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新型コロナ対応で、失敗(?)を成功とすり替えるために、“私権不可侵論”に擦り寄った安倍総理

 5月25日のNHKテレビニュースは、「緊急事態宣言 全国で解除 首相が表明 2次補正予算案27日決定」と言うタイトルで、次のように報じていました。
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緊急事態宣言 全国で解除 首相が表明 2次補正予算案 27日決定
2020年5月25日 18時44分 NHK

 安倍総理大臣は記者会見で、緊急事態宣言を全国で解除することを正式に表明し、段階的に社会経済活動を再開していく方針を示しました。また、第2次補正予算案を27日、閣議決定し、店舗の賃料負担を軽減するための最大600万円の新たな給付金の創設や、「地方創生臨時交付金」を2兆円増額することを明らかにしました。

 この中で、安倍総理大臣は、緊急事態宣言について、「世界的にも極めて厳しいレベルで定めた解除基準を全国的にクリアしたと判断した」と述べ、全国での解除を正式に表明しました。

 そのうえで、
「罰則を伴う強制的な外出規制などを実施できない日本ならではのやり方で、わずか1か月半で、今回の流行をほぼ収束させることができ、日本モデル』の力を示した」と述べ、国民の協力に謝意を示しました。

(以下略)
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2020.05.24 読売新聞(朝刊)

 
欧米との比較で、感染者、死亡者が極端に少なく、短期間で終息に向かったことは事実ですが、近隣アジア諸国との比較では、上記資料を見れば一目瞭然で、日本はタイ、台湾・ベトナムなどよりも人口あたりの感染者数、死亡者数共に(特に死亡者数が)著しく見劣りする状況です。

 欧米諸国との感染者数、死亡者数の極端な違いは、
国民性の違いとか感染防止対策衛生環境の優劣で説明のつくレベルを遙かに超えており、これについては、別に医学的、生物学的な検討が必要です。
 例えば、
医学的には、欧米諸国と、日本・韓国・台湾・東南アジア・オーストラリアではウィルスの種類が異なっている可能性、あるいは一部で指摘があったBCG予防接種の普及率の影響の可能性など、生物学的には人種・民族の相違が感染率・死亡率に影響を及ぼしている可能性の研究・検討が必要です。

 一方
タイ、台湾・ベトナムとの比較で劣っている原因は、それらの国に比べて迅速な初期対応と言う点で後れを取ったことと、感染防止策で彼らほど徹底した(強制力の強い)対策を取れなかったことにあります。
 初期対応の点では、日本は当初中国の
習近平国家主席の国賓訪問の実現と、オリンピックの円滑な計画通りの開催を最優先としていて、その為に感染防止策は二の次でした。大量の中国人観光客の入国を放置するなど、必要な初期感染防止対策を取りませんでした。これは致命的な悪影響があったはずです。

 
欧米の国々が自国と比較して、日本の“成功”を称賛するのは解らないでもありませんが、的を射たものではないと思います。近隣アジア諸国の“大成功”と比較すれば、日本の対応はとても“成功”などと言えたものではありません。

 それにも関わらず安倍総理は
反省すべき点を何ら反省せず“自画自賛”に終始するのは、「厚かましい」、「愚かしい」と言うほかはありません。
 特に、
強制的な外出規制などを実施できない日本」「『日本モデル』の力を示した」等の発言は、根拠のない“私権不可侵論”擦り寄るもので、見過ごす訳にはいきません。

 言うまでもなく国家の非常事態には、
“自粛・要請”だけでは足りず、応じない者に対しては“禁止・命令”が不可欠です。それを放棄することは自殺行為に繋がります。今回も(韓国・朝鮮人と思われる)一部のパチンコ店が、「休業指示」に従わない事態が発生しました。これは「蟻の一穴」の事態を招来しかねないゆゆしき事態と考えるべきでしたが、なぜか大事にせずに見過ごされてしまいました。。

 安倍総理は“私権不可侵論”に擦り寄ることにより、初期の
失敗を隠蔽せんとしたのであり、このことは今後の憲法解釈論議に禍根を残し、今後の国難の事態に大惨事を引き起こす可能性があります。これは一政治家としても許される所業ではなく、強い非難に値します。

令和2年5月27日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ