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公務員は失業対策事業か(公務員は誰のために存在するのか)

 1月21日の読売新聞の記事によると、公務員の定年を65歳まで延長する法案(国家公務員法と地方公務員法の改正案)が提出されることになりました。週40時間労働と、週16〜32時間の2種類があり、年収は400万円程度だそうです。総務庁の調査では、民間企業では既に8割が定年延長や再雇用制度を導入している、と言っていますが、条件、待遇の中身まで確認した上で「民間は既に8割」と言っているのでしょうか。
 定年延長は、公的年金の支給開始年齢が2001年度から65歳に引き揚げられる事に対する対応措置とのことですが、これによって年金の破産を防ぐことはできても、今度は国家財政、地方財政が破産してしまうのではないでしょうか。財政に負担を転嫁するだけのことではないのでしょうか。現状でも非効率で生産性の低い公務員が、65歳で使いものになるのでしょうか。国民が求め、期待する労働力として、役に立つのでしょうか。出勤してもお茶を飲んで、新聞を読んでいるだけの公務員が増えるだけではないのでしょうか。

 定年を引き上げればそれだけ公務員が増えることになります。増加しないようにしようとすれば、若年者の新規採用を抑制しなければならなくなります。それは既採用の公務員とっては都合のよいことかもしれませんが、これから就職しようと言う若者のためには大きな不利益です。公務員が老人ばかりになることは国民にとっても望ましくありません。公務員は誰のために、何のために存在するのかと言う原点に立って考える必要があります。また、公務員の身分は終身保証である必要はありません。定年に達した公務員が再就職を希望するのであれば「ハローワーク」や「人材銀行」などへ行って職を探せばいいはずです。役所が高齢者の雇用のために、雇用機会を創出するのであれば、広く門戸を開放して、前職が公務員以外の者も平等に採用すべきです。

 折から、自民党と自由党の両与党は国家公務員の定員を10年間で25%削減することで合意しました。国家公務員の定員は現在約85万人で、退職者を補充せず新規採用者を抑制しても、毎年3,650人減るだけで、10年かかっても4%しか減らないそうです。そして、この与党の方針に対して、「官庁サイド」は早くも「反発」しているそうです。
 国、地方とも財政赤字が深刻になっているときに、公務員の定年延長とは一体何を考えているのでしょう。定年延長法案の提出者は「政府」となっていますが、与党の方針に反する法案を提出する「政府」とはいったい何なのでしょうか。公務員の定数は公務員の雇用確保のために決められるものではありません。公務員の定数は、1.国民のために政府は何をするか。2.そのために必要な公務員は何人か。3.国民はそのための税負担に耐えられるか。等を考えて決定されなければなりません。公務員の都合だけを考えた「政府案」を作っているのは誰か、それを支持している政治家は誰かを国民に明らかにするのが報道の責務であると思います。

平成11年1月24日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ