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少子化・人口減少の加速に直面し、思考停止・脳死状態に陥っている読売新聞・厚労省

 6月7日の読売新聞は、「人口
自然減、初の40万人超…死亡数は戦後最多」という見出しで、次のように報じていました。
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人口自然減、初の40万人超…死亡数は戦後最多
2019/06/07 23:26  読売

 厚生労働省は7日、2018年の人口動態統計(概数)を発表した。
死亡数から出生数を引いた自然減は44万4085人と初めて40万人を超えた。1人の女性が生涯に産む子供の推計人数を示す合計特殊出生率は1・42で、3年連続で低下した。人口減少は進む見通しで、子育て支援労働生産性の向上が課題となる。

 
死亡数は136万2482人(前年比2万2085人増)で戦後最多だった。出生数は91万8397人(同2万7668人減)で、統計を取り始めた1899年以降で最少を更新した。この結果、自然減は前年より4万9753人拡大し、過去最大となった。

 人口の自然増減数は平成元年(1989年)には45万8208人増だったが、2005年に2万1266人減とマイナスに転じた。翌06年に8224人増と回復したが、07年以降は減少し続けている。

 合計特殊出生率は15年の
1・45から毎年0・01ポイントずつ低下している。都道府県別で最も高かったのは、沖縄県で1・89、最低は東京都で1・20だった。

 出生数を母親の5歳ごとの年代別でみると、45歳以上は1659人(前年比147人増)でわずかに増えたものの、44歳以下の各年代では、いずれも前年より減少した。第1子を産んだ時の母親の平均年齢は、前年と同じ30・7歳だった。

 出生数が減った
要因について、厚労省は、出生数の約85%を占める25〜39歳の女性人口の減少晩婚化が影響していると分析している。

 
婚姻件数は58万6438組(前年比2万428組減)で戦後最少だった。初めて結婚した人の平均年齢は夫31・1歳、妻29・4歳で前年と同じだった。

 政府は、若者が希望通りに結婚し、望む数の子供を持てた場合の「希望
出生率」を1・8まで引き上げる目標を掲げている。今年10月には幼児教育・保育の無償化を始め、子育て世帯への支援を充実させる方針だ。

 減少していく
労働力人口を補うため、4月に施行した働き方改革関連法の着実な運用を通じて、労働生産性を向上させることも目指している。高齢者の労働参加を進めることも課題で、根本厚労相は7日の記者会見で「次期年金制度改革では、より長く、多様な形となる就労の変化を取り込みたい」と語った。
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 この記事の冒頭は、淡々と人口減少の見通しを報じていて、危機感が全く感じられません。それに、わざわざ人口減少を
「自然減」としているのはなぜでしょうか。
 出生から死亡を差し引いた数を「自然(増)減」というなら、自然(増)減以外の人口増減はなにがあるのでしょうか。多分
移民による増減しかないと思いますが、いままでそのような数値をカウントしたことがあるのでしょうか。

 国内の都道府県・市町村などの人口であれば、出生・死亡による自然増減の他に、
転入・転出をカウントするのは必要で意義ある事ですが、日本全体の統計で、移民の統計を考慮しないのであれば、わざわざ“自然”減と表記する意味は全くないと思います。
 今回に限って“自然”減としているのは、何か不自然な気がします。
人口減少を“自然”なこととしたいのでしょうか。

 人口が減少するのは
戦乱や、疫病の大流行などの時に限られます。それが普通の歴史です。それがないにも拘わらず、長期にわたって人口の減少が見込まれるのはまさに“異常”事態であり、“非常事態”と言うべきです。早急な対策が必要である事はいうまでもありません。それだからこそ、31年前の1.57ショック以来、喫緊の課題として“少子化対策”が実施されてきたのです。

 記事は人口減少が「進む」と簡単に言っていますが、
少子化対策はもう諦めたのでしょうか。「子育て支援」と「労働生産性の向上」は何のためにするのでしょうか。
 
子育て支援が少子化対策にならないことは、過去31年間の少子化対策の歴史が証明しているし、労働生産性の向上は少子化・人口減少に伴う人手不足対策であって、人口減少対策とは全く関係なく、人口減少の歯止めにはなりません。

 この記事では
何のために「子育て支援」をするのか分かりません。少子化対策を続ける気があるのか、ないのかそれすらはっきりしません。無責任極まる記事です。

 目前に迫る危機を認識することなく、10年一日どころか
30年一日のごとき「子育て支援」と、単なる一時しのぎの対症療法で、人口減少の歯止めには全く関係ない「労働生産性の向上」を云々している読売新聞は、まさに「思考停止」「脳死状態」と言うほかはありません。

 一方、厚労省は出生が減少した要因(
“要因”ではなく“原因”とすべきです)を、「25〜39歳の女性人口の減少晩婚化」としていますが、なぜ人口が減少した原因に触れないのでしょうか。それは少子化問題が発生(1.57ショック)して31年経ち、無為無策のまま1世代一回りしてしまったという事を意味しているのであって、何の原因分析にも言い訳にも成りません。
 晩婚化が原因と考えるならば、なぜ
晩婚化の原因を考えてその対策を公表しないのでしょうか。

 出生率の目標を1.8に引き上げるとありますが、
目標を立てるのが役所の仕事でしょうか。目標を引き上げれば出生率は上昇するのでしょうか。目標を実現するにはどうしたら良いかを考え、実行し、達成するのが(役所に限らず)仕事というものではないでしょうか。できなければ当然責任を問われます。

 この記事からは
厚労省の危機感、やる気は全く感じられません。今後の施策として「子育て支援」と「労働生産性の向上」を挙げているのは読売新聞と瓜二つで、厚労省「思考停止」「脳死状態」も重症だと思います。

令和元年6月9日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ