で、通信契約と同時に購入した端末以外の端末をそのまま使うには手続きが必要です。その反対に同時に購入したときのSIM以外のSIMを、その端末で使うときも同様です。

 NHKのニュース報道ではその点、つまり
SIMロックとその解除について、今後どうなるのか何も触れられていませんが、スマホ料金の高値固定を改善するためには、全契約SIMフリー化が有効で不可欠です。端末は低価格の家電量販店かネット通販で購入し、通信契約のみ電話会社と契約するということが可能になって初めて、わかりやすくかつ低廉なスマホ料金が可能になると思います。

 そう考えると
NHKがSIMロックについて触れていないのは不可解です。菅官房長官・総務省も触れていません。この点に触れない“値下げ”論議なんて本来あり得ないと思います。
 あり得ない議論が進んでいるのは何か訳があると思います。
適当な落としどころで、この騒動には幕が下ろされるのではないでしょうか。

平成31年4月17日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ